プルシャン・ブルー

第33話



 それから2週間


「キラぁ〜〜電話よぉ」

「ん〜?誰ぇ…?」


 カリダののほほ〜んとした雰囲気に釣られて、キラものぽーんとしていると、母親から目を一瞬で覚まされるような相手が告げられた。



「行政府のウズミさんから…」

「……………はぃ?」



 うとうとと寝惚けていた頭が一瞬で覚めてしまい、キラは慌てながらヴィジホンに出た。しばらくして電話を切ると、台所でシチューを作っていた母に言った。





「仕事……母さん、オーブで…頼みたいことがあるからって、僕に来て欲しいって……ウズミさんが」


「え……?」



「なんかねプログラムの組み直しと、ハッカー対策をして欲しいって…僕に言ってきて……。今までのシステムじゃ対応できなくなってきたから、この度思い切ってコーディネイター用のマザーを導入することにしたんだって。そしたら、オーブでは扱えない人が出てくるからって……」


「行政府の?」


「うん、なんかシステムを一新するって言ってた。ね、母さん行ってきていい?行政府が交通費とか宿泊費とか全部出してくれるし、それにちゃんとカガリとも話したいし…」



「それ、全部キラがするの?大丈夫なの?うちでやってる遊びじゃないのよ?」

「大丈夫だよ母さん!僕たちの国のことなんだから、みんなの意見を聞きながらちゃんと組むよ!」



「できません…とか、わかんない…とかはきかないのよ。ウズミさんたちがそれで良いというなら行ってもいいけど……ちゃんとしなさいよ!」


「わかってるよ〜大丈夫だってば!」



 キラはふくれながらも、カガリと会えることにひどく喜びながら自分の部屋に入り、いつものようにアスランにメールを送った。


<今度の土曜日から「バイト」が入っちゃって、一週間くらいオーブに行くことになっちゃった。今度こそ、ちゃんとアスランとのことカガリに説明できると思うから、すっごく楽しみ!だから、ヘリオポリスの自宅に帰るまで、このアドレスじゃ僕には届かないけど、携帯メールならいつでも読めるからねv>





 翌日、キラが学校から帰るとアスランからメールが入っていた。時間は昼頃だから、メールアドレスは会社からになっている。



<そうなんだ!実は俺も金曜日から週末にかけて仕事入っちゃってるから、ダメかなって思ってたんだけど、行き先がオーブだったらもしかしたら街で会えるかも知れないよ。こっちは木曜日のシャトルで出発するから、オーブではすれ違いにならなければいいね>



「わぁ!すっごい偶然!アスランもオーブに行く用事あるんだ。ホント…僕は土曜日のシャトルだから、すれ違いにならなかったらまた来週も会えるねv」

 キラは嬉しがり、そしてアスランがここ二、三日バタバタしてて忙しいと、電話で言ってたことを思い出した。



「そっか…。じゃ、疲れてるんだ。ちゃんと寝させてあげなきゃね」

 明日から電話は少し控えようとキラは思った。





 土曜日。朝からカリダがバタバタしていた。

「もぅ!キラもいい加減起きてきなさいよ〜」


「判ってるよ〜〜〜」



 寝惚け眼のままカリダにせっつかれ、支度をして……午前10時に迎えに来てくれた行政府の人に「よろしくお願いします」と娘を引き渡したのはカリダだった。


「眠いぃい〜〜………」

「いい加減にしなさいって言っても、あなたが夜遅くまで遊んでたせいでしょ?」


「…その通りです………」



「ほら!大事なお仕事なんだから!寝惚けていては間違って迷惑をかけるわよ。それに…カガリ君にも会うんでしょ」

「うん……シャトルのなかで寝るから………」


 キラは半分うとうとしポケポケした状態のまま、送迎の人に連れられていった。


「も〜ぅ!いつもこうなんだからぁ…!」





 その頃オーブでは商談がほぼまとまっていた。

「では、納入数に間違いはないですね?」

「ええ。この数でいいでしょう」


 手元のデータを確認しつつ、倉庫に納入されたCP部品の総数をチェックし終わったところだ。



「それにしても、国家ともなると大変な数になりますね」

「仕方ないですな。しかし、設備費をケチって情報が流れました、では済まないのも事実ですからな」


「本当です。それでは、恒常的なメンテナンスもお任せ願えますか?むろん、5年間は無償保証させていただいておりますが…」



「そのことなのだがね。オーブはナチュラル、コーディネイターの混在する国ですからな。設置が完了次第、ナチュラルでも扱えるようにシステムを組み直さなければならんのです」


「ああ、そうですね」



「腕のいいプログラマーを呼んでおりますので、システムの組み直しの際に立ち会ってはいただけませんかな?」


「ええ喜んで。私どもも勉強させていただきます」



 オーブの獅子ウズミはコンピュータの話が盛り上がったことに非常に機嫌をよくして、行政府の一室を宿泊のため提供するよう手配した。


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言い訳:
はい。これが予告通りの展開です。キラの技術力が惜しいとかどうのとか言っていたウズミさんが動き出しました。

次回予告:アスランVSカガリのド修羅場に、な〜んも知らないキラが入ってくる!まさに嵐の予感!

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