プルシャン・ブルー

第31話



 やはり、オーブの時と同じように、眠たがるキラをせかしてシャワーに行かせ、そのままベッドに連れて行った。


「ふゎあ……眠………」

「今日着いたばっかで、色んなとこ行って疲れちゃったもんね。明日は何時のシャトル?」


「昼過ぎ…だったと思う、けど……明日確認するぅ」



 あまりの眠気にふらつくキラを危なげなくかかえ、アスランはさりげにベッドに寝かせ自分も潜りこんだ。

 強烈な眠気も相まってキラはさして驚くふうもないことをいいことに、正面に向かせて身体を密着させる。すぐにキラはすやすやと寝込んでしまった。


 自分の目の前で安心して寝込むその表情が、やたらめったらアスランの独占欲をそそる。こんな彼女を目の前にして今さらラクスとなんて、正直冗談ではなかった。





(キラ…可愛すぎる。別れるなんて、絶対にできない……父上が何と言ってきても、ちゃんと俺からラクスに断らなきゃいけないな…)



 寝込んでしまったキラの額に軽くお休みのキスを贈り、自分も同様に寝ることにした。





 そして、日曜日の朝。

 今度は少しだけ時間に余裕があるので、キラが目を覚ますまでひたすら待ってみる。しばらく待ってうっすら開きかけた瞳を確認し、嬉しくなってついまぶたにキスした。



「!!!!!」



「おはよvキラ…よく眠れた?」


「あぁぁああアスランッ!」



 キラはどぎまぎして何かを言おうとしているのだが、あいにくろれつが回っていない。

 アスランはくすりと笑って、今度は遠慮なくキラに口づけた。ちゃっかり手を動かし、キラのそれと指を絡ませるとキラが真っ赤になっているのを感じ取ることができる。


 それでもやめることなく彼女とのキスを満喫する。相変わらず一生懸命な割に満足に応えることすらできなくて、うーうーもがいているキラが愛おしくてならなかった。


 ようやくキラからこわばりが抜けてきた頃に、彼女を解放する。





「ね?ちょっと恥ずかしいかも知れないけど、楽しくて気持ちいいことだろう?」


 起き抜けに濃厚すぎるキスをされ、頭がふわふわなキラはとろ〜んとした顔をしたまま、真っ赤になりながら小さくうなづいた。



「キラのお兄さんは、キラがとても大事なんだね。でも俺は、たぶんお兄さん以上にキラが大好きだよ」


「カガリより……。だから…カガリはあんなに…僕を心配してくれてたのかなぁ?カガリよりも、もっと僕を好きな人がいたら、僕はその人のところにも行っちゃうから……?」


「きっとそうだよ。お兄さんは、自分に向けられるキラの笑顔が、半分に減っちゃうのが寂しいんじゃないかな?」



 アスランは自分のために、敢えて本当のことを言わなかった。

(言えるかこんな事!知らない男に妹を盗られるのが我慢ならないだけだなんて!)



「うんvそうだね。たった二人になってしまったきょうだいだから、よけいに相手のことが大事すぎて…そう思っちゃうんだよね」

「きっとそうだよ。ね、キラ?ホントの事言うとこのままずっとキラとこうしていたいけど、お腹空いちゃったし…何か食べなきゃね」





 キラは今さら気づいたかのようにあわてだし、またもやアスランになだめられた。


「ちゃんと食べとかないと、シャトルでお腹鳴っちゃうよ」

「うん。でも昨日ちゃんと買って帰っててよかったね」


 それはお店で夕食を食べた後、キラがどうしてもと言って買ってきたお総菜であった。



「そうだね。いつもこの家で食事をとるなんて習慣なかったから、全然気づかなかったけど……お陰でこうしてゆっくりできるもんね」


「いつも朝は食べないの?」

「たいてい外食。母が亡くなってからは、本当に誰も作らなくなっちゃってて…」


「そっか。でも、朝くらいちゃんと家で食べないとダメだよ!外食って結構栄養片寄るし……それより飽きない?」

「あはははは!キラには隠し事できないよ。当たり!何軒か回るとね…味覚えちゃって……」


「でしょ?だからね、ちょっと頑張ってトーストにコーヒーとサラダだけでもさ、結構違うもんだよ」


「気をつけてみるよ。でも一人だと味気ないから、こうやって一緒に食べるほうが良いなぁ…」

「うん、一人だとね…ちょっと寂しいよね。ごめんね、僕はいつも両親と一緒だから…アスラン違うんだって事忘れてた」



「いいよ気にしなくて。いつものことだから」





 アスランは感じざるを得ない。キラ…全っ然気づいてない!


 これだけ誘導しても……もう気持ちがいいくらいにサクッと思考回路から外れている。

 キラにはここまでオブラートに包む言い回しをしてはダメなのか?


 かといって、今の気持ちのままダイレクトにえぐい表現をするわけには行かない。それを受け入れられるほど、キラの理解が進んでいない。今の状態で言っちゃって警戒されるのも困りものだった。



(やはり…地道路線しかないのか………)



「…で、シャトル何時だっけ?」

 今は我慢!ひたすらガマンだ頑張れッ頑張るんだ俺ぇ…ッ!!!



 アスランのやせ我慢も限りが見えてきた。


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言い訳:
アスランジレンマ編ですな…スケコマシ殺しのキラちゃん。あ…アスラン返り討ち編か(笑)

次回予告:あまりの我慢のしすぎにアスランは憔悴しきっていた。しかしそこへ追い打ちをかけるかのように黒い影が差す!女帝ラクスがやってきます!

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