第9話:Side Athrun
彼女との話は楽しかった。しかしさすがにコーヒー1杯で長居するわけにも行かないので、適当に切り上げて部屋へ戻った。 戻ってすぐに今交換したケー番とメアドを電話帳に登録する。 ……ん? 「あれ?ヘリオポリス?オーブのコロニーなんだ?」 普通のPCと違い、携帯電話のメアドホストには登録住所都市名が入ることになってる。地球とプラントじゃエリアが広すぎて繋がりにくいから、とりあえず現住所都市から当たって、そこにいなければ他の都市を探し出す、じつに効率のいいシステムだ。 まぁ、大抵は登録住所都市にいるからね。 ぼんやりプラントのどこかの都市だと思ってた俺は、一瞬不思議に思い、それでも納得した。平和の歌姫だもんな、プラントに住んでたらプラントの味方って思われるってことか。 「今日はありがとう。初めは、ホントは会ってすぐに断ろうと思ってた。ごめんね。でもまた…」 いきなりな一言に俺は焦った。 冗談じゃない!ラクスはこのまま帰る気だ。なんてこった! 俺はもうラクスにぞっこんなんだろうな。そんな自分の気持ちに苦笑し、認めざるをえなかった。とにかく、どんな手を使ってでも彼女を帰したくなかった。 今までこんなことなかった俺が、女一人に右往左往している。 「もう、そんな時間?もうちょっと話ができないかな?」 「うん…でも、シャトルの予約が……」 「俺も、プラントに…アプリリウスに帰るからさ……シャトル、一緒しちゃダメかな?」 ラクスはえ?と言って、携帯電話を見て、まじまじと俺を見つめてきた。 「携帯のアドレス、アプリリウスなんですね。プラントに住んでるんですか?」 「仕事の関係でね。今、アプリリウスにいるんだ。だから、ヘリオポリスならちょうど途中だろ?」 実家はディセンベルにあるけど、本社がアプリリウスだからね。今の俺のメアドホストもアプリリウスになってるって訳だ。幸いプラントの首都だから、シャトルの便数は多い。 ラクスはしばらくう〜んと考え込んで、電話してみる、と笑顔で言った。 とっさにそう口走っちゃったけど…もしかして成功?俺はもう少しラクスといられる? ラクスは、少しでも電波状況の良いバルコニーに出て、電話をし始めた。 俺は、部屋のPCを立ち上げて、今夜彼女と一緒に行くレストランを探し始める。正直、こんなことになるとは思ってなかった。 帰って父の苦虫を噛みつぶしたような顔を見るのもイヤだから、適当にオーブ観光をして、帰ろうかと思っていたところだった。 「うん……うん、え?ちゃんと会ったよ!ウソじゃないよ!……うん、僕ももう少し話したいから…」 ラクスの弾んだような声が聞こえる。俺は何だか胸が高鳴った。 「…うん、あとで、彼が途中まで送ってくれるって………え?……う〜ん………かもね?」 カチャリと窓の閉まる音が聞こえて、彼女は俺のそばに戻ってきた。あ、どうしよう…なんかドキドキしてきた。可愛い子見ると鼻血が出ない?ってディアッカが言ってたけどソレ…判る気がする……。 「あのね、もう少し…話できるよ」 「お許しが出た?」 イタズラ半分に聞いた。 「うん。結婚するって言っちゃった……」 俺は思わず吹き出し…そして固まった。 あ〜今俺はサイアクに間抜けな顔をしてるんだろうな〜〜。嬉しさより先に、びっくりしてしまって…もう、なにが何だか。 ……と言いたいところだったが、現実はそうは簡単にはいかない。 「冗談!冗談だよ冗談!こんな早く決められるわけないじゃん…ねぇ?アレ……?」 衝撃の一言だった。 これは効いた。俺の心にクリーンヒットだよラクス。 俺は今座っていたイスから無造作に立ち上がり、彼女の元に近づいた。彼女はびっくりしたように、その綺麗な紫の瞳を見開いて俺を見続けてくれている。逃げないことを良いことに、間合いを詰めてそっと彼女の腰に腕を回した。 やっとこさ、俺にもいつもの余裕が出てきた…かな?ああでも、彼女の顔を見るとまた心が揺れるなぁ。 こんな至近距離でまじまじと俺を見上げてきて……いつもの俺なら問答無用で女の唇を奪っているだろうに、彼女にはなぜだかそれができなかった。 今は彼女の心をちゃんと掴みたい。 「あ…あの、一体………?」 焦りながら不思議そうに見つめる彼女の耳元に顔を寄せて、俺は低い声を意識しながらささやいた。 「俺は…このまま一緒にいたいなぁ。結婚……しちゃってもいいなって思ってるんだけど……君は?」 触れた肌から彼女の体温が一気に上がるのが感じとれた。 第10話へ→ ◇◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇◇ 言い訳:へたれ→スケコマシ→へたれ→スケコマシ…とアスラン大忙し(笑)プルシャン・ブルーのアスランは微妙に黒気味かも…(でも黒じゃない) 次回予告:それは仕方ないのよ、同じセリフでも考えてることが全ッ然違うので〜〜〜。そこんとこは読み進められましたら、よぉ〜く判るようになってます(笑)第11話からそれぞれの勘違いが暴走し始めますv |
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