プルシャン・ブルー

第2話:Side Kira

 忙しい時に忙しい話が舞い込むなんて、世の常なのかも知れない。真っ昼間っから就職活動関係のパンフとにらめっこしていたら、ソレはいきなりやってきた。
 
 
「ナニ……コレ…」
「見て判らんか?キラに見合い話だ」
 
 
「さよならっ!寝言は寝て言ってよね!僕は今忙しいの!見てれば判るでしょ?」
「悪い話じゃないのよ…」
 
「………。そりゃそうだよ。見合いとか結婚なんて、フツーはおめでたい話だよね?あのね…僕は就活の途中!忙しいの!そんなのんびりした話はカガリにでもしなよ」
 
 
「そのカガリ君がね、オーブの跡継ぎに正式に指名されることが決まったって。お互い養子だっていってもキラもきょうだいでしょ?どうしてもキラにもいい話…って、強引に決められちゃって……」
 
 
 
 つまりアレだ。僕とカガリの本当の両親の死で僕たちはおたがい別々の家に引き取られた。でも戸籍上はきょうだいだから、カガリはウズミさんの跡取り、僕はフツーのOLじゃダメだって事なんだよね?
 
 そんでもって僕も政治家あたりのいいとこのボンボンと結婚でもして箔をつけろと……つまるとこそーいうことだよね?
 
 んでもってフッツ〜のサラリーマン家庭の両親には断れない話だった…と。
 
 
 
「会うだけ会って、キラが嫌ならその人は断ればいいんだ」
 
 
 でも、この話断ったとしても結局似たようなのが次々と来るんだろ?
 
 
 
「相手の方は、カガリ君の幼馴染みだという話よ。ユウナ・ロマ・セイランさんとおっしゃって……」
 
「オーブの5大首長のセイラン家の息子さんだ」
 父ハルマがそう言うもののどこか気乗りのしない感じだった。断り切れなくて済まない、と顔に書いてある。
 
 
 
「いいよ。とにかく会ってみて、やな人だったら速攻で帰るから」
 キラは面倒くさげに吐き捨てる。そして…決定的なことが告げられた。
 
「日にちは今度の日曜日。私は仕事で行かれないがカリダがついていくからね」
「……といっても、私もオーブではキラと別行動になると思うから……」
 
「何でッ!」
 
 
「ウズミさんとお話ししなければならないことがあるの。あの人も忙しくて、日曜は昼過ぎしか時間が取れないからって。だから、部屋は取ってあるけど、セイランさんとお会いするのはキラ一人だけになるわ」
 
 
「ええ〜〜〜〜〜っ!」
 
 
 
 
 
 夕方、僕は慌てて学校に行った。
 
 まっすぐ行く先は職員室。予約したシャトルの関係でヘリオポリスに帰れるのは一週間後くらいになりそうだ。もちろん見合いは断るつもりだけど、そんなつまんないことでこの大事な活動期間を削らなきゃならない。
 
 
 学校の先生に事情を話して、浮かない顔で家に帰る。もし決まっちゃったりしたらどうしよう?この家にはもう帰れなくなるのかな?なんて、不安がよぎった。
 
 
 
 次の日。嫌なことが待っていた。
 母さんに連れられ、僕は市内でさんざん着せ替え人形だ。ねぇ母さん、どっちみち断るんだから何でもいいじゃん!今持ってるリクルートじゃダメなの?
 
 
 僕の願いはいっこうに聞いてもらえそうになかった。まぁね、うちだって対面とか外聞とかいうものがあるんだよね。僕は何度もため息をついた。あ〜ヤダなヤダな〜〜。友達とだって遊べないし!
 
 
 
 金曜日。
 早めの夕食をとって僕と母さんは宇宙港へ向かった。ロビーまで父さんが送ってくれたけど、そんな顔しなくてもどーせサッサと断って帰ってくるよ僕は。今時シャトルのトラブルなんかも滅多にないんだしさ。
 
 
 
 土曜日。
 オーブに、オノゴロ国際空港に着いた時間も遅かったことは遅かった。深夜のタクシー料金を払ってやっとこさホテルに着いたら僕も母さんも疲れ切ってて、そのまま寝ちゃったんだよね。
 
 
 
 
 
 次の日の朝、母さんは普通に起きてきてたけど僕はまだ眠かった。10時過ぎ、母さんがウズミさんと会うために先に出かける。
 
 母さんの
 
「ちゃんと行きなさいよ」
 
という言葉を最後に聞いて、1時間くらいならいいよね、と僕は幸せな二度寝に入った。
 
 
 
 
 
 気がついたら2時過ぎてた。行きたいわけではないが完全に遅刻だ!僕は慌てて持ってきた服に着替え、焦りまくりながら部屋を後にした。
 
 え…っと、どこだったかな?あ、2207号室だ。
 
 
 
 エレベーターのボタンをがしゃがしゃ押して、急いで部屋へ向かう。怒られるのを覚悟でノックしたら中から返事があったので、そおっと開けた。
 あ…やっぱいたよ。でも、遅れちゃったのは僕の方だし、ここは正直に謝っとくに限るよね!
 
 
「お…遅れて、ごめん…なさい……」
 
 
 
 息を切らしながら矢継ぎ早にいうと、相手の人はきょとんとしてた。あ…あれ?違った?僕なんかヘンなこと言っちゃった?
 
「ご…ごめん、なさいっ。忘れてた訳じゃないんだけど……寝坊…しちゃって……」
 
 
 焦りまくりながら謝っていたらユウナさんはぷっと吹き出して、そして僕の方へ歩いてきた。
 
 
 あ…髪の毛、藍色なんだ…。
 

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言い訳:
キラサイドです。こちらももう、バレバレですよね。しかし…ホント…シリアスな書き出しになってしまって(涙)

次回予告:でもこのままじゃ欲求不満がたまるので、次はカガリサイドでコメディ路線です。と言ってもかな〜り先の話の伏線になっているので、出さざるを得ないんですが、やっと予告通り元祖変態ユウナがでてきます(誰も見たくないって…)。

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