「ねぇ、ねぇイザークったら!生きてるの?」 「生きてるわ!」 「ちゃんと目、醒めてる??大丈夫?あ…そだ、僕イザークに人工呼吸とかしなくて良い?あれ?この場合どうするんだっけ……???早速エマージェンシーだよぉ」 キラがとりあえずイザークに顔を近づけたため、非常に不味い雰囲気を感じ取ったイザークは、とっさに彼女の名前を大声で怒鳴って彼女の不要な動きを止めることに成功した。 「キラぁッ!」 「はいッ!」 キラは至って真剣だ。彼女には彼女なりのちょーぜつ真剣で逼迫した思いがある。イザークは彼女の肩を痛いぐらいぐわしと掴んで怒鳴る。 「真剣な顔して俺をからかうな!」 「何言ってるの!僕はめちゃくちゃ本気だってば。ラクスから聞いたんだ。これはラクスじゃ出来ないことなんだって。だからイザークに頼んでる。僕は、これをどうしても完全マスターしなくちゃいけないんだよ!」 真剣だってことは伝わるが、コレでは何のことやらちんぷんかんぷんだ。 「俺に解るように最初から説明しろ!唐突に!何が!!どうなって!!!こんな破廉恥な話になってるんだ!!!!」 |
主な夫と書いて主夫!しゅふ! 第17話 人身御供 |
「だって信じられる?コレが、こんなちっちゃいゴム製品が、すごく役に立つって言うんだ」 でもって、ラクスから実物を貰ったらしい。例のモノはきちんと包装されたままキラの指につままれ、容赦なくイザークの顔面に突きつけられた。一般常識に欠けるキラだからこそ出来た所行であるが、客観してみるとこの光景はかなり恥ずかしい。 「お前、ソレを男に突きつける意味、判って言ってるんだろうな?」 「判ってるよ!今このクソ忙しい時に、僕が出来る最も簡単で効果の高い防衛策だって」 ………と、ラクスが言ってた。正確に言えば。 「意味わからん!最初から順を追って説明しろ!」 そうだ。何故、アスランではなくイザークなのか?というあたりから。でもって、キラからゆっくり話の全貌を引き出したところで、イザークのうなり声は変わらなかった。 「だから大丈夫だって言ってるだろ!僕は今更男の全裸見たところで驚きもしないよ」 キラはキラなりに切迫した理由で焦っているが、イザークには伝わらない。 「言葉を慎め!恥ずかしいことを堂々と言うな!」 「イザークが分からず屋だからだろ!」 「良いか?キラ・ヤマト!男の裸うんぬんから、事後に至るまで、普通は友人や同僚にはおいそれと喋ったりしない。パートナー同士の秘密にしておくべきことだ。それが社会を円滑に渡っていくために必要なスキルだ」 「うんわかった」 「今のうちにメモしておけ」 で、こんなこともメモされる。 「…で、イザーク教えてくれるんでしょ?偽装だけど僕は今君とパートナーみたいなもんだし、良いんだよね?」 ………って、ラクスが言ってた。 「い……………今の状況じゃ、俺以外にいなさ…そう、だな…………………」 イザークは他の同僚達の顔を思い浮かべ、どの可能性も犠牲にするには危険すぎると結論が出た。ましてやこの計画を遂行するに、適任なのは…と考えると………。 「あのさぁ………そんっなに、嫌なことなの?」 「露出狂か性犯罪者でもない限り、普通はしない」 「なるほど。これもメモ………と。ありがとうイザーク。おかげでやっぱりアスランがどれだけ非常識でド変態なのかがよく判ったよ」 キラはあくまで真剣だ。確かにキラもアスランもコーディネイターなのだから、ナチュラルと比較して子供は出来にくいだろう。けれど、だからこそあの変態はキラに避妊を全く教えなかったのだ。関係が続けばいつかは出来る。しかし、キラにだってタイミングや数を選ぶ権利はあるのだ。いくつかある選択肢の中で、最も簡便で着実な方法として、ラクスはこの方法を教授したのだった。 それはしばらくイザークを唸らせて、結局苦悶の表情付で了承させた。 |
いいわけ:イザークは時として犠牲者になったりします
次回予告:こんな前提さえなければ撮っときゃ売れる!
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