プルシャン・ブルー

 第1話:Side Athrun


 
 突然の〜なんて、俺にはありきたりすぎて正直慣れていた。今夜も遅くになって「突然」父が帰ってきたかと思うと、これまた「突然」目の前に書類を投げてきた。
 
 封筒にすら入っていない、プリントアウトされた用紙がお体裁げにクリップで留めてあるだけだ。
 
 
 
「次の日曜までには目を通しておけ」
 
 そう言って父はシャワールームに消えた。後は俺の一人だけ。こんな時に相談できる母はもういない。
 
 
 
「なんなんだ……全くッ!」
 
 
 わき上がる怒りを抑えきれないが、とりあえず書類を手に取る。そうしないと、いつまでもその書類はテーブルに上に置かれたままだからだ。
 
 
 
 どうせ父も明日の朝早くには会社へ出かけてしまう。そうなればこのだだっ広い家は俺の一人暮らしのようなものだ。
 
 
 
「…………………」
 
 
 何の気なしに書類に目を通し、俺は固まった。
 
 
 
(………は?見合い……?)
 
 
 
 確かに俺は大学をスキップで卒業し、卒業後すぐに社長である父に言われて会社内で働きだした。
 
 うちは総合電器メーカーで、一般家庭の電灯から軍需物資まで製造している。幅の広い交流は必要だし、俺だって特に異論はない。
 
 
 
 しかし…しかしだ。
 
 
 写真もついていないおざなりの釣書書、見合いの日時や場所もすでに設定済、しかも相手はあのラクス・クライン。はっきり言って父上の好きそうな話だ。
 
 
 結婚なんて恋愛じゃない、彼女はていのいい広告塔という訳だ。
 
 
 
 じっさい俺は別段結婚に焦る歳じゃない。ぶっちゃけまだまだ遊んでいたい。こんな父上の持ってきた話の子なんて、どうせとんでもないワガママか、つまらない女に決まってる。
 
 
 ……とはいえ、行かないわけにもいかんだろう。
 
 手元の携帯電話をチェックすると遊び相手の女から数件メールが入っていた。こんな若さでこんな豪勢なことできるのも、俺がこの会社を継ぐことが確定的だからだ。
 
 
 いくら顔が良くても金のない男なんてそうそう続くかよ!
 
 
 
 
 
 翌朝。
 父はとうにでかけている。俺はゆっくり朝食を取りながら、昨日の女と電話していた。
 
 
「ん〜だからさぁ、明日っから出かけてていないからー……」
 
 相手のつまらなそうな声が今の俺にはどうでも良かった。あ〜つまんないな。もう振っちゃおうかな。
 
「昼間は仕事だから、今夜なら会えるよ。どっか食べに行こう。8時にいつものとこで待ってて」
 
 あ〜何か嬉しそうだな。
 でも俺今夜はヤれないよ。だってここはプラント。俺は明日、定期便のシャトルに乗って地球の…どこだっけ?……オーブとかいう国に行かなきゃならないから。
 
 疲れることはしたくないよ。
 
 
 
 電話を切って、女の子全員にメールを送る。
 
「俺仕事で一週間くらいいないから」
 
と。
 
 
 
 見合いだなんて面倒くさい。断ってしまえば何の変わりもないのだ。帰ってから女の子と一緒に遊べる。飽きたら新しい子探せばいいさ。俺は本気でそう思っていた。
 
 
 
 午後7時。珍しく定時に父に会社を追い出される。いわく、 
「帰って荷物の準備でもしてろ」
 
 だってさ。
 
 
 
 父はこの土日も政府関係者との面会があって、プラントを離れられない。いくら忙しいっていったって、どこの世界に見合いは当人だけで行ってこい、なんて言う親がいるか!
 
 
 俺はため息をつきながら誰もいない家に帰った。
 
 相手はあのラクス・クライン。世界の歌姫。
 でもって父の古い友人の一人娘。
 
 行かなきゃダメなんだろうなー。
 何で地球なのかというと、彼女はチャリティーコンサートの真っ最中なのだそうだ。どうせそんな女と一緒になったって、今のこの生活が変わる訳じゃない。
 
 彼女だって忙しいんだ。家になんてほとんど帰ってこないに違いない。
 
 
 
 最小限の荷物をまとめて、シャトルのチケットを予約して、一応見合い場所のホテルを確認して、俺は何だかむしゃくしゃするから電話の彼女と遊んだ。
 
 
 
 
 
 そして日曜日。オノゴロ国際ホテル2307号室。
 
 予定より早めについて待っていると、携帯電話にメールが入ってきた。相手はラクス・クラインのマネージャー。
 
「打ち合わせが長引いているので少し遅れます」
 
 
 ホラ見たことか!芸能人なんてこんなもんだよ…。そう毒づいてベッドに転がってヒマを持て余していたら、扉にノックがあった。
 
 返事をすると彼女は息を切らしながら
 
「お…遅れて、ごめん…なさい……」
 
と謝ってきた。
 
 
 
 俺は彼女を見たとたん、時間が止まったかと思った。
 
 紫色の瞳が不安そうに俺を見ている。正直……可愛い。父がラクスの顔を見たことがあるかどうかは知らないが……ツボだった。固まったまま動けずにいると彼女がなおも謝ってきた。
 
 
 何だろう?胸にちくりと、差し込むような感覚が走った。
 
 
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言い訳:
はい、第1話ですがもう誰と出会ったかはバレバレですね(笑)なんか、書いていくうちに中身がタイトルイメージに引きずられてしまって(冷汗)えんらいシリアスチックに……。第1話からアスラン毒白してるし…もぉいいや、シリアス70%コメディ30%で←あきらめ。

次回予告:毒白に吊られるようにキラも毒白……。次回、キラサイドです。カガリとウズミの親子漫才は第3話くらいから。も少しシリアスにお付き合い下さいませ(反省)

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