プルシャン・ブルー

第6話:Side Athrun



 3時過ぎ、ラクスをカフェに誘って正解だった。


 彼女と出会ってわずか30分、俺はだんだんふわふわしてきて、ホントのところ頬が赤くなってくるのが止められなくって……。どうにもならないから、時計を見て、ここに「逃げて」きた。


 女の子を目の前にしてこんな気持ちになるなんて想像つかなかった。

 そりゃぁ、彼女をちらちら気にしてる周囲の男どもの反応は判るよ。何てったって天下の歌姫がこうしてここで男とお茶飲んでるんだから。


 でも、正直譲れないな!この笑顔が目の前から消えるなんて思ったらぞっとする。



 忘れろって言われたって忘れられそうにはないよ。





「わぁ…オーブって本当に温かい国なんですねぇ」


 ラクスが外を見て笑ってる。鉢植えで咲いている南国の鮮やかな花が、どうやら彼女の心を射止めているようだ。


 不思議な気分だった。彼女が笑ってるだけでこんなにも幸せな気持ちになれるなんて!





「そうだね。プラントではあまり見られないよね。こんな綺麗な花」


「そう!使える電源って限られてるでしょ?気温を1度あげるだけでもスペースコロニーではとんでもない電力消費だもんね。メンテ大変だよね。バグ取りだって時間かかるし…地球とは違うよね」



 俺は一瞬固まって、まじまじとラクスを見た。



 歌うだけじゃないんだ……彼女。






「プログラムに興味あるの?」


 あ…やっぱり?顔に思いっきり「しまったぁあああッ」って書いてあるよラクス。もう遅いけどね。



「あ…ぃや……これは、その…普通ね、そうかなーって思って………」


「バグ取り、大変だよね。俺も趣味で機械いじりしてるけど、大変だよ」





 あ……これはいい話題かなー?ラクスが身を乗り出してきた。

 へぇ〜女の子なのに珍しいなー、こんなことに興味あるんだ。どうしようかと思ってたけど、案外合う話題に不自由しないかも。



「あ、自分で作っちゃう方なんだ?」


「うん、自作派。マニアくさいかな?」

「ううん!僕は手が不器用で、そういったの苦手だから、そういう友達がいたらよかったのにな〜って思って…」



「ああ!マイクロユニット?」

「………うん」


「俺も苦労したよ。プログラムがね、嫌いじゃないんだけど、そんなに得意じゃないから」





 見た感じラクスはかなり「苦労」したようだ。

 たしかにコーディネイターだから、タダでさえ課題の難易度は高いよね。個人個人で得手不得手、好き嫌いもあるってのにね。


 俺もプログラムはいつも友達に手伝ってもらってたっけかなぁ。それにしても彼女が「手伝って」って言ってきたら、俺は他のヤツ押しのけてでも手伝ってやってたのになぁ。





「よかったぁ。こんなにできないの、僕だけだって言われて…本当言うと諦めちゃって、ほとんど投げてた」



「プログラミング理論は?成績良かったんだ?」


「ううん、あんまり」

「……え?」



「良かったのは「プログラム実技」のほう。でもこっちも…いつもやりすぎて怒られちゃってたんだけどね」


「やりすぎ?」



「僕のプログラムは組み方がメチャクチャなんだって。でもさ、マトモに動けば問題ないじゃん?だいたい『コンピュータOS理論5』のテキストなんて、コチャコチャしすぎなんだよ。だからバグが増えるんだよ。もっと簡単に組めるのに…ぁ………」






 『コンピュータOS理論』……あったなそういう講座が。俺がさすがに丸投げした講座だ。

 ラクスは、喋りすぎたと思ったのかまた少し焦りだしていた。そういうとこも可愛いなぁ。気にしなくていいのに。



「俺、君のプログラムを見てみたいな」

 仕事のことが頭をよぎらなかった訳じゃない。そうではないがほぼ単純な興味で俺はそう言った。そしたら、それを口実にまた彼女と会えるではないか!


 このとき俺は確実な約束が欲しかった。



「うん、いいよ」


 彼女はアッサリOKしてくれた。

 やった!俺はまたこの笑顔と会える!俺は子供みたいに純粋に喜んだ。





「ケー番とメアド…聞いてもいい?」


「うん!電話とかいっぱいしよ!」



 目の前にラクスがいなかったら俺はきっとこぶしを振り上げてガッツポーズをしてたに違いなかった。


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言い訳:
へたれスケコマシ…なんだそりゃってな展開ですが、まぁ彼のことですから(大笑)それにしても……臭ってきそう〜〜〜(冷汗)

次回予告:次回カフェ編キラサイドです。アスランの知らないポケポケなキラの心情をこのセリフでじっっくりと(笑)

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