行政による代執行。それは、公共の福祉の名の下に、国や地方公共団体による権力を駆使して違法状態の改善または行政上都合の良い状態を実現し、その為に要した費用を、すべて強制執行を実行した側が求償できるという、最終兵器。 |
主な夫と書いて主夫!しゅふ! 第15話 そして押しつけられた負の遺産 |
判りやすく言えば、傍迷惑なアスランを無理矢理引越させておいて、引越費用をアスランの財布から行政府が分捕っちゃう、そういうことだ。 コレでとりあえずこの街は迷惑行為から解放され、住民の健康で文化的な最低限度の生活は保障される。 「結局どこにしたの?」 と訪ねるミリアリアに対し、 「アスハの別荘。セキュリティー付」 と、カガリは一見条件の良さそうな答え方をした。うん、オトナになった! 「あ”あ”ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜……………」 と、ミリアリアに言わしめた。実際、ド田舎と別荘と迷ったが、結局ド田舎から脱走される危険性と、その対処にかかるメンドウゴトを切って捨てた結果だ。 「とはいえ、アスラン一応めちゃくちゃ役に立つわけだから、通信の自由は保障してある」 政府では公に手が出せないこともある。その点、政府とは関係ないアスハの別荘に<友人>を<泊め>、結果友人が<普通に暮らす>分には知ったこっちゃない…という手が使えるからだ。しかもカガリと一番連絡が取れやすい位置で。 「…で、ついでにもっと便利な通信環境と、キラが見つかった時には迎えに行くことを全面的に支援すると言って、トラブルなく引っ越して貰った」 「……………。美味しそうなエサね」 「美味そうだろ?」 二度の大戦を終結に導いたオーブの新しき獅子は、豊富な経験を経てちょっぴり腹黒く成長していた。 一方、プラントではイザークが早くも困惑していた。キラの生活スタイル、それはほとんどがアスランが残していった悪影響だった。まさかこれほどまでに酷いとは思わなかったのである。 「これ…」 「???何?それ」 イザークがキラに差し出したのは、市販のマグボトル。 「ちゃんと水飲め!」 きょとんとするキラ。しばらく彼女と話した結果、早速ひどい事態その1が判明したのだ。彼女の話を要約すると、たとえば飲み物はすべてアスランが用意し、ほぼ1〜2時間ごとに彼女に飲ませていたらしいそれも口移しで。 いくら偽装とはいえそこまではできない。仕方ないから容器を買ってきて、彼女に渡した。…………で、それは当然。 「どうやって使うの?」 きらきらと瞳を輝かせ、新しい物に興味を示すキラに頭を抱えたのが始まり…。 基本的に朝は一人で起きる………から始まり、身に付いてしまった習慣のほとんどに<生活指導>をし直さなければならない、ということが判明した。 「わかんない、わかんないよ。もっとゆっくり優しく言ってよ」 そんなこと言われても。あまりにも膨大かつ細かいな事柄に、イザークはすぐにブチ切れる。 「そんなに怒んなくったっていいじゃんかぁ〜〜。もぅっイザークの顔が変形して見える〜〜〜」 「そんなことしてたら、お前にその気がなくても男なら勘違いするって、何度言ったら判るんだ!この石頭!」 「石じゃないもん!ちゃんと骨と肉と脂肪と器官で出来てるもん!神経だって通ってるんだよッ」 イザークの怒りは既に沸点を軽く超えていた。あのアスランの異常な甘やかしように。 「仏の顔も三度まで…という言葉を知らんのかお前は…」 「………。だってアスランそんなこと言わなかった。僕が何しても良いよって言ってくれて、いつも気持ち悪いぐらいに笑ってたから………」 ずっと…知らなくて………。 「〜〜〜〜〜とにかくだな、普通の友人関係なら一緒に風呂は入らない!全部自分で何とかするんだ。ちなみに長湯して中で溺れるなよ?」 キラは困ったような顔をしてとまどっていたが、しばらくしてメモに書き留め、挑戦してみる…とけなげに言った。今までの口論がなければその顔は小悪魔級だった。 |
いいわけ:ぬるま湯に浸かる…というが、アスランの用意したものは心地よい温泉だったという話
次回予告:天才キラ・ヤマトの華麗なる生活メモ
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