キラは確かに士官学校の教官準備室で、学校での授業のあらましなどをかいつまんで教えてもらっている。けれどもキラとて人間。人類の至宝といえどもそう集中力が持続するはずもなく、生徒と同じタイミングで休憩を取ることになっていた。

 だから当然、オーブからの大事な客人に、興味津々の学生達の格好の餌食だ。


<コーディネイターとナチュラルが同じ教室で授業を受けてるって本当ですか?>
<オーブの街ってどんな感じですか?>
<ナチュラルと結婚するコーディネイターもいるって話、本当にあるんですか?>

 などなど。彼らの興味は尽きない。だが、それこそがラクスの狙い





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第20話   ZAFTまっぴんく計画





 キラは新しい友だちが出来ることにとても気をよくして、笑顔で対応した。そして男女ともに惹きつけて止まない彼女の笑顔は、輪の規模をさらに拡大させてゆく。


「だって、美人で歌が上手くなって欲しいって、コーディネイトする人もいるんだよ?だったらそれ以外は変わんないじゃない?ナチュラルの人にだってすっごく努力して賢い人だっているし、気にしなければ上手くやっていけるよ」

 さすがにコーディネイターといえども、鳶が鷹を生むはずはなく。結局は親の遺伝子の範囲内でコーディネイトするのだから、普通の人とあんまり変わらないと言う。


「なるほどぉ」

「病院での処置が違うくらいかな?一緒一緒!それにね、ラクスのお父さんがそういう人たちの仲人をしてたんだって。戦争中は色々あって出来なかったけど、これからはそういう時代にしたいよね」


 キラの話はまるで皮膚が水分を含んでいくように浸透する。

「とにかくね、あんまり気にしないことだよ。だって気にしたってしょうがないだろ?」

「それは、そうですが……」


「………って、オーブのねウズミさんにも言われたよ」

「ウズミさんって……確か…」


「うん。僕の実のお姉さんを育ててくれた人。だから、ほら、そんなに肩張らなくて良いよ。僕も地球にたくさんのナチュラルの友だちいるけど、当たり前すぎてみんな全然気にしたことなかったよ」



 キラの話は、プラント生まれプラント育ちのコーディネイターには、ある意味驚愕だった。ある程度話が進むと、彼らの話はどうしても<恋バナ>になる。ジュール隊長と付き合っているのかと聞かれ、ちょっぴり頬を染めながらこくりと首を縦に振ると、周りを取り囲む人たちの反応が増した。

 あとは地球の人たちと同じだ。出会い、馴れ初め、今の関係………。いつも盛り上がってきたところで休憩時間が終了し、教官に怒られるのが日課になっていった。





 そして、午前中の講義時間が済む頃にはイザークが迎えに来る。二人が再会するその瞬間の、黄色い歓声と悔しそうな声も日課になった。


「どうだ?参考になってるか?」

 士官学校生の見える範囲・聞こえない範囲で、肩を抱かれながらする話は普通に仕事の話だ。彼らが勝手に勘違いする分は二人にはどうでも良い話で、プラントには大事な効果


「うん。今日は通信回線の基本コンセプトと実務上のプログラムを教えてもらったんだけど、僕の思ってたのとちょっと違ってた。システム組み直しの方向をちょっと変えなきゃいけないや〜」


「連合とはそんなに違うのか?」

「僕もそんなの知らなかったよ。連合のだってそんなに知ってる訳じゃないけど。あの時は敵同士だったんだから仕方なかったし。どっちみち実際の戦場では国際共同チャンネルでしょ?」


「あぁ〜〜…」

 キラの言うことはもっともだ。



 敵同士なのに何故か通信しあいながら戦っていたキラとアスランの関係が、まずオカシイ。戦場で刃を交えるうちに、ストライクとイージスの間だけに生まれた通信回線も、オカシイ話だ。それに、タダでさえ忙しいんだから、相手のシステムを細かいところまで解析している余裕はない。



「お互い知らなかったとはいえ、苦労させたな…」

「しょうがなかったんだよ。あの時はね」


 イザークの胸にこてんと預けた頭。そのらぶらぶな姿は学生に完全に勘違いさせた。

いいわけ:この全ての糸を引っ張っているのがラクス・クラインです。
次回予告:プラントには嬉しい勘違い



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