プルシャン・ブルー

第16話


Side Kira&Cagalli


 無事にシャトルにも乗れた。

 道中も安全で快適な旅だった。

 チケットの関係で、シャトルのなかで別れ、キラは無事にヘリオポリスの自宅に帰ることができた。



「ただいまぁ」


「あ、キラお帰りなさい。…ぁら?」

「この帽子?可愛いでしょ?帰りにね、ユウナさんに買ってもらっちゃったv」


「そうなの。あ、そうそうキラ、カガリ君にちゃんと連絡しておきなさいよ。彼、とっても心配してくれているのよ」



「いいんだよ!カガリは。ヘンなこと言って邪魔ばっかりするんだから!だいたい僕が女の子だからって、心配しすぎなんだよ。ユウナさん、とっても優しかったし、危ないことなんてちっともなかったもん」


 帰るなりキラは母に煙たいことを言われ、げんなりとなった。それでも気を取り直し、カガリの携帯電話にかける。





「あ!カガリ?僕!ちゃんと家に帰ったから……」


 そのカガリは怒っていると思いきや、キラに食ってかかるように問い返した。



「キラっ!お前、ユウナに会ったって言ってたよな?それ、いつの話だ?何時頃だった?」


 なんの話だかキラはかいもく見当がつかなかった。一体カガリは何が言いたいのだろう?



「何言ってんの?日曜だよ、日曜の、えーと…2時過ぎ」


「え?2時過ぎ?」



 カガリは素っ頓狂な声をあげる。


 確かあの日は…2時半を過ぎてもキラが来ないから、ユウナの悪趣味に染まったあの部屋の鍵を、フロントに返したはず……。


 キラがあの部屋で、2時過ぎにユウナに会ったとは考えがたかった。

 それに確か確か2時頃と言えば、コテンパンにのしたユウナを引きずって行政府に放置し、それからまたホテルの部屋で、キラをひたすら待っていた……。





「うん。実はあの日さ、僕…寝坊しちゃってて遅れちゃったんだけどね。ユウナさん、イヤな顔一つせずに話してくれて……………」


 キラが嬉しそうに話している。その分だけカガリには不審感がつのってゆく。

 ……オカシイ………まるっきり辻褄が合わない…………。



「キラ…会ったのは本当に、ユウナだったのか?」

「カガリ?まだ疑ってんの?僕と彼が仲良くしてるからって、妬きすぎだよぉ」

 キラはカガリの不安に気づかない。



「もしやとは思うが、人違い……?」


「そんなことないよ!2207号室で、12時には遅れちゃったけど…ちゃんと会ったよ。そしたらね、ユウナさんも初めはこの話、乗り気じゃなかったんだって!僕もそうだったから、お互いびっくりしちゃって!」



「………。ちゃんと見合いだった、んだよな?」


「うん。ちゃんと見合いしてきたよ!すっぽかしたりなんかしてないよ」



 カガリは、ウ〜〜〜〜〜ン…と考え込んで、それから近くにいた人に、会議の時間をせっつかれ、しぶしぶ電話を切った。





「カガリ君と仲直りできた?」


「うーん……でもカガリ、もう怒ってなかったからいいんじゃない?何かあったらまた電話してくるよ!カガリのことだし」


 キラはさして気にすることなく、今の話をすっかり忘れた。





Side Athrun

 その頃。アプリリウス市。


 ずっとマナーモードにしていた携帯電話を、しばらくぶりに開くと、メールが数件たまっていた。

 そのほとんどは遊び相手の女の子たちからだ。そろそろ来るな、とは思っていたがせっかちなことだよ。


 自宅に帰るタクシーのなかで、不要なメールを、中身も見ずに容赦なく削除しながらチェックしていくと、ラクス・クラインからのメールが入っていた。



「今日はごめんなさい。またお会いできる日を楽しみにしております。ラクス・クライン」



 彼女の花が咲くような笑顔を思い出し、アスランは一瞬頬を染め、さっさと残りのメールをチェックする。そうして交換したばかりのラクスのメアドを開き、メールを送信した。



「昨日はありがとう。とても楽しかったよ。次はヘリオポリスで会おうよ。いつがいいかな?もちろん俺はできるだけ早く会いたいけど」





Side Kira

 ヘリオポリス。キラの自宅。


 夕食時、キラの携帯にメール着信があった。早速開き、ほわりとほほえむキラ。



「ユウナさんからだ!また会いたいって」

「キラ、もう一回会ってみるかい?」


 父ハルマが聞くと、キラはもちろんと答えた。



「じゃぁ、いつでもいいから、次からはキラだけでいくといいよ」

「父さん…?」


「親がついていっても、気を使うだけだろう?」


「うん。ありがと」





Side Cagalli

 ヤマト家で和気あいあいと団らんが続いているころ、オーブ行政府ではカガリがいつも以上に頭を悩ませていた。



「ユウナは俺がボコにして行政府に帰ったし、あの部屋は2時半には閉めた………キラ、一体誰と会ったんだ?」


 考えながらカガリはだんだん真っ青になっていった。

 確かにユウナには会わなかった。それだけは幸せと言ってもいい。


 しかし…ということは、キラはユウナと思い込んでいる「他の誰か」に会ったってことだよな?



「キラぁああっ!もしヘンなヤツだったら、兄ちゃん絶ッ対許さないからなっ!」


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言い訳:
ラクスのメールを見て、返信機能を使わなかったところがキーポイントです。かみ合うはずの歯車がどんどんずれていきます。

次回予告:本物のラクスが少しだけ登場。そしてキラが学校で友人と話している頃、アプリリウスでは、アスランが一人欲情にまみれた妄想に悶々となっていた(ぇ)

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