プルシャン・ブルー

第29話


 ぶすぶすと、心にどこか引っかかりを残したままメールを打っていると、送信を予定している相手から電話がかかってきた。



「昼間も電話したけど、また声が聞きたくなっちゃって」

「うん…僕も、メール打ってたところ。でも、今日に限ってなかなか書けなくて…」


「何かあったの?」



「そうだ、ねぇアスラン教えてくれる?今日カガリと電話して、また大喧嘩になっちゃったんだけど、種馬って何のこと?」



「……………………は………?」



「それって普通、競走馬のお父さんのことだよね?」


 一体キラは兄から何を聞いてきたんだろう?アスランの警戒心が若干ながら増して行く。



「それに……ベッドの中でする恥ずかしい事って?………一体何するの?カガリったら、固まったまま教えてくんないだもん」


 プーーーーーーーーーーーッ!!!


 アスランは思わず吹き出した。冷静さを取り戻すのにいささかの時間を要する。

 そして、キラの兄がナチュラルであることを忘れかけていた。





「キラ。それはね、恥ずかしい事なんかじゃないんだよ」


「え?でも…カガリがそう言って、怒ってて……」



「ね、キラ。今度の土日使って、遊びに来ない?どうせ週末はこの家は俺一人だし、キラに会えないと寂しくって…」

「そしたら、教えてくれる?」


「いいよ。楽しくって気持ちいいことだから、ゆっくりとね」


「ホント?じゃ行く!どうせ周囲の目が大変で、行こうと思ってた就職セミナー行かれなくなっちゃったし……て言っても、学校あるから土曜日の朝ここを出て…プラントにはあんまり居られないけど」


「いいよそれでも。電話やメールでは顔は見えても手を繋ぐなんてできないだろ?」


「うんvそうだね!」



 キラはアッサリOKし、金曜日が終わるのを指折り数えて待った。今度は自分がアプリリウスに行くのだから、アスランと会ってるのが見つかって大騒ぎになることもないだろう、と高をくくっていた。





 土曜日早朝。

「TVの予約良し!留守時受信メール転送システム良し!バグ無し!コンピュータウィルス対策良し!自動アップデート特別システム良し!宅配便やメール便があったら受けとってもらうとして、後は…もしウィルスを送られたらソイツに僕特製CPウィルスを自動送信して、マザーを壊しとけばとりあえず安心だよね……」



 ブツブツとどうでもいいことや、とんでもないことをサラリと言いながら、キラは笑顔でヘリオポリスを出発した。


 ちなみにその後、何件かは彼女特製ウィルスに感染してしまい、コンピュータを全く使い物にならなくされ、そのうち何人かのクロッカーの自信を完膚無きまでにうち砕いたという……。



 ところがそんなことなどつゆほども知らないキラは、予定通りシャトルに乗り、予定時刻にアプリリウス市中央宇宙港に到着し、迎えに来ていたアスランを見つけて喜んでその胸に飛び込んでいった。



「キラ、みんなが見てるよ?」

「いいもん!ちょっとぐらい。僕だってアスランに会いたかったもん」



 何の気なしに口に出して言ってしまうと、とたんに恥ずかしくなり、アスランに密着している胸のあたりがなんだかじくじくうずき出した。けれどもそれがなぜなのかは、今のキラには判らなかった。



「俺も会いたかった。本当ならずっとこうしていたいけど、さすがに宇宙港のロビーじゃねぇ…」

 そう言ってアスランは苦笑した。そしてそのままいったんザラ家に帰ることにした。キラが、少し疲れてて…この日のために早起きしたのだろう…ときどき目をしばたたいていたからだ。





 ところが…ある程度予想はしていたが、ザラ家の前に車をつけるとキラがあからさまに、引いた。


「広………」

「大丈夫だよ。でもだからね、キラに会えないとよけいに寂しいんだよ…俺」


「あ、そ…っか」



「ま…いいから入って。部屋に案内するから荷物おかなくちゃね。客間でいい?それとも俺の部屋でいい?」


「う〜ん…どっちみちオーブの時と同じ事になるなら、アスランの部屋でいいよ」

 何も考えずにキラは答えた。そのことでアスランも、特別に何か思うわけではない。確かにそこにはナチュラルとコーディネイターの基本的認識の溝があった。





 その日はキラが何か作ろうかと言いだしたものの、冷蔵庫には何もないよと言われ、半信半疑で開けると本当に何もなくて、男の一人暮らしみたいなもんだからと苦笑されて妙に納得して、外で食べて帰ってきた。



「あっちこっち連れ回しちゃったから、疲れちゃった?」

「ん〜…ちょっとだけ」


「なんかTV観る?」

「いいよ」


 ソファに座ろうとしたら、アスランの真ん前に座らされ…背後から腕を回されて、キラは真っ赤になってびくんと震えた。


 背中に密着するアスランの体温が温かくて、なぜかやたらと心臓が高鳴った。


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言い訳:
誤解が解けた部分があるとすれば、お互いの本名が解ったくらいでしょうか(笑)今ラクスと思ってるんだっけ?とか考えなくて良くなって、ホッとしました(笑)

次回予告:アスラン妄想編!やめられない止まらない〜♪

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