桜国ものがたり〜君と僕、あの日の約束〜

 

第6話

 








































































 父ウズミの心配性は以前からのことだが、今キラの目の前にいるカガリは………なんと大胆なことか!

 キラの不安をよそに当のカガリは割と、あっけらかんとしていた。



「どっちみち入れ替わらなきゃなんないにしてもさ、俺が宮中に上がれば、今よりずっと会いやすくなるんだぞ?」


「あ…」

「キラも昼間は仕事で宮中だろ?後宮とは言っても、完全に男子禁制じゃない。俺とはきょうだいってことで、結構通してもらえるんだ。だってもう母上同士の確執を気にすること無いんだ。忍び足で来なくてもいい。考えようによってはラッキーじゃないか」

 自宅よりも、ずいぶん話はしやすいという利点を、カガリははつらつとして語る。


「ん〜…でも、もし誰かにばれたら……?」

「ばれないようにするにも色々方法はあるんだよ。だいたい、お互いの噂が聞こえる環境の方が色々と都合がいいし、ちょくちょく会えるってことはさ、入れ替わるための下準備もしやすいじゃないか?」


 カガリはそう言いながら、本格的に入れ替わるための周到な下準備について、自分の案をキラにあれこれ話し始めた。





「カガリ〜すごいね。もうそんなとこまで考えてるんだぁ」

「キラお前な。もうちょっと急げよ。あんまり残されてる時間もないんだからさ」


「え?何で?」

「キラはそんなことにはならないだろうけど、父上を見たら判るだろ?俺はもう数年したら男であることを隠せなくなるんだ」


「お髭?生えてくるの?カガリにも?」



 父ウズミの豊かなひげがキラの目に浮かぶ。

 確かに今は良い。目の前のカガリはどこからどう見ても可愛い女の子だ。


 しかし、そのうち父のように立派なひげが生えてきだしたら……。そこまで言われてキラはさすがに、我に返った。

 これは、自分だけの問題ではないんだ!





「そ…っか。やっぱ僕たち近いうちに、ちゃんと入れ替わらなきゃなんないんだね」

「成長するにつれ顔の輪郭とかが違ってきだしたら、もう誤魔化せないんだ。今のうちからちゃんと下準備しとかないと!俺もお前もやばいぞ」


「……と言うことは、僕……やっぱカガリみたいに女の子の服着て…そういうふうに暮らすんだ?」

「何だ?キラ…キラは今のままが良いのか?」


 キラはあわててかぶりを振る。

「そう言うことじゃなくって…その……僕もそんな格好とか、するのかな………って、思って」

「羽織ってみるか?見てるだけでは判んないこととかって、あるぞ?」


「ううん。やめとく。だって、どっちみちそう言う格好することになるんだし…重そうだから、その時でいいや」


 そうは言っても、未だキラはかなり及び腰だった。

 今の生活にかなり未練がある。

 友人との交流も楽しい。

 それに……カガリには言わなかったが、目的もある。



 でも……カガリの言うとおり、自分たちにはそう時間は残されてないのも確かだった。

 カガリは男として…キラは女として。ちゃんと生きなおした方が、お互いに幸せになれるのだろう。それは、キラにも充分理解できているつもりだった。


 でも…目の前の楽しさに、どうしても吊られてしまって………。でも、本当…このまま続けて行かれるはずはない。

 そんなことは、判っているつもりだった。





「とにかく!そう言うことだから、俺は宮廷に上がる。そうすればお前とも気軽に会えるし」


 行動派のカガリと喋っていると、そう難しいことのようにも思えなくなってきた。なんだか、勇気さえ湧いてくる。


「う…ん……」

「それに、入れ替わったときにさ、いきなりやること無いと人生きついだろ?でも、これ以上親の干渉は欲しくない…となればやっぱ仕事だろ?宮中に行けば会えることも多いし、適度に仕事もある。お互いにベストじゃないか」


 キラにとって、カガリの話は全くその通りに思えた。彼に言われる度に、なんだかその気になってきた。



「うん。やってみる。カガリの言うとおり…僕もがんばってみる。だって、僕だけの問題じゃないんだもんね」

「キラだってずっといつまでも、そのままではいられるはずないだろ?」

「さすがに…このまま一生は、ね」


「だからだろ?今二人でできることを、できるだけ頑張ってみるだけさ」

「うん!そうだね」


 ふっと気が軽くなった。

 ここに来て、本当に良かったとキラは思った。会って…話をしてみたら確かに自分とカガリとではかなり性格が違うと思う。


 でも今自分は中納言として出仕したり、友人たちとのつきあいであんまりここに帰ってこられない。カガリが尚侍として宮中にいてさえくれれば、どんな打合せもやりやすい気がした。

 タイミングさえ合えばそのまま入れ替わることだって可能のような気がする。





 数日後、本当にカガリは尚侍として宮中に行ってしまった。


「あぁあ〜〜うちはもう終わりだぁ…キラぁ、無人島0円生活ってどんなんだろうなぁ?」

 朝から父ウズミは放心状態だった。無理もない。彼の頭の中では、悪い方向にしか理解できない。


「何訳のわかんないこと言ってんですか!カガリだって頑張るって言ってるんだし、大丈夫だよ」

「お前らのような子供に何がわかる!バレでもしたらいっかんの終わりなんだぞっ」


「だから、それはやってみなきゃわかんないじゃないですか!僕だってうまくやってるんだから」


「お前の場合とは違うんだ……尚侍というのはな………」



 その日は父がまっっったく使い物にならなくなったため、キラは仕方なく物忌だの何だのと言って宮中にはごまかすことにした。
※物忌…ものいみ、と読みます。占いの結果が悪いので自宅などでじっとしていなければならないという当時の風習





 その頃、カガリは無事東宮との対面を果たしていた。


 ………が!

「まぁっ!あなたがカガリ君ですのね〜〜〜vお待ちしておりましたのよ〜〜〜〜〜v」


「………………………」


 きゃぴきゃぴの女東宮にカガリは面食らう。

 波打つピンクの髪がそれは美しい、姿だけ見れば完璧な美少女だった。

「あら?大丈夫ですの?わたくし、とても期待しておりましたのに〜」


「あ…ぁの……東宮さま?」

「よろしくお願いしますわねっカガリ君っv」



 君…!?



「私はッ」

「殿方でしょう!見た瞬間判りましたものっ!あなたがこんな窮屈な立場から、わたくしを救ってくださるってv協力……していただけますわよね?もちろんv」



「東宮………さま…?」


「協力していただければ、わたくしは晴れて自由の身になれますの!あ!勿論秘密は守りますわよっw」



 東宮ラクス・クライン。彼女によってカガリは一瞬にして共犯者にされていた……。


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言い訳v原作でも男君の方がかなり先に自分の性を受け入れます。それと、ここのラクスの設定はアスランの異母姉。彼女は真っ黒ですからv

次回予告
イザーク祭り。ノゾキと家宅不法侵入…なんじゃそら(笑)
























































































































































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