プルシャン・ブルー

第25話



「いまさら……そんなこと…できない……。勘違いだったからって、俺は…君を忘れられないッ」


「……ふぇ………?」



 えらく間抜けなセリフを、キラは思わず吐いた。



(お…怒ってる……んじゃなかった、の?いや、フツー怒るよね?ここまで引きずり回して……)





 ところがアスランはキラの想像をはるかに超えることを提案してきた。


「えっと…キラ……だったね?君のご両親に、今から会えないかな?」

「へ…?……でも、それ…は……」



 両肩はしっかりアスランの手に掴まれ、キラには逃げることもできなかった。





「ちゃんと事情を説明して、キラのご両親に謝罪して、そして…俺は君にプロポーズする権利が欲しいんだ」


「ぁ…はぃ?」



「格好悪いけど、ホントの事言うよ。このままキラと別れるのもイヤだし、このまま俺と別れた後、君が他の男と仲良く話してるって想像するだけでも耐えられない」



「アス、ラ…ン……さん………?」


「ちゃんと、名前…呼び捨てにして呼んで」

「ア…スラン……」


「そう…キラが、キラさえ嫌じゃなかったら俺は……君の口から一生俺の名前を呼ばせたい!」


「アスラン…!」



「もう一度…キラと、ちゃんと……キス、していい?」





 キラは泣いていた。



「怒られると……思って……僕、僕が間違ってたのに……」


「キラは俺が、嫌いになった?」



 返事が、どう頑張っても口から出てこなくて、涙を流しながらキラはふるふると首を横にふった。

 そこへ間髪入れずにアスランがキラの唇を塞いだ。キラの手が宙をさまよい、程なくしてアスランの服の裾を握りしめる。すぐに呼吸の苦しくなったキラから声が漏れてきた。





「大丈夫。ゆっくり…あせって口で息しないで。俺を意識して。ちゃんと…俺を感じて!俺だけを見てキラ!!」





 長い口づけが終わっても、キラの涙は止まらなかった。


「なんで……?ど……して、止まらないよ…」



「俺…今さら君を離したくない!キラのご両親が反対するなら、このままキラを奪って帰る!」


「アスラン……」

 アスランはキラを力強く抱きしめ、キラはおずおずと腕を彼の首に絡ませた。





「母さんたちが、どう言うかは判らないけど、とりあえず…会うだけ会って、それから…」


 ヤマト家の玄関前で、キラはそう言った。玄関を開け、ただいまと言うとカリダがすぐに出迎えてきてくれた。


「あ、キラ…お帰りなさい……あら?ああ、そちらがユウナさんね?」



「キラのお母さんですね?申し訳ございません。私はアスラン・ザラといいます。プラントのアプリリウスから来ました。お宅のお嬢さんのことで、お話しさせていただきたいことがあるのですが、夜分にしかも突然で大変失礼ですが、お時間をいただけないでしょうか?」



「ザラ…さん?」

 予想通り、カリダは固まっていた。





「ごめん母さん。全部僕が悪いんだ。だから…僕も母さんやカガリに話さなくちゃいけないことがたくさんあって、それで……」


「よく解らないけど、とにかくあの人を呼んでくるわ。キラ、先に上がってもらってて」


「うん」





 そして4人はヤマト家のリビングに集まり、アスランがヤマト夫妻に事情を全て話した。



「しかし…うちのキラを取るというのは構わんが、君にはラクス嬢との話が残っているんだろう?どうするつもりですか?確かにキラと、セイランさんとの話はカガリ君によって正式に破棄になったので、こちらは即刻困るというわけではないのだが。君とラクス嬢との話ということになれば、おのずと重みも違ってくるのではないかな?」



「実際ラクス嬢とは全く連絡を取っていませんが、彼女との話は明日にでもお断りします。もともと、父同士が友人ですので、話がこじれることもないでしょう。私にはキラさえいてくれれば充分ですから」



「それなら、キラもその気であれば君とキラが付きあうことに特に反対はしないが、万が一にもキラが悲しむようなことがあれば、うむを言わさず君との話は断らせてもらうよ」


「構いません」



 やけにあっさりアスランはハルマに答えた。


 その後、少し話してアスランはホテルに帰るためヤマト家を出る。帰るとなると急に寂しくなって車のところまで、キラは見送りに出た。





「あんな事言っちゃって…」


「キラに嫌われてまで側にいるなんて困らせることはしたくない。その時は、たぶん立ち直れなくなっちゃうけど、それでもキラがそのほうが良いって言うなら俺は我慢するから…」


 キラは泣きそうな顔になり、車のドアに手をかけたかと思うと、運転席のアスランに自分から軽いキスを送った。



「頼むから泣かないで。俺…どうしていいかわかんないよ……」

「ぅん…。判ってる…判ってる、けど……」



「また、日にちを決めてこうやって会おう。そしたら、今度は間違いなく俺に飛び込んできてよ」


「うん、判った。ごめん…ごめんね、涙……止まらないよ。大丈夫だから、アス…アスランのこと、ちゃんと、僕も好き…だ、から………」



「ありがとうキラ。またメール送るし、電話だってするから、ね?」


 止めどもなく出つづけるキラの涙を名残惜しそうに気にしつつ、アスランはホテルへと帰っていった。


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言い訳:
あ”あ”〜〜〜、くっさぁ〜〜〜……。アスラン…臭ってきそう(脂汗)

次回予告:他にもたっぷり勘違い軍団が残ってる訳だしネ!手始めは、キラの学校編です!

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