第30話
「……ぁ………」 視線はどうしてもキラのお腹の上で組み合わされている両手に釘付けになってしまう。 こんな座り方、今まで一度だってしたことなかった。さっきから心臓がドキドキしっぱなしで、いっこうにおさまる気配はない。 「心臓が…ドキドキしてる……?」 「……ふ…っ………」 首元で低い声をかけられ、キラは頭がクラクラしてきた。まっすぐ向かい合っていないのに、なぜこんなになるんだろう? 「わかんな……ぃ、なんか…僕……よく…わか、んない………」 「それはね、俺がキラを好きなのと同じくらい、キラが俺のことを好きだからだよ。ドキドキして…ちょっと恥ずかしいけど、気持ちいいだろ?」 「カ…カガリの、言って…たこ、と……このこと、かなぁ…?」 一生懸命なキラに、ぷっと吹き出しそうになり、アスランはあわやというところで言葉を飲み込んだ。 こんな事で精一杯のキラには、性急なことはできない。この前みたいに気絶されるだけならまだしも、免疫のないキラに嫌われてしまっては、今までの苦労と我慢が全て水泡に帰す。 このまま、ゆっくりゆっくりキラのペースに合わせて進んでいかなければならないと思った。そしていつかキラから自分を求めてくるようになった時……そのことを想像したら震えがくるほどゾクゾクしてきた。 「そうだよ。キラのお兄さんじゃ、こんな事教えてくれないだろ?」 「うん。カガリと一緒にいたって、何とも思わないし」 そのままキラのドキドキが落ちつくまで、辛抱強くアスランは待った。正直、こんな所で気絶なんて冗談じゃない!待っている間に、ふとキラの言っていたことを思い出す。 「ね、キラ。就活してるって言ってたよね?調子はどう?」 「………………。今のとこプログラミング関係で探してるんだけど、なかなか。酷いよね、女の子は要らないって言われて…顔だけ見て何が解るって言うのさ!」 「あははは。能力はあっても若いコーディネイターは特にね…」 「笑わないでよ!真剣に探してるんだから」 「キラは大丈夫じゃない!だって、無理して就職口探さなくったって、俺んとこに就職すればいいんだよ」 キラの瞳が輝いた。アスランの腕に手をかけて、ちょっと無理して振り返り、こぼれるような笑顔で、 「え?本当?僕の働き口、ちゃんとある?」 と言ってきた。 「……………………」 このとき…アスランは調子に乗っていた自分を深く後悔した。キラは…解っていない。目の前のニコニコ顔を眺めるたびに強烈に感じる。絶対……解っていない………。 (でも俺頑張る!とりあえず目標は「目指せ!キラの永久就職」だ!全てはそれからそれから。焦らない…焦るなよ、俺ェ!!!) 「あ…でもそしたら、アスランからお給金もらうことになるんだよね?迷惑かけないように頑張るから、もし誰も雇ってくれなかったらよろしくねv」 「いいよ」 (ん……?待てよ俺………そしたら、キラと一緒に通勤して、キラと一緒に働けるじゃないか!それもいいかもvんでもって、疲れて帰ったキラをベッドに寝かせ、俺は添い寝ができるな!あのあどけない無防備な寝顔を毎日眺めていられる………) 「やったぁ!ありがとうアスラン!絶対だよ」 (そしたら休日には「いつも寂しい思いさせてごめんね」とかなんとか言いながら、俺に寄り添ってきてくれるんだ…俺はキラを怖がらせないように、そっと抱きかかえ………イカンな……やっぱ、止まんないかも…俺………でもそぅいうのも…) 「いいなぁ…」 「え?」 キラのきょとんとした反応でアスランは我に返った。 (しまった!いつもの想像が行きすぎて、ついつい現実とごっちゃになってしまった。反省反省……。今はちゃんとキラが目の前に…しかも俺に抱かれているんだった…。夢にまで見たこの構図だ。コレは夢じゃない!夢じゃない夢じゃないッ!) 「えっ…あ、だって…その、そうしたらさ、俺はずっとキラの笑顔を見ていられるなって…そう、思ったから………」 あわててごまかす。ありがたいことにプログラムにはやたら鋭いのに、こういう事にだけ疎いキラのおかげで、全く問題はなさそうだった。キラは本当に何も気づくことなく、安心してTV画面に見入っていた。 「キラ……キラのこと好きだよ俺」 「ぅんv僕も。すっごい好き」 (そうだ……ゆっくり。焦らなくていい…今は、これでいいから!) キラを目の前に抱きながら、アスランは何とか自制に成功していた。今までならありえない自分を褒めてもいい、そう思った。 第31話へ→ ◇◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇◇ 言い訳:会話は…かみ合っていませんよ、全く(笑) 次回予告:この状態ですよ?アスランヘビの生殺し状態。ムラムラクラクラ〜〜〜。 |
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