世間からその存在すらすっかり忘れら去られている頃、世界の問題児が一つの決心を固めた。



「俺は…プラントに行く!」

「え?ちょっアスラン!」

 仕事帰りの国家元首が止める。真っ青な顔と脂汗を流して


「俺が行かなきゃ、駄目なんだと思う」

 何とまぁ、神妙な表情までして!


「でも、お前…プラントは………」

 一応世情も考えてみる。

 (本人のせいではないものの)父親が嵌ってしまった罪、そして(結局痴情に逆らえずやってしまった)ZAFTからの2度に渡る裏切り、亡命・隠遁状態で再びオーブに戻って慎ましやかに(←ここかなり謎)暮らしている現実。



 それらを総合勘案すれば………要するにアスランをプラントに行かせるのは、ぶっちゃけヤバい。父親の言葉を借りれば「子どもでも判る構図」だ





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第23話   世界が動く時!





「国交は回復しシャトル便も通っている。心配するな大丈夫だ」

 判っていないのは本人だけだった!


「そういう問題じゃないだろ!プラントって…プラントは………」

「キラがプラントに行っている可能性が高いと判った以上、行くしかない。行って直接俺が探し出す」


 やっぱり痴情だった。



「探すって………どうやって…?」

 一口にプラントと言ってもあまりに広い。しかも相当な数が宇宙に浮いているわけだから、一基ごとにシャトルでの移動になる。当然それにかかる交通費も莫大な金額になるだろう。地上を行き来するのとは比べ物にならない。



「どんなところに行ったって、コンピュータのシステムはある。そこにプログラムがある以上、そのプログラム構築に組み込まれた僅かなクセから、キラがどこにいようと探し出してみせる!事件に巻き込まれていても絶対に俺が救い出すッ」


 なんというか…。

「本気か?お前………」


「俺は……………マジだ。いつでも…」



 カガリに反対する理由はなかった。彼女だって、大事な妹を捜しているのだから。アスランだとキラを見つけてくれるかも、という期待がいやでも高まる。しかし、あの激動の戦中の二人の現実も身近に知っているだけに、その胸中はとってもとぉっても複雑すぎる。

「判った。私はここから動けない。だから、キラを…探してくれ」

 それは苦渋の決断。本当ならそんな危ない橋より自分が行きたい。自分が行って、双子の勘を最大限活用して見つけだしたい。その方が安全だし…。


「約束するよ」

「けど、無理だけは………するなよ?それと、こっちにも報告よこして欲しい」

「ああ」


「寄越さないと………私の小遣いから交通費の援助はしないからなッ」

「………何ッ!!?」


 当てにしてたのかよ……。



「うち切るからな!考えてもみろ。大体どこにいるのかも判らなければ、送金のしようがないだろ!」

 それもそうでした。そいえば一応コレって隠密行動なんでした。でもってその前に、混乱から立ち直る最中ということもあり、ザラ名義の口座はまだプラントによって凍結状態なのでした。


「わ…判った。居場所と進捗状況は知らせるようにする」

「じゃ、気を付けるんだぞ」

「ああ…」



 いつぞやの別れを彷彿とさせる別れを、二人はもう一度繰り返した。アスランはすぐにカガリの用意したアスハ家専用セスナに乗り込む。下手に公共の交通機関で行かせて騒音の苦情を政府や各公共団体に持ち込ませないためだ。セスナは一気に上昇し、オーブにある唯一の国際宇宙港に向かった。





「これで良し、と。プラントでのトラブルはオーブ政府の責任じゃない!うん!!!」

 オーブ連合首長国の代表とその秘書は、ホッとした表情で政務に戻っていった。

いいわけ:白も黒もグレーも知らなければ政治家なんてやっていられません
次回予告:最強の敵、来襲!!!



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