「どうかみなさま、静粛に!」

 などというラクスの一言で、おびただしい量のハロ軍団が起動した。球形で飛び跳ねる機能+α(※この機能がくせもの)を持ったペットロボ達は、がやがやと騒がしい軍人達に容赦ない攻撃を食らわせ、次々と沈黙させていった。



 ちなみに事態を冷静に見つめていたイザークの呟き

(やれやれ…。静粛と言うよりは、粛正だなこりゃ………)


 にも即座に反応し、驚異的な地獄耳能力を発揮することになる。ガゴン!とクリアーな音と共に、イザークはブルーのハロにより見事なアッパーカットを食らった。





「少しだけ、彼女のことを聞いてください」


 ラクスの言い様は、誰もが心を打つ。そこだけ見れば。私語をするものあればすかさず攻撃を加え、沈黙させるハロにその場の誰もがこう思わざるを得なかった。



(と言うか、聞くしかないじゃないかぁッ!)

 それはかつてのアスランの叫び…いや、雄叫び。そう、ラクスの前では誰もがアスランをバカに出来ないのだった。





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第2話   ラクスの愛するキラさま





「キラは何も知らない一学生の状態から、戦時中の短い間でMSのパイロットとして常に最前線に出ながら、戦艦とMSの全てのシステムを再構築・運用させています。ですからZAFTに招聘しても、彼女しか出来ないことが沢山あるのです」



 ぶっちゃけ、この戦後処理と復興でクソ忙しい時に、システムの再修正・運用など七面倒くさい作業を短時間でこなせる人間はキラしかいないのだ。どよめきが走った。無理もない。でも、これほどの能力があるからこそ、表舞台に立てば狙われる。





「本当は軍人さんになるのはすっっっごく嫌なんだけど、もう戦争が起こらないようにする為に、地球とプラントと両方で頑張りまっす」


 可愛い彼女はその愛らしい唇から考えられないほど壮大な話を、居並ぶZAFTの軍人さんたちにした。彼女の言葉を聞いて数秒もたたないうちに、その部屋の室温が3度上がったという。





「さぁ、挨拶はこのくらいにして!キラ、わたくしとお買い物に参りましょう!」

「うん!宜しくね、ラクス」


 るんたっ♪という音を誰しもが聞いたような気がした。そして部屋から出るとき、ラクスはキラの肩に手を掛けたまま振り向き、爆弾発言を投下して消えた。

「そうそう。忘れておりましたわ。彼女はオーブのアスハ代表の双子の妹に当たられる方ですの。アタックを考えている方はそちらも合わせてお考え下さいな」

 それではまた!ごきげんよう〜〜〜〜〜(!^▽^!)、の言葉を残してラクス・クライン、キラ・ヤマトの二人は消えた。





 あとには混乱だけが残った。


「オーブの新しき獅子の!!?」←カガリのことです。

「なにげに牽制か!」

「これはふるいに近いんじゃないのか!?」

「アスハ家とお近づき……」

「コラ!話が早い!」



 キラの着任挨拶が(強引に)終わると、それぞれ通常の仕事に戻る。その雑踏の中、ディアッカが浮かべた微妙ぉ〜〜〜な表情は、誰にも気付かれることなく見事にスルーされた。



 とりあえず直接個々人の仕事が増える訳ではないことに安心し、ラクスから回ってきたキラの基本データ(ほぼラクスの主観)に思いをはせる。


<オーブ国籍の19歳。今が盛りのぴっちぴちの女の子。へリオポリスの学生から戦争に巻き込まれ、いきなりアークエンジェルへ乗艦。ストライク、フリーダム、ストライクフリーダムの3機体を見事に使いこなし、2度の戦争を終結に導いた大戦の真の立役者。噂では恋人がいるとかいう話だが詳しいことは全く不明(ラクスは認めたくない)。>



 これだけ列挙されただけでも信じられない。ましてやあの容姿。あの態度。ラクス・クラインと仲がいいのは、戦時中からの彼女とのつきあいの長さだということで納得してもらっている。でなければ曰く付きのキラをいきなりZAFTが招聘すると言っても、当然根強い抵抗やとまどいはあっただろう。


 世間には彼女の存在そのものがひた隠しにされているのだから。

いいわけ:何も知らない人たちと知りすぎている人たちwww書いてて面白かった対比でした。
次回予告:生兵法は怪我の元



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