プルシャン・ブルー

第34話



「やっぱ…まだ眠いや………」


 オーブ行政府内にあてがわれた部屋に着くなり、キラはベッドにダイブした。確かにシャトルの中で寝た。しかし、自業自得とはいえ朝寝坊のせいで朝食もろくにとっていない。

 シャトルで出される昼食なんて、育ち盛りのキラを満足させられる量じゃないし、すぐにお腹がすくしシートに座りっぱなしじゃゆっくり寝られるわけがない。



 というわけで、その日の夜にカガリがやってきて、扉をノックしようが声をかけようが、はたまた揺すろうが全然気づかなかった。





 翌日の朝。仕事中だったアスランは、朝からいきなり乱入してきた金髪の男に殴り飛ばされた。


「危ないじゃないか!配線が切れたらどうしてくれるんだッ」

「一つくらいかまうものか!」


「冗談じゃない!大事な商品だ」

「そんなことはどうだっていいんだ。お前……今すぐキラを返せ!」


「……ハァ!?何の話だ!」



「お前がキラを騙しているのはわかってるんだ。騙されてるのを知りながら、みすみす見過ごすことができるか!」


「……………。あなたがこのオーブの次期代表首長だということは知ってます。しかし、そのことと俺個人の交際は関係ないでしょう!訳のわからないこと言って、作業の邪魔をしないでください!!」


「それが大ありだ!」



 ガチャッ。

 いきなり扉が開いて、笑顔を全開にした女の子が入ってきた。





「やっほ!カ〜ガ〜リィ〜〜〜v久しぶりだね〜元気だったぁ〜〜〜〜〜vW」


「キラっ」

 カガリがつられて笑顔になっている隙をついて、いち早くアスランがキラの目の前に駆けてきた。


「キラ!何でこんなところに?…いや、それよりもなんなんだ彼は!」



「え?……え?アスランv……ぁ…と、どしたのカガリ兄さん……?」



「カガリ……兄…さん………?」

 アスランが固まった。



「うん。カガリは僕の双子の兄……って、どうしたの!アスラン!!顔腫れてる……」


「キラっ!そいつから離れろ!人生がダメになってしまう」


 カガリがキラを引きはがそうとするが、そうされてはたまるかと、アスランは彼女の体をしっかり抱き込んで叫んだ。



「…だったら何で俺が殴られなきゃなんないんです?」


「え…ッ、カガリ……アスランを殴ったの?」

 キラはカガリとアスランの間で顔を右往左往させながらうろたえた。



「ああ。入ってくるなり何の説明もないまま、いきなり殴り飛ばされた」


「そりゃっダメだよカガリ〜ちゃんと説明しなきゃ〜〜」

「あ…そっか……じゃない!じゃないッ!!キラ…お前は騙されてるだけなんだから、その男から離れろ」



「騙す騙すって…カガリ言い過ぎだよ!アスランは本当に優しくて、僕のことを一番に考えてくれるもん!カガリの思いすぎだってば!」



「アスラン・ザラはプラントの種馬だって言ったろう!噂を聞いたことないのか?とにかくその遊び人から一刻も早く離れるんだ」


 カガリの言葉を受け一瞬にしてキラが振り返る。



「遊び、人……?」





 アスランは少し考え込み、キラに優しく語りかけた。


「交友関係は広いけど、子供を作った覚えはないな。それに…今はキラ一筋だしv」



「ほら!アスランもそう言ってるじゃない!やっぱカガリの勘違いなんだよ」



「キラ!目を覚ませ!兄さんの言うことがわかんないのか?」



「知ってるもん!カガリの言ったこともう全部知ってるもん!ベッドの上でだってアスラン優しかったんだよ!そりゃ、確かにちょっと恥ずかしかったけど…でもすごく気持ちよかったし!!!」



 その瞬間、カガリ・ユラ・アスハは石になってしまった。ピシピシと亀裂のはいる音まで聞こえてくる。





「キラvそんなに気持ちよかった?」

 アスランの一言が拍車をかける。



「うんv柔らかくて…温かくて…ふわふわして。父さんと母さんだってしてるのに、それがいけないこととは思えないよ」


「キラぁv」

 そう言いながらアスランはキラを強く抱きしめ、満面の笑顔で頭をなでている。



「アスラン優しいから大好き!」


「そう言えば腕のいいプログラマーって、キラのことだったの?じゃ…これからお仕事だね。大丈夫だよ、わかんないことあっても俺がいるからねv」


「じゃ、プラントから仕入れたマザーって…アスランのとこのだったんだ!すっごい偶然だね!一緒にやろ!」

「コチャコチャとした配線は全部俺がやるからねv」





 げし!



 フリーズから解けたカガリが、まともにアスランの後頭部に蹴りを入れた。


「何をするんだ!」



「このまま野獣を野放しにしておけるか!オーブの責任者として、俺がキラをサポートするんだ!」



「……。それはつまり、ずっと見張ってるということですか……」


「カガリ!良かったぁvカガリもついててくれれば安心だね!大丈夫だよ、しばらく一緒にいればカガリの誤解だって解けるよv」





 立ち並ぶオーブの政府関係者(←ずっといたらしい)、アスラン、カガリがぎょっとしてキラに視線を集中させる。



(((キラ………全ッ然……判ってない……………)))


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言い訳:
この間の悪さが、我らがキラちゃんデスvそれと、今回のネタ→「新宿の種馬」と「遠山の金さん」…果たしてこの古典ネタが判る方が、一体どのくらいいらっしゃるのやら(爆笑)

次回予告:アス×キラバカップルに救世主現る。しかしそんな幸せも、つかの間であった。黒い影が天より舞い降りる!!

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