プルシャン・ブルー

第17話


Side Helliopolice

「キラぁ!どうしたの?ここんとこ1週間くらい来なかったじゃない」


 久しぶりに学校に行くと、友達からの質問攻めにあった。ある程度予測はしてはいたが、自分はこうまで心配されていたかと思うと、キラは嬉しくなる。

「うん、ちょっと用事でオーブに行ってた」


「本土に?なんかあったの?」

「うん。カガリが…僕の本当の兄が、次の代表首長に決まったって言うから…その、お祝いにね」



 まさか見合いとは言えなかった。

 目の前にはちゃっかりフレイがいる。彼女のこのテの話をしたら、はっきり言って長い!しかもこれから毎日「フレイの男講座」が始まることは間違いないのだ。


 ユウナさんとはこれからどうなるかまだ決めてないし、セイラン家の息子さんって言っちゃうのもねぇ…自慢してるみたいで気が引ける。





「へぇ、カガリ君が……。すごいじゃないキラ!キラ、本当はお姫様だったんだ?」


 ミリアリアのイタズラ小僧のような視線に思わず苦笑してしまう。



「違うよ!カガリが養子にもらわれていった先が、たまたまウズミさんで…彼がオーブの代表首長になったからだよ。僕にはあんまり関係ない話だからね」



キラは苦笑いでごまかした。





Side Lacus

 無事、チャリティーコンサートも終了し、他の歌手たちと一緒にラクスはプラントへ帰るシャトルに乗っていた。そうでもないと行く先々で大騒ぎになってしまう。



「ラクス様。一応アスラン様には謝罪のメールをお送りしておきましたが…」


「ツアー中だったとはいえ、急に行かれなくなったのはこちらのほうなのです。仕方ありませんけど、おたがい忙しい身なのですから、それはお解りいただけると思いますわ」



 付き人が申し訳なさそうに謝る。それをラクスは軽く制した。

「わたくしもプラントへ戻ってもすぐには動けませんので、このお話はまた都合次第になりますわね。気にしなくても良いのですよ」



 本物のピンクの歌姫は、剛胆にものほほんと構えていた。





Side Athrun


 さすがに様子が気になったのだろう。今夜、久しぶりに父が自宅に帰ってきた。

 と言っても、深夜0時半過ぎ。これでも早い方だ。なんだかそうなる予感がして、女の子と遅くまで遊ばずに帰ってきて良かった、とアスランは思った。



 1週間ぶりに女の子と遊んで感じたことは、ラクスとのメールのやりとりのほうがはるかにドキドキできると言うこと。

 一緒に夕食を食べても、彼女たちのほほえみを見ても、正直色あせて見えていた。むろん、ヤる気なんかちっとも起きない。


 と言うわけで、適当な理由を見つけて、早々に切り上げて自宅に戻っていたのだった。帰ってみると、普段とても無機質だった部屋のパソコンがなんだかとても暖かく見える。



「ラクス……、君すごいよ」


 OSを立ち上げて、メールをチェックし、仕事関係のメールしか来ていないのを確認すると、つまらなそうにため息をついて、とりあえず電源を切った。内容は覚えたから、返信は明日の午前中にでも会社から送ればいい。


 部屋から出ると父とばったりぶつかりそうになって、アスランは冷や汗をかいた。



「ああ、帰っていたのか」

 父はさして気にすることもなく、用件だけを手短に聞いてゆく。



「ええ、今日の夕方。父上、俺はラクスともう少し付きあってみることにしましたから」


「気に入ったか?」



 そんなこと言って。ほとんど興味もないくせに!


「考えても良いと思っています。そういうことですので、これから随時有休を取りますので」

「それなら構わん。日付が決まれば私にメールを寄こせ。こちらで処理する」



「判りました」


「今日はお前も早く寝ろ。1週間分たまっている」





 結局仕事の話をして、父はさっさとシャワーを浴び、まるで機械のように寝室に消えていった。


 ラクス…こんな時君がとても恋しくなるよ。アスランは再び部屋に戻り、寝るだけのベッドに無造作に転がった。

 なんの面白味もない天井を眺めながら、思い浮かぶのはラクスの笑顔だけ。



 こんな時、彼女なら玄関まで迎えに来てくれるだろうか?

 温かくておいしい夕食を作って…遅くなってるというのにそれでも「一緒に食べよう」って言ってくれるだろうか?


 そして、普段見もしなかったドラマをソファに座って二人で見て、俺は彼女に軽く口づける。するとラクスは驚いたように顔を真っ赤に染めて……俺を見上げてくるんだろうな。



 俺はふと時計を気にして寝室に誘い……マズイな………俺、止まんないかも…。

 ああでも、彼女は慣れてないんだ。優しく、ゆっくりしてあげなくっちゃ………!



 アスラン・ザラは、ベッドに転がったままあらぬ妄想に浸り、そしていつしか寝込んでいた。


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言い訳:
うちのアスランはへたれ「変態」ですから〜。…と、今回、ラスト向けてのラクスフラグです。←意味深……(汗)

次回予告:キラの何気ないセリフに、カガリは猛烈なショックを受けます。そんなことなどつゆほども知らないキラと、デートの約束をしたアスランはアズー並みに狂喜乱舞するのであった。

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