プルシャン・ブルー

第3話:Side Cagalli




 そこは一見優雅な空間であった。花瓶に見事に生けられた花。どこからともなくクラシックのかかる空間。高価そうなテーブルの上には紅茶のセットが置かれている。


 う〜ん、良い香りだ。


 今日も何事もなければ、この国はじつに平和だ。そう、ウズミが思っていたところへ、場違いな乱入者が現れた。



「お父ぉ〜ぅ様〜〜〜〜〜っ!」

「カガリか」


 この国の次期代表首長になることが確定したばかりのカガリ・ユラ・アスハである。彼は怒りに身をたぎらせつつ従者の不安をはねつけた。



「お父様ッ!キラに、見合い話を持ちかけたって言うのは本当ですか!」


 ウズミは顔を喜び一杯に染め上げた。カガリが怒っているなどとは全く想像もしてなかったようだ。

「おおその話か!聞きなさいカガリ。お前がこのオーブの次期代表 首長になることが決まっただろう?となれば、いくら養子とはいってもお前の妹が一介のサラリーマンの娘じゃ格好がつかんだろう。やはりそれ相応の立場でおって欲しくてな。これは彼女にとっても願ってもない話だと思って……カガリ?」





 現オーブの代表首長は気持ちがいいほどに息子(養子)に張り飛ばされた。


「な…なにをするカガリ!ヒドイではないか父に向かって」


「ほぉ〜〜〜ぅ……それをあなたが言えた義理ですか!」

「ユウナ君はいい子だぞぅ!ま…ちょっと落ち着きがないところもあるが、所帯を持てばしっかりするだろ……」



ぱこーーーーーん!



「お父様の目はフシアナですか!ユウナは、落ち着きがないんじゃなくて、正真正銘のスケコマシですよ。キラはポケポケしたところがあるから、何にも知らずに毒牙にかかってすぐに捨てられるだけだ!」

「おいおい、そこまで言うこともー……」



「…とにかくこの縁談はなかったことに!いいですねお父様!否やは許しませんよ俺は!」


 ウズミが何か言おうとしたのだがそれをほとんど聞かずに、カガリは疾風のごとく立ち去っていった。



「カガリのヤツ…時間や場所は知っているのかね?」

「さぁ〜〜〜?」



 見合いの日は明日に迫っていた。ところがそんなことがカガリに通用するはずはない。今の勢いそのままにセイラン家へ乗り込んでいったかと思うと、

「忙しいところ済まない、カガリだ。ユウナはいるか」

ときたもんだ。


 さらにはもう、ホテルへ立ったと聞くと自分もすぐさま後を追いかけた。





 オノゴロ国際ホテル、2207号室。
 果たしてその場所にユウナ・ロマ・セイランはいた。ノックもなしに部屋に入り、カガリは愕然とする。



「あれ?何だカガリか〜。んもぅっvキラちゃんってば待ちきれなくてぇ、もうボクの元に飛び込んできてくれたのかと思って、期待してたのにぃ〜〜〜もぅ〜ヤダヤダぁ〜〜んっ」


 その瞬間、ビル全体に局地地震が発生した。



 カガリは目の前を見るだに胸焼けが押さえきれない。そう、彼の目の前には明日専用にセッティングされた、えんらい少女趣味なレースとフリルのフリフリの部屋が燦然と輝いていた。



「可愛いだろぅ?初めてでも不安にならないように、部屋から持ってこさせたんだ。ホテルのベッドじゃ味気ないからね〜」



 体中に鳥肌と青筋が一瞬にして立った。



「お前は初めて会う相手に一体ナニをしようとしてるんだっ!!!」

「ぐう゛ぉあぇっっ!」



「とにかくお前は帰れ!この話はなかったことになったんだ」

「ええ〜〜〜っ!何でぇ〜〜〜」


「この期におよんでなんでと聞くか!そんなに聞きたいなら教えてやろう俺のお父様がそうお決めになったからだ」

 本当はカガリがごり押しして決めたものの、彼は混乱を避けるためにそう言った。



「ええ〜〜〜!ボクの女の子ぉ〜〜〜」

「お前目当てのめくら女なんぞ掃いて捨てるほどいるだろうがッこの色ボケがッ!!!!!」





 その後、カガリがユウナを再起不能にして、ズルズルと引きずって行政府へ帰る姿が目撃された。



「ふぅ………これで、よし!とりあえずキラがユウナに会う危機は避けられた…と。後は…キラだが、今頃シャトルだろうな。ま…いっか。どうせここに来るんだ、ついでだから俺が直接会って事情を話せばいいか」





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言い訳:
カガリサイドです。ほとほとシリアスは向いていない秋山。早くも我慢できずに入れちゃいました。といっても、これがとても重要な伏線になってるんで、仕方ないんですけどね…。

次回予告:次回はまた「Side〜」に戻り、アスラン&キラサイド同時UPします。二人とも勘違いしたまんま、なんだかいい雰囲気。アスランはスケコマシぶりを早くも発揮。

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