プルシャン・ブルー

第35話


 そこは戦場と化していた。敵味方に分かれ、飛び交う口論とののしりあい…そして聞き入れられることのない哀願が、カタカタというキーボードを打つ音をBGMに繰り返されている。



「もういい加減にしてよ」

「キラがこの変態をあきらめたら、俺は何も言わないんだ!」


「アスランは変態なんかじゃないってば!」


「キラ〜何でわかんないんだ!?こんな浮気ウサギと一緒になったら、絶対泣くことになるんだぞ!兄ちゃんはキラの悲しむ顔を見たくないんだ。な?」



「黙って聞いていれば言いたい放題を!俺はキラ一筋だって言ってるだろう!浮気なんかするか」



「じゃぁ…流れまくってる噂をどう説明するんだ?それに今までの悪癖がそうそう変わるものか!」


「噂は単なる噂だろう!俺には関係ないさ。それより…邪魔をしにきたんだったら帰ってもらえないかな?キラが苛ついているじゃないか!」





「だいたいの設置は済んだんだ。お前が帰れば問題ないんだ」


「そう言うわけにいくか!現代表首長からも立ち会うように依頼を受けている。後々のメンテナンスのためにも、立ち会っておかなければ意味がない!あなたの方こそ、忙しいのではないんですか?」



「忙しいのは忙しいさ。しかし、キラの一生を左右するとなれば話は別だ!兄として、妹の幸せを一番に願ってる」


「じゃぁ、なおさら本業に邁進されたらどうです?」





 そこに割りいる者が現れた。窮地を救った者の名前をレドニル・キサカという。


「カガリ様……いい加減にされたらどうです?ここには二人っきりというわけではないのだし……それに今も、何人も面会予定者をお待たせしてあるのですが…」



「……ぐっ………」



「え!だったらカガリ、行かなきゃダメだよ!だってここはプログラムを書き換えて、配線をいじってもらって、システムの動作確認をするだけだし」


「キラ………」



「カガリとアスランがケンカしてるとこなんて見たくないし、それに導入した数だけ確認しなきゃいけないから、単調な作業の割に時間がかかるし、ね?」



「キラ!終わったらキラの部屋行くから、メールでもいいからとにかく連絡しろよ」

「うん!判った」





 未練たらたらのカガリがキサカに引きずられていった後、数瞬待って再びカガリが部屋に乱入してこないことを確認してから、アスランは感極まってキラにすがりついた。



「ごめんねアスラン。カガリったら思いこんじゃってずっと勘違いしたままだし、君のこといきなり殴っちゃったりなんかして……。今までずっとそんなことなかったのに………」


「大丈夫!きっとね、二人だけになってしまったから、お兄さんは娘をかわいがる父親のような気分になってるんだと思うよ。時間がかかるかもしれないけど、そっちもちゃんと待つからね」





 もはや周囲のギャラリーなど眼中に入らず、アスランはキラの唇を夢中で奪った。


「ちょ……っ、ん〜〜……、…スラ……アスランっ、終わ、らないって……ば!」



「そうだね。早く終わらせてしまおっかv」


「うん!」



 アスランの思惑に何ら気づくことなく、キラはうれしそうに答え、そうして二人は怒濤の勢いで作業を終わらせていった。





 そろそろ日が暮れる頃………。

「終わっ……た…」

「疲れたよ〜〜〜」



 やっとの事で作業を終わらせ、コーディネイターでさえヘトヘトに疲れているなか、ナチュラルの技術者は、あまりのめまぐるしさについてゆけず、その辺にバタバタ倒れていた。



 そんななか。

「キラ…疲れちゃって動けない?」

「もうヘトヘト〜」


「ちょっとつき合って欲しいとこあるんだけど…いいかな?」

「今から?明日じゃダメなの?」



「おいしいものおごるよ」

「うんv行く!」


 疲れ切ってふらふらの頭で、カガリとの約束などすっかり忘れ、おいしいものという条件に吊られてキラは即決した。





 キラがボーっとしている間に着いたのはオノゴロ市役所。そこでアスランはてきぱきと届出書に記入してゆく。


「書類……?ねぇアスラン、それ何?急ぐの?」


「俺は早いほうがいいけどキラは?キラのとこだけ空欄にしてあるから、キラが賛成してくれるならサインをちょうだい」



 目の前の書類……その名は婚姻届といった。

「ん〜僕と…アスラン……結婚するの……?」



 実際のところキラの頭はまだふわふわしていた。ある程度の思考能力はあるものの、なんだか頼りない感じだ。


「俺は、一生キラのそばにいたいな」

「あ、そっか。僕も…そう思う。ずっとアスランと一緒にいたい。そっか!そっか!こうすれば一緒にいられるんだよね〜」



 そしてキラは悩むことなく書類にサインし、その届出書はその場で提出・受理された。





 そのころ、カガリは私用で訪れたという国際的有名人と面会していた。


「まぁ!まぁっ!キラ様は今こちらにいらしているのですね!お部屋はどこですか?わたくし待たせていただきますわ〜v」


 ピンク色した長い髪がふわりと揺れ、得も言われぬ芳香がほのかに香った。


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言い訳:
名より実を取る、それがスケコマシの考えた最終手段だったのです!なぜならこの話はアス×キラだから(今さら…)

余談:ウサギを飼われている方へ。意外に知られていない注意点を少しだけ…。
骨折に注意…ウサギの骨はとてももろく、何かに驚いてパニックになっただけでも、簡単に骨折しちゃいます。健康そうに見えてもレントゲン撮ったら「あらあらあら〜」なんてことも!

ストレスに注意…ウサギはとてもストレスに弱い動物です。飼い主に構ってもらえないだけで、「寂しい…」と思ってはぱたーん…トリマーさんなど知らない人に渡されたときなどに、ストレスを感じるとコテンと死んだりします。

性周期に注意…一定した性周期はなく、時々1〜2日くらいの休止期がある他は、ほぼいつでも交尾可能であり、非常に繁殖能力の強い動物ですので、望まれない繁殖防止に特に留意して下さい。

次回予告:最強ラクス様には勝てません!キラ早速ラクスに「奪われる」!!?

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