第22話
「…で?どこに行けば会えるんだ?その羨ましいヤツ」 とたんに頬をつねりあげられる。となりでミリアリアが渋い顔をしていた。 「この軽いところさえなければねぇ〜〜〜」 「いいじゃない、別に。あーもう、こんなことなら最初からアンタに頼めばよかったわ」 フレイがため息をつき、トールは苦笑した。 「でも!女の子乗っけてるんだし、危ないことはイヤよ!」 「判ってるって!…とにかく、携帯で現在地表示システムは使えるんだし、見失ったとしても最終的に追いつけばいいんだろ?」 「まぁね、キラ達だってずっと移動し続ける訳じゃないからね」 「あとはキラにばれないようにすればいいんだよ。見つかったら追跡できなくなるからなぁ……」 「なんで?」 フレイが不思議がる。 「キラの使ってる電化製品は、大概システムをキラが違法カスタマイズしてるんだ。携帯電話一つあればそこからウィルスだって送れるって訳。…判るだろ?」 そう、フレイやミリアリアの端末が一瞬にして使い物にならなくなる可能性だってあるのだ。その事に思い至って彼女たちは一瞬震えた。 しかし…その事実と追跡任務とどちらが重いかというと、彼女たちにとってはキラを救うことの方がはるかに重要であったらしい。 「でも!こんな程度でくじけるわけには行かないわ!私たちはキラの保護者なのよ!ちゃんとキラを救えなくてどうするの!」 「…というわけでトール……今日一日お願いねv」 「オッケーイ!大体あのキラに彼氏……ってぇのがムチャクチャ気になるんだよな〜俺もv」 彼らは一致団結して、静かに街へ消えていった。 数時間後。街の中心部の店の中にアスランとキラはいた。まぁ、実際はアスランがキラを連れて入った、と言う方が正しいのだが。 「自分のサイズは?測ったことない?」 キラはあわてて首を振る。そんな…測るどころかこんな店には絶対行かない。 大体いつもは滅多に行かない場所ばかりを通るものだから、キラにはもの珍しくて、どうしてもショウウィンドウに視線がチラチラいってしまう。そんなキラをアスランが見逃すはずはなかった。 「じゃ、ついでに測っていこうね。どれがいい?」 どれがいい?……って、こういうものは普通、なんの飾りもついていないもので測ってから…っていうのが常識なんじゃないの? いやしかし……しかしその前に! (ユウナさん…ゼロが……ゼロが多すぎるよコレ〜〜〜〜〜〜〜) ここまで来ればいっそ気持ちがいいくらいに、高価な値段の付いたそれに、キラは完全に面食らっていた。 「あ、あの僕……こんな、良いものじゃなくって…も………」 「イヤこれは普段ちょこちょこ出かける時用だから、あんまり深く考えずに決めていいよ」 「……………え”……!」 驚愕して…固まり…そしてギギギ……と音がするほどぎくしゃくとディスプレイに視線を戻してキラは硬直した。 値段………間違ってない? ねぇ、これ指摘すべき? それとも「合って」んの? しばらく固まった笑顔のままうなり、そしてその中でも一番控えめな値段のそれを指さした。 「それにする?となりのも可愛いよ?」 となりの……その名をダイアモンドとかいう………。数字を見てキラが真っ先に外したそれだ。 「こちらもお出ししておきましょうね」 そう言って支配人は両方を出してきた。 あ〜そーいう役職とか、まっさらの手袋とか、二重三重にかけられたカギ付きディスプレイとかが、ことごとくキラの涙を誘う。 そして、キラは今までにない経験をするハメになった。 キラの細い指に、その驚愕の値段の指輪ははめられていく。それでもキラは女の子だったようで、自らの右の指にはまったルビーを見てほわっと微笑んだ。 次に例のダイアモンドがはめられてゆく。しかし、そのリングはキラにはいささかサイズが大きかったようだ。 「あ…こっちはちょっと大きかったね。ルビーのほうがピッタリだったから、こっちにしようか」 支配人は笑顔でキラの右手の指輪を交換し、「とても似合っていますよ」と言った。 「よかった!気に入ったものが見つかってvじゃ…行こうか」 そう言ってアスランはすっと席を立ち、支配人は全く気にすることなく「お気をつけて」と、二人を送り出した。 いまだにボーっとしていたキラだったが、アスランが「ご飯食べに行こっか?」と誘い、車に乗ろうとしたところで覚醒しあわてだした。 「あぁああああのっ……指輪…」 「え?」 「あ、いや違う…その、お代金……やっ……お代金もだけど…その……ッ」 アスランが突然吹き出した。 ちょっと笑いが止まりそうにない。なんて可愛いんだろう。ちゃんとお金を気にするあたり、経済観念もあるなぁ…なんて的はずれな感想を受けていた。 「大丈夫!心配しなくてもいいんだよ、顔パスだから俺は。それに今回はあまり高い買い物していないしvもし無くしちゃったとしても後悔しないで済むなって思って…」 「後悔って…こんな、高価なもの……。とんでもないです」 「気に入ってくれた?」 「そ…ッそりゃぁもちろん…」 キラはとたんに不安になる。 金銭感覚がまるで違う。初めからこんなことでは自分に返せるものはなくなってしまうではないか。 そう伝えるとアスランはアッサリと「君の精一杯の気持ちが、俺には嬉しいからv」と答えた。 第23話へ→ ◇◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇prussianblue◇◇ 言い訳:プルシャン・ブルーのアスランは基本的にスケコマシ。こんな小さな勘違いでも、澱となって降り積もってゆくと……(笑)今回、なかなか出せないサイ&トールにご登場いただきました。 次回予告:あのお方を忘れてはいけません!カガリが…風のようにやってきて嵐のように去ってゆきます。次回、のぞき連中、その後。 |
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