第5話:Side Kira
僕は乗り気じゃなかったけど、ユウナさんはこうしてずっと待っててくれてたって事は、話をマジメに受けとってたって事だよね? そのことに思い至ると、頭から青くなってくような気がした。 ここはもう、下手にオロオロするよりぶっちゃけて先に謝ったほうが勝ちだ!僕は瞬間的にそう判断した。 「ご…ごめん、なさいっ。忘れてた訳じゃないんだけど……寝坊…しちゃって……」 言ったことは本当のことなんだけど、これってバレッバレな言い訳っぽいよねぇ〜。 しまったな。でもとっさに出ちゃったし…今さら別の言い訳なんて考えられないし、このまま押し通すしかないよね。 ユウナさんはぷっと吹きだした。だって僕は就活の邪魔されてホントに嫌々ここに来てるんだから、はっきり言ってウソじゃない! そう自分に言い聞かせていると、ユウナさんがこっちにやってきた。 え?なんで?僕なんかした? あ…イヤ違う。ドアの前で僕が突っ立ってるからだ。でも、こんな場合どうしたらいいのかな?わかんないよ……。 「知ってるよ。忘れたかったんだよね」 ああ〜ユウナさんにばれちゃってる。ホントのことだから、仕方ないけどね。 「や…だから、忘れてた訳じゃ……なかったんだけど……」 「うん」 「疲れてたし、ちょっとくらいいいかなって思ってたらホントに寝過ごしちゃってて……」 こんなこと言わなくてもいいのに。もうちょっとマシなウソ……つけないよねぇ僕には。 「俺も急な話だったから、本当は気乗りしなかったんだよ」 でも、ユウナさんのこの一言に僕はハッとした。ぅわぁ、何だかすごい安心感! 「え?そうなんですか?……ホント言っちゃうと、僕もそうでした」 彼が小首を傾げてたことに気づくことなく、僕はなぜだか自分に納得してた。 「あ…普段、一人称は「僕」なんだ……」 大事なこと忘れてた! 今朝まで母さんとあれだけ練習してたのに!もう遅いけど慌てて口元を押さえた。 「ごっごめんなさい…ぇ、えと……私………」 冷や汗が止まらない。目の前の彼は吹き出してるし。焦れば焦るほど、何を言ったらいいのかわからなくなった。 「あ…ぁのっ……僕なに……じゃなかった、私…その………」 「ごめんごめん!俺が悪かった。きみは悪くないよ…ってか、自分のこと僕って言うの似合ってて俺は好きかも!」 この時僕は目を丸くしてたに違いない。びっくりして…でもおかげで何だかユウナさんをやっとマトモに見ることができて、僕は少し落ちついたんだ。 藍色の髪に、青緑の瞳… あ、僕と同じ、コーディネイターなんだ……。 「え?いいん、ですか?」 「らしくて良いと思うよ。俺は好きだから、俺の前では無理しなくて良いからね」 政治家のボンボンなんていいイメージじゃなかったけど、こういう人もいるんだな。 「でも、嫌じゃなきゃ聞いても良いかな?一人称僕の秘密」 そう言いながらソファにエスコートされた。そういう経験って初めてだから、僕はちょっととまどったけど、気さくで優しそうな人だし、まいっか。 「あ、ぅん。あのね、小さい頃学校の近くで痴漢がたくさん出てて、怖いよって母さんに相談したら、逃げられなくなったら「僕」って言いなさいって」 ぷーーーッ! あ〜やっぱりね。吹き出すと思ったよ。でも僕は必死だったもん!笑えないよ。 「あ…でもおかしいですよね?やっぱ」 「おかしくないよ。でもそれ、効いたんだろ?」 「うん、すごく!顔真っ赤にした男の人が、オトコだぁあ〜〜〜って言いながら逃げていってた」 「あはははははは!良いんじゃない?別に、無理することないと思うよ。だから、俺の前ではちゃんと僕って言って」 さりげない一言に僕は何だか安心しちゃった。あんなにガチガチに固まってたのがウソみたい! 「うん、ありがとう」 そう言うと、ユウナさんは時計を気にして「もうすぐ3時だね」と言って僕を喫茶店に誘ってくれた。 第6話へ→ ◇◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇◇ 言い訳:アスラン…スケコマシすぎ!!!(←自分で書いといて何を言う…)それにしてもキラ…頭の回転は速いのに、相変わらず何かが抜けています。この温度差が後々響いてくるのであります(ふふふふふ……) 次回予告:次回カフェ編。代名詞のおかげで、お互いの誤解は全く解けることなく、二人はオタッキーな話題で意気投合するのでありました。 |
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