プルシャン・ブルー

第24話



 キラは手元の指輪を眺めながら、この話を断るのにどうやって切り出そうかと真剣に悩んでいた。



 どう考えたって自分とは釣り合わない。


 確かに自分はカガリの妹だが、本国でそれ相応の仕事をしているわけでもないし、そう言った生活に慣れているわけでもない。

 この話はふって湧いたような幸運だったと諦めて、素直に就活に専念した方が良さそうだ。





「疲れちゃった?」

「いや、そんなことないです…」


「ああ、明日は学校あるんだよね?授業で寝てちゃ俺のせいだから、今日はもう帰ろうか」


 さりげなく肩を抱かれ、その整った顔を近づけられるもんだから、キラは言わなければと思いつつ言いそびれていた。





 あの後結局、すっごいおいしいお店でご飯をおごってもらい、例の高級車で自宅前まで送ってもらうことになってしまった。


 ふと見てみると、キラの生活範囲の住宅街にこんな高級車は不似合いだ。やっぱり、ちゃんと断らなきゃ!と強く感じる。





「自宅…ここなんだ。じゃ、今度からここまで迎えに来るね」

「あ…でもここ道狭いし……」


「大丈夫vもう覚えたから………あれ?ヤマト…?部屋借りてるの?」



 何が危ないのかよく判らないが、キラを大事そうにかかえ、表札を見てアスランは立ち止まった。





「???」

 キラは小首をかしげる。


「いや…ここ僕の自宅なんだけど…どうかした?」



「………自…宅…?」



 キラの頭で?マークがいくつも浮かぶ。

 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているキラと、目の前にある表札を何度も交互に眺めながら、アスランは何かに気づいたかの様にキラを車のそばに戻す。



 そして開口一発、謝罪した。


「ごめん……俺思い込んでて君だ!って思ってて、何も確認せずにここまで来たんだけど……おたがい、名前…言ってなかったよね?」


「名前…?あ、うん。僕もあのとき急いでて……言わなかった………え?ぇえッ?もしかして…セイランさんじゃ……な…ぃ……とか?」



「……と言うことは、君も…ラクスじゃない、んだね?」

「ラクス……?って、あのラクス・クライン?違う違う!僕そんなスゴイ人じゃないよ」





「とにかく話を整理しよう。ここじゃなんだから…車、後部シートがいいね。そこへ」


 あまりの急展開にびっくりして、なにが何だか判っていないままにキラは後部座席に座らされ、まもなくアスランが反対側のドアから中へ滑り込んできた。





「…じゃ、あのときカガリが言ってたこと………」

 ボソリと漏らすキラのつぶやきに敏感にアスランが反応する。


「カガリ…?誰?」



「僕の兄です。カガリ・ユラ・アスハと言って…」

「アスハ……オーブの代表首長の?ああだから君はオーブのホテルにいたんだ?」


「あ…でも、本当の両親を小さい頃に亡くしているんで、お互い養子なんですけどね。僕はキラ…キラ・ヤマトと言います」

「俺は、アスラン・ザラ。ラクスに会うために、あの日プラントからオーブに来てたんだ」



 キラの顔色が一瞬にして失われた。自分はなんと言うことをしてしまったのか、と言う後悔が彼女をさいなむ。





「僕……僕、も…見合いだって言われて……でもっでもっそしたら、ラクスさんに大迷惑をかけてしまったんですね…僕は……」


 キラはひたすら下を向いたまま、どうしよう、どうしようと狼狽していた。



「君の……じゃない、キラさんのせいじゃないんだ。あの日、俺だって偶然見合いで、ラクスのマネージャーから遅れるって連絡があったんだけど、あの日も次の日もラクス・クラインは来なかっただろう?だから…俺は君をラクスだと信じて疑わなかったんだよ」

「え…っ……」


「それに、確かに最初から名前を言いあうのも躊躇しちゃって…と言うより、目の前にいるんだから普通指示語で済んじゃうよねぇ」





 1時間後…事の次第の全てが判明した。つまり、こういう事だ。


 あの日曜日、アスランはラクスに、キラはユウナに会うためオノゴロ国際ホテルを訪れていた。

 会う時間はおたがい昼頃だったが、キラがすやすや寝坊している間にアスランの携帯にラクスから遅れるとメールが入った。


 2時過ぎ、キラが飛び起きあわててエレベーターに乗る。

 ところが大遅刻に焦りまくっていたキラは、22階を押したつもりが実際は23階を押してしまい、思い込んだまま2307号室に入ってしまった。


 しかも、なまじ遅れるとの一報が入っていたがために、アスランはキラをラクスと勘違い、さらにはラクスがその部屋に現れなかったため、疑うことすらなかった……と、そう言うことだったようだ。





「ごめんなさいっ!謝って済むことじゃないけど……ホント、ごめんなさい。だから、勘違いってことで、僕のことは忘れてちゃんとラクスさんと…」


「今さら…ッ、そんなことできるか!」





 怒気を含んだアスランの物言いに、キラは怯えた。

 全身から血の気が引き、鳥肌が立った。


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言い訳:
ちゃんと整理しとかないと、自分でも解らなくなっちゃいそうなので(待てコラ)

次回予告:世にも珍しい(?)スケコマシへたれなアス。さぁ!そのままヤマト家に乗り込みます!

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