同日よりオーブ連合首長国行政府内にて行われていた、天気予報並みに詳しい<アスラン・ザラ迷惑予報・警報>が一時中断された事は、小さいが政府関係者を一様に喜ばせたことは言うまでもない。

 色々なトラブル遍歴から、とっても役に立つが同じくらい迷惑、という微妙な判断をされていたから。


 そして何より職員の願いはただ一つ。

「早くキラさん帰ってこないかなぁ!」

 彼らにとってキラは、迷惑ストッパー中は頼りに出来ないがめちゃめちゃ役に立つ苦労人、という感想を持たれていた。


「そりゃ炎のストッパーも、ずっとじゃ疲れるよなぁ…」

 という率直な同情もある。だが、その炎のストッパーのおかげで、オーブは何度も国家の危機を乗り越えてきているのである。キラ・ヤマトはこの国に不可欠の人間。ただ、もれなくアスランもセットでくっついてくるので、使い方には細心の配慮が必要、といったところだ。



「判っているだろうが、あいつが居ない隙に今まで出来なかった体制を一気に整えるぞ!」

 カガリの宣言に職員一同やる気をみなぎらせる。奇しくもこの国はアスランによって強い団結が保たれていた。





 同時刻、アスランはカガリの教えをしっかり守って、プラントに向かうシャトルの中にいた。

 ちなみにそのカガリの教えとは、

<公共の交通機関では騒がない!>

 だったりする。


 要するにシャトルに乗りながら大声で「キラぁああ!今行くからな〜待っててくれよ〜〜〜」とか「ああっもう愛しい愛しい俺のキラああッ」とか絶叫するな周りにいらっしゃるお客様の大迷惑になるそんなコトしたらオーブの国家権限で宇宙といえどもハッチから放り出す、という内容だったりする。このアスランならハッチから宇宙空間に放り出されたとしても、いつの間にか宇宙港にひょっこり顔を出しそうだとかそういう些末なことは放置して………。



「男の誓いだ。守れるな」

「当然だ!」

 という会話が別れ際に交わされていた。くどいようだがカガリの呈示した最低限の男の誓いは、公共の場所では走らないむやみやたらに絶叫しない無分別な発言をしない、だった。


「社会ルールは守れよ!」

「………解ってる!」


「住宅密集地では静かにするんだぞ」

「……………くどいッ!!!」


 という、要するに母親が小さい子どもを諭しているような光景も、実際にはあった。





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第24話   最強の敵、来襲!!!





 で、プラント行きのシャトルの中に、瞠目すべき名前が乗っていることに最初に気付いたのは、プラントの宇宙港に勤務する職員で、その情報は割と短時間でトップまで上り詰めた。その日緊急呼集で呼びつけられたキラとイザークは、その情報に早速接する。


「プラントへ向かうシャトルの乗客名簿に、アスランの名前があったそうです」


「………ぇ…」

「アイツ………」


 その名前はアスランが来ていることを知らせるようなもの。偽名ではなく本名で名簿に名前を連ねているという。



「間違いなく、あなたを捜すための本気の行動です」

「………だろうね。アスランの欲求不満はとっくに限界を超えてるだろうし…」

 乾いた笑いが空間を支配する。


「どう、しますか?キラ……」

「どうって………決まってるじゃないラクス。もう少し隠しときたいよ。だって頼まれたお仕事途中で放り出したくない、それやっちゃうと後がめちゃくちゃ大変だし…」

 残されたSEたちの、システムの追加構築と天文学的な量のバグ取りが。それこそZAFTのみならずプラントのシステムダウンも連動して招きかねない。


「……………ですわね。行き先はディセンベル市なので、キラがここに匿われていることは判ってはいないみたいですけど…」



 キラは目を閉じて首を振って見せた。

「無理。アスラン、僕のプログラムのクセよく知ってるもん。意地でも探し出すだろうね。それにコンピュータプログラムが存在しない場所に、僕がいるわけないって最初から知ってるし」

 例え犯罪に巻き込まれたにしても、ちゃちぃ人質や性犯罪でもない限り犯人はプログラム目的だろうから、居場所は結局パソコンやネットワークのある場所に限られてしまう。



「私も全力で阻止いたしますけれど、やはりこういう時一番頼りになるのはあなたです!」

 二人の視線が同時にイザークに集中した。

いいわけ:ZAFTは二重の隠れ蓑です
次回予告:迫り来る時間との戦い



お読みいただきありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さい。