キュイ〜〜ン………シュンッ!………びよぉんびよんっ…ヒュッ

 ガゴン!


<ハロハロ!ハレンチー!ハレンチー!>



 きちぃんとロックしておいたハズのドアを、何故か余裕で開け、飛び込んできたついでにイザークに見事なアッパーを食らわせた、ピンク色の球体ペットロボ。その出現に少しだけ遅れて、プラント随一の権力者はやって来た。





主な夫と書いて主夫!しゅふ!

第11話   悪魔の荷担





「もうしっかりガッチリ勤務時間のハズですわ」

「「ラクス!!!」」

<チーコークゥウ〜〜〜vハロッ!チーコークーチーコークー…>


「あらぁ?あらあらあらぁ〜〜〜?お二人は夜更かしが過ぎて遅刻かしら?」


 シュン!……………カチャリ。

「ら…ッラクス嬢!?今、ロックが………」



「はいv大事なお話がありますので、閉めさせていただきました。わたくしのピンクちゃん改はとても優秀でしょう?」


 先ほどとは全く違う表情で、ラクス・クラインは近づいてきた。





「キラ、よく眠れまして?あなたが睡眠不足ですと、ZAFT中のシステムの整備が滞っていけませんわ」


「や、おかげですごくよく寝られたのは良いんだけどさ、何か変な話になってるんだ」



 ラクスは小悪魔のようなにっこりした笑顔を崩すことはなかった。

「それは、肉食系偏食ド変態を小気味良いほどに振って、イザークとまっとうな交際をされるというお話ですわよね」

 まっとうな、の部分にやたら気合いが入っていると聞こえるのは、キラだけではないだろう。さらに、某人物については名前を言われなくても、3人の共通認識になっているあたり、事態は末期だ。


「いやね、付き合う訳じゃなくってね、その…付き合ってるふりをするんだって………ジュールさんが…」

 いまいち事態を飲み込めていないキラ。その困惑する仕草すらラクスには愛おしくてたまらない。


 ああ、本当に自分がキラと付き合っているのなら、今すぐにでもガシンと抱きしめて、有無を言わせず押し倒し……………以下自主規制。もぉっ、どうして両親は自分を男に生んでくれなかったのか!そしたら今頃目の前の可愛い可愛い彼女は、自分が美味しく食べちゃ………強制終了。



 だからアスランの気持ちも分からないわけではないのである。13歳の頃ならまだしも、16歳に成長したキラとラクスは出会う機会を得た。その頃には本当に花のように可愛いばかりで。今、目の前にいる19歳のキラは、その上大人の階段を上る魅力が加わって……………………早い話が鼻血ブバーーーーーものなのである。





 ラクスは部屋の通信機器を操作し、にぃっこりした笑顔で彼女の権力を濫用した。

「本日はわたくしとジュール隊長とキラとで、システムの基本コンセプトに対する重要な会議を行いますの。すみませんが、シフトの調整をそちらでお願いいたしますわね」


「……………」

「………ラ…クス!!?」


「重要な会議は、間違ってはいませんわ。それに、この会議はこれからのプラントと、地球との…強いてはオーブに対する国家間会談にも、密接に関係いたしますもの」

「ぇえッ!!?そんなに大事なことだったの!?この偽装………」


「もちろんです。それは今から説明いたしますわ」

 まるで何でもない世間話をするような雰囲気のラクス。だが、彼女の話は、プラントに、特にキラに都合がよかった。ラクスの目論見は判る。現状態であのアスランに、無防備にプラントに突っ込ませるわけには行かないのだ。二重にも三重にもバリアーを張っておく必要がある。


 だって、タダでさえぐちゃどろの状態のプラントのシステム整備が、全く進まない……どころか、キラとの交際に都合のいいように、余計なシステムを追加されるかも知れない。巧妙に隠された、たった数行ほどの書き換えられたプログラム。それをこの天文学的なプログラム群からはじき出すのは至難の業。ハッキリ言って、「アスラン今邪魔」なのである。



「問題はこのガードシステムがうまくいくかどうかだな」

「上手く行ってもらわねば困るのです。いいえ、この際禁断の呪いをかけてでも遂行して見せますわッ」

 こぶしを振り上げ、真剣な表情から繰り出されるラクスの鼻息は、ひたすらに荒かった。

いいわけ:きちんと布石を打つ辺りが女帝のゆえん
次回予告:決意と実行までの遠い遠い距離



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