阿呆な成り行きによるくそ真面目なアホらしい実践講義は、たとえばディアッカなどが知ったら大爆笑するほどの話だった。

 マジすぎて目の前に必死になっているキラはともかく、イザークはコレが自分の士官室という、完全な密室で行われたことに安堵せざるを得ない。目尻に浮かぶ部分的な痛みを堪える涙が、視界を揺らす。



「いい加減覚えろよ…」

「もぅちょっと待って!待ってぇ!何で力抜いちゃうのぉっ」


 決してイザークの身体から力が抜けているわけではない。むしろ身体は緊張と羞恥に強張ったままだ。とにかく一刻も早くこのバカバカしい状況から解放されたい。



「俺はアイツみたいに四六時中興奮しているわけではないわ!この馬鹿者が!」

「え?興奮?力入れてる訳じゃないんだ?コレって興奮したら上を向くんだ!!?」

 ああ無情………いや、ああバカバカしい!



「出来た!これで良いんだねっ」

 そして目の前の完成作品に、イザークは一も二もなく満点を出した。


「なるほどー!これで、ほぼ100%に近いぐらい完全に遮断されるんだ…。ようし!覚えるぞぉ」

 気合いの入りまくったキラの姿を目の前にして、完全に違うナニカをイザークは知った。お目当てのものをむんずと掴んだまま真剣に向き合うキラ。アホらしいくそ真面目…という、とおっても矛盾した事態にイザークは頭を抱えた


「やだって言われた時でも、僕が出来るようになってなくちゃ」

 出生の仕組みをラクスから教わった時、キラは今まで自分がどれだけ危険を回避できていたか、その奇蹟を初めて知ったのだ。

 アスランは喜ぶだけかも知れないが、キラにだって自分の想いはある。タイミングの問題もある。あまりな多産は身体を壊すということも教えて貰った。変態対策にはどうしても必要なのだ。その必死さが分かるだけにイザークの心情は複雑だ。



「この次はアスランだけにしろよ!」

 もうしない!したくない(イザーク実感)。


「ええ〜〜〜〜っ。ちょっと待ってよ、これだけは、これだけは自信が持てるまで練習させてよぉ!!!」

 必死に練習台にすがりつくキラ。


「あッ痛ッ!こら、力を入れて握るなバカ!」

「え?痛いの???ええ〜〜〜〜?」


 でもって頭をパコッとはたかれ、更にキラの私生活メモは、方向を間違ったまま充実の一途をたどっていった。

「……………。しかし……それだけ見たらどこかのAVメモだな……」





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第18話   こんな前提さえなければ撮っときゃ売れる!





 それは現実。キラがイザークやラクスから聞きだした、常識の真実の姿をメモした紙の内容のほとんどは、ソッチ関係のメモで埋め尽くされていた。



「うん…ごめんねイザーク。本当に感謝してる。だって、今こんなに忙しいのにこうやって体を張って教えてくれなきゃ、僕は…アスランがどんなにオカシイかに気づけずに、間違った道を歩いてた…」


 しおらしく素直に言われれば、さすがにその姿はイザークの心を打つ。とにかく外見は完璧なヒビキ教授の<世紀の自信作>だ。イザークの顔には朱が走る。その不安そうに揺れる紫の瞳は、アスランでなくてもほぼ全ての男の心を打つだろう。

 知らず、その罠にはまっていたとて誰も彼を責めることは出来ない。優しくキラの両肩に手をやりそっと引き寄せれば、彼女は当たり前のように落ち着いて、身体を預けてくれた。



 イザークの鍛えられた身体の上に、キラの華奢でたおやかな女性の身体が寄り添う。確かにこの感触、こんな関係では愛おしいと思えるだろう。


「俺は………お前の役に立ってるか?」

「うん…」

「お前の気持ちは、安らぐか?」


「うん…。こんなに静かなの、本当久しぶり………こういうの、欲しかった………」



 そう、こんな関係で良かった。まだ19歳という若さだ。何かに追い立てられるように急ぐ必要はないと思っていた。アスランとも、こういうふうに隣にいて同じ景色を見ていたかった。



 気が付けば、士官室に掛けられた小さな絵画を見ながらほんとうにくちづけあっていた。

いいわけ:ごめん。イザキラ注意前回書いとけば良かった?コレがまたまたフラッグなのだよお富さん(誰)
次回予告:浮気上等!



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