「ホントだ、ホントに廃人になってるコイツ………」


 キラ、ラクス、イザークの美しい三人同盟が、堅いちぎりを確認しあっていた頃、ミリアリアから話を聞きつけたカガリが、どうにかこうにか休日を調整して、くだんの超迷惑ルームにやってきていた。

「なんだこの真っ白な灰は………」


 天下にその名をとどろかせた英雄アスラン・ザラは、真っ白に燃え尽きていた





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第14話   くしゃみ2回で誰かが噂をしていると言うが…





「触ったら崩れそうだ」

 そう、まるで朝陽を浴びて灰の固まりになってしまった、吸血鬼のように。

「アスラーン、ア〜スラぁあ〜〜〜ン」

 返事は、勿論ない。


「おい、アスラン!?大丈夫か?お前……」

 それでも灰は答えない。


「アスラン!私だ、キラ…「ぇえッ!!?どこどこ!?キラはどこッ!!!」

 お約束の展開に、もちろんミリアリアに殴られた。


「今度はバットにしてやるわよ!このへたれ!」

「末期じゃないか。キラの姉だ、と言おうとしただけなのに…」


 そこで初めてアスランは目の前の女性を認識した。

「なんだ…。ミリアリアにカガリか。キラが見つかったとかいう話じゃないなら帰ってくれ」



「そのキラなんだがな、長期休暇届を出したままこちらでも見つからないんだ」

「そりゃそうだろうな。根性で組み上げた俺の探索プログラムにも引っかかっていないんだから…」


 アスランはあからさまにため息を付いた。既に手を尽くした…現在進行形で尽くしている最中なのだ。

「でも、生きてることには間違いないと思うんだ。キラは、きっとオーブに帰ってきてくれる。ほら、だから元気出せよ。アスランの方でも行政府では手が出せない範囲、探しててくれてるんだろ?」



 いつものようにアスランの前に立ち、彼の両肩をがっしと掴んで軽く揺する。椅子に座ったままのアスランの前で、カガリの胸が少しだけ揺れた。


「………。やっぱりダメだ…無理だ………」

「ダメじゃない!諦めるなんて早すぎるだろ!」


 アスランは意気消沈、といった感じでひたすらため息をこぼすばかり。その心底憔悴した様子を見れば、さすがに可哀想に思えてくる。そこだけ見れば。



 だが、ミリアリアにもカガリにも何となく察しは付いている。キラの奴、トンズラしやがった、と。とはいえ、キラ・ヤマトの存在はオーブにとっても大きすぎる。カガリとしても、せめて安全な場所で問題なく過ごしていてくれればいい、と願うばかりだ。





「違う。やっぱり…違うんだ」


 アスランは、泣きながら力無くふるふると首を振る。だがその真意は、真剣なカガリとミリアリアの心をどこまでも逆なですることになる。


「この胸じゃ、萌えない………」

 沈黙の神が、一瞬にしてこの場を支配した。



「「………………………は!!?」」


「育てたんだ。俺が…この手で………。一生を通してずっと美しい形でいられるよう。胸だけじゃない!肌のきめやボディラインにだって細心の注意を払ってきた。無理の無いようにウェイトコントロールして…キラだって喜んでくれてたのに………」


 ミリアリアは回顧する。

 キラが喜んでいた?ソコは激しく疑問だ。キラだってアスランのことを嫌っているわけではない。ただ、安心して頼れる普通の彼氏として隣にいて欲しいだけで、別にナイスバディ維持のために狂奔してくれなくても良いのである。





 ふと見ると隣でカガリが拳をわなわなと震わせていた。いかん、ヤバい。


「ぉ…お………おッッ!お前なんかに大事なキラはやらーーーーーーーーーん!!!!!!!」

 とりあえずお約束の<堅物オヤジ>が出現した。そして、


「オーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハの名において命ずる!この傍迷惑な国家の恥さらし野郎は今すぐ引越だぁあああああッ!!!!!」



 こんな状態のアスランを市街地に住まわせてはいけない。それは国の統治者としての正しい判断だった。

いいわけ:カガリに一言叫ばせたかっただけではいけませんかw
次回予告:そして押しつけられた負の遺産



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