プルシャン・ブルー

第14話


Side Cagalli



「おかけになった電話は、相手様のご都合によりおつなぎできません」

 カガリはチッと舌打ちする。ならばと、自分の携帯電話に持ちかえて「今どこサービス」(現在地表示システム)を使う。

 …ところが、


−ご利用になりました相手様は、都合により表示できません。ご了承下さい−



「キラのヤツぅううううッ!!!」


 カガリはこぶしを振り上げて怒りをあらわにした。さすがにそばでウズミが(復活した)冷や汗を流す。



「どっどうしたね?」


「俺の電話番号を迷惑電話に設定してるんですよ!もうダメだ!打つ手はないのかッ」



「逆探知はできないのか?」

 ところが腐っててもウズミは技術系の人間だ。



「キラの携帯電話のシステムは、キラが勝手に改造してるんですよ!アイツのプログラムは完璧だから、もう世界中どこから探したって見つかるわけがない!ガッデム!」


「そんな大仰な…」



「そう思いますか?キラの趣味はハッキング、そして特技はクロッキング!プログラムの違法改造なんて朝飯前なんですよ!ヤツには!あ〜だから心配だったんだぁ〜〜〜」



「ぬぅぅ〜!素晴らしい能力ではないか。それがあればオーブの全てのサポートシステムも……」





 夢の世界にトリップしかけた技術屋オヤジ(ウズミ)を、息子はコテンパンに叩きのめしたのだった。



「バカほっといて、一応試すだけ試してみるか………」

 バカ親父を冷酷に見下し、カガリはやけに冷静になって行政府をあとにした。





Side Athrun&Kira


 そのころ。

 シングルのベッドの前でキラがたじろいでいた。


「一緒はやっぱり怖い?」



 怖いわけじゃないけど、不安でたまらない、そうキラが答えると、アスランはあることに気づいて、否定した。


「ヘンなことしないよ」


「……でも………」



「君が好きだから、とても大事だから、俺は君の気持ちを待ってるんだ。この先俺を好きだと言ってくれて、本当に一緒になってくれたら、その時にそういうコトしよう」


「……………」



「今日会ったばかりで、さっきキスしたばかりで、一生のことなんてまだ決められないよね?だから、俺は君の口から好きだって言ってくれるときを、ずっと待つことにしたから」


 ムリヤリなんて…意味無いだろ?と、アスランはつけ加えた。



「ね…っ寝るだけ……ですよね?」

「うん。寝るだけ。明日早いしね」



 シングルのベッドに二人。キラはあまりの恥ずかしさに、何度も端へ寄ろうとして、失敗して落ちかけた。


 その度にアスランが「ホラ、ちゃんと入らないと落ちちゃうし、カゼ引いちゃうよ」と言ってキラを引き上げる。

 でもそうすると、身体が密着するわけで……相手の息づかいとかちょっとした動きとか、体温とかが気になるわけで………。キラはガチガチに固まっていた。





 一方、なんとアスランは少し後悔していた。

 部屋に着替えを持ってきていないキラはバスローブ姿。自分も面倒くさくて同じ格好。……当然、彼女はブラなんかつけていないわけで……ということは…。



(あ〜この下はやっぱ下着一枚なんだろうな〜〜〜)



 事実、バスローブのすき間から、胸のふくらみがチラチラ見えていた。想像してた通り、お世辞にも大きいとは言えない。ちょこんとした彼女の可愛らしいふくらみに、アスランの目は釘付けになった。





「あのっ……おやすみ、なさい……」


 ところがそんな不謹慎な欲情など知るよしもないキラからのセリフに、アスランは目をしばたたいた。

 そして、なにも知らず、目の前で少し不安げに微笑んでいる、愛らしい「ラクス」を、深夜の繁華街の女と同じに扱ってはならないことを、彼は強く自覚したのだった。



「大丈夫。手…握っててあげるから」


 キラの細い手に指を絡ませると、彼女は安堵したように笑い返して、ゆっくりと眠りについてゆく。


 その姿をひどく愛おしく感じながら、アスランもまた眠りについた。


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言い訳:
アスランすでにギリギリざんす〜〜(笑)

次回予告:すれ違う視線……この小さなすれ違いが、後々大きな問題になっていきます。

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