ばっちこぉおおおおおおおおおおおんん…ん!!!!!!!!!!!!!

 それはお約束。



「あらあらあら。これではしばらくこの部屋から出られませんわねぇ…」


 ラクスの表面的には困ったような言い様。そして、イザークの左頬に盛大に付いた、痛々しいほどに真っ赤なモミジマーク。



「だからって、だからってイキナリぶちゅ〜〜〜っとすることないだろ!!!」





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第13話   踏み出した一歩、そして一気に五歩進む





 理不尽に怒鳴られて、イザークも黙ってはいられない。

「お前がいつまでたっても固まってるからだ」


「当たり前だろ!アスランとしかしたことないんだから」



 言い直せば、アスランが恋敵候補を片っ端から葬り去ってきた、努力と根性の成果でもあるのだが。


「この話は急ぐ。そうですね?ラクス嬢」

「ええ、そうですわ。イザークがZAFTに所属している以上、軍の機密やプライベート事項という隠れ蓑が使えます。仲良さそうにZAFT施設内を歩いて、それとなく啓蒙活動をしてくださればよいのです」



 それで、二人の後に続こうと、交際や結婚を本気で考え出す者が出てくる。民間よりZAFTが都合がいいのは、職務上女性に餓えている男性が圧倒的に多いからだ。

 人というのは命を失うかも知れないという状況に陥った時ほど、子孫を残そうとする衝動に強く駆られる。それはナチュラルもコーディネイターも変わらない遺伝子の啓示。


 その為に都合がいい、この偽装。

 キラがシステムの組み直しで施設中を歩く。イザークが恋人として彼女を追う。仲のよい、似合いのカップルはZAFT中の噂と憧れになる。そしていつしかZAFTだけではなく、彼らの家族を通じて、コーディネイター中に広がれば申し分ない結果を伴うだろう。そこまでいかなくても、とにかく風の噂でも何でも広がれば広がる程良いのだ。





「一石二鳥は判るけど…上手く行くかな?」

「この作戦が一石二鳥になるか、一石三鳥になるか、はたまた無駄足になるかは…すべてはこのキスにかかっているのですよ、キラ…」

 キラは頭に大きな冷や汗を垂らす。


「ところでラクスはどうしてそんなに悔しそうなの?」

「それは…それは、わたくしでは役に立たないからですわキラぁあああッ」


 びたっと貼り付いていたところを、イザークにべり〜っと引っ剥がされた。

「話がややこしくなるから、彼女を混乱させないでください」



「えーと、要するに、僕がイザークとラブラブに見えれば、みんなが羨ましがるってことなんだよね?」

 ヒビキ教授が極秘裏に生み出した<人類の至宝>は、ともすれば感情に流され、余計な説明に気を取られる一般的コーディネイターの悪癖を、一刀両断にぶった切った。



「あの…、一つだけお願いがあるんだけど………」

「何だ?」

 キラは咳払いをし、畏まり、そして頬を染めながら眉をハの字に曲げて言った。


「アスランみたいに昼夜見境なく突っ込んでくるのだけは、止めてね。僕マジ切れしちゃうから」



 その至極当たり前なお願いに対するイザークの答えは勿論、

「誰がそんなコトするか!」

 で、キラをとても安心させた。



「良かったぁ。それならすごく安心だよ。もう、プラントの人ってみんなアスランみたいなんじゃないかって、ホントはすっごく怖かったんだ」


アスランが異常なだけですわ」

「お前の話を聞く限り、アイツは人類の恥だ」


「だよねだよね?そう思う?そうだよね?アスランはこのくらい普通って言ってたけどどう考えても違うよね?普通の恋人って、朝から裸エプ○ンでバック責めとかお茶やコーヒーを口移しで飲んだりしないよね?触っただけで胸囲が0.3p大きくなってるとか判んないよね?手を繋いだまま運転したりお尻の形に固執したり…」


 その後もズラズラと明らかになる異常行動に、約二名は怒りをたぎらせていった。

いいわけ:アスランの異常行動は今も昔もキラにだけです
次回予告:くしゃみ2回で誰かが噂をしていると言うが…



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