桜国ものがたり〜君と僕、あの日の約束〜

 

第22話

 








































































「小さい頃…一緒に遊んで、別れた友達がいて…。女の子だったけど、俺はその子が大好きで…大人になったらまた会おうって約束したことがあるんだ」


 重複する符号…アスランの話がキラにもたらすデ・ジャ・ヴュー。



「名前はキラっていって…同じ名前の子が出仕してきたから、まさかと思ってたけど…やっぱり違っていて………」


 それは…確信だった。キラだってただの一時でも忘れたことのない、あの大事な思い出。


「だったら…キラにそっくりって言うラクスの尚侍かも知れないって…「桜っ!」

 キラは反射的に叫んでいた。


「え…」


「桜…っ……。桜の前で、約束…したよね………」


「…キ、ラ……?キラ…なのか…?」

 キラから言葉は出なかった。

 その代わり、拭っても拭っても涙が止まらなくて、彼女はひたすら泣いていた。



「じゃぁ、別れるときにしたおまじない…覚えてる?」


 キラは言葉の代わりにこくんと頷いた。

 アスランの唇が軽くキラに触れる。それだけでキラは全てを思いだした。これだ、自分が覚えているのは!


 途端にアスランが彼女を強い力で抱き込む。



 大人になって…体格も力も良くなった彼にキラはびっくりした。

 なぜなら彼女の中で、アスランの記憶は小さい子供のまま止まっていたから。





 「ずっと…会いたかった……。探していたんだ、キラだけを」


 その気持ちが、ただひたすらキラには嬉しかった。


 解るだけでいいと思ってた。

 姿を確認するだけで、それ以上のことを望む気はなかった。


 自分はすっかり忘れていたのに…その罪悪感が彼女を責めていた。



「ごめん…ごめんね。僕…君のこと、覚えてたのに……名前だけ、思い出せなくなっちゃって」

「それは仕方ないよ。だってキラはその頃、俺の名前を覚えるだけでやっとの歳だったんだから」


「うん…ごめん……」





 アスランは得心がいった。このことで全てに納得がいった。

 自分が何故今までキラを、彼女の名前だけ覚えていながら見つけられなかったか。


「だから…尚侍になるのを嫌がって、名前を偽ってたんだね…」

「アスラン?」


「キラも…ずっと俺のこと覚えててくれて、ずっと俺と一緒の気持ちだったから……」

 それはアスランの想像の範囲内ではあったが、今のキラには都合が良かった。


 彼女は、そう言うことに、しておいた。



 再び小さく頷くと、今度はいきなり深く口づけられた。あまりの急展開にびっくりしている間に、手際よく服を脱がされ初めて…キラはあわてて後じさった。


「大丈夫だよ。怖いことなんかしないよ」


 そうじゃない。そうじゃない!

 アスランに言えないことが、キラにはあった。





「僕には…そんな資格、ないから」


「大丈夫。キラは充分きれいだよ。すごく可愛くなって…約束通り会えたんだから、キラの全てを俺にちょうだい」


 アスランは知らない。イザークと付きあっていたときのことを。

 でも、今更どうしようもなかった。身分を考えれば、アスランには逆らえない。それ以上に……本当は、自分だって何の後ろ暗いところもなく彼の胸に飛び込んで行きたかった。

 このままいけば間違いなくアスランは「知ってしまう」だろう。それが、今になってとても悔やまれた。



「でも…僕………」


「キラが今ここに…俺の目の前にいてくれるだろう?それだけで…充分すぎるくらいだ」



 そうして、キラの秘密はアスランにバレた。

 だがそれを知ってもアスランは何も言わなかった。


 彼にはキラを悲しませることはできなかった。それを知りながらも、知らぬふりをして存分にキラを抱いた。

 自分がどれだけの想いと時間を重ねてきたかを、キラに知って欲しかったから。





「あすらぁ…ん」

「ん?」


「やっぱベタベタする…」


「そりゃぁ俺とキラので二人分あるもん」

「〜〜〜〜〜っ!いつの間にそんな恥ずかしいこと平然と言えるようになったの!」



「そんなことより!やっぱりキラのお胸は可愛いね。ラクスのせいかな…?」

 それでもちょっとした意地悪を、アスランは言った。


「う゛…ぅん…。ラクスのせいだよっ」

「じゃぁこれからは選手交代v俺が最後まで面倒を見てあげるからね」

 男として対峙していたときには、まったく判らなかったアスランの本性がキラを困らせていた。



「うぅ〜いつの間にそんなに口が悪くなったのぉっ」

「口だけじゃないよ、キラ。キラに会えなかったせいで、俺…全部性悪になっちゃったんだ。だからキラが矯正してくれるんだろ?」


「〜〜〜〜〜ッ」



 真っ赤な顔になりながら精一杯怒るキラが、全然迫力がなくて、アスランはとても幸せそうに笑った。

 自分より断然細っこい身体、情事のあと特有のふわふわする匂いに囲まれて、ふと見下ろすとほんのり桜色に染まったむき出しの肌が、それでもアスランに昨夜の欲情を思い起こさせる。


「すごい可愛い。この気持ちいい肌も、つやつやした唇も、キラの全ては誰にも渡さない」


「アスラン…?」



「もう…二度と手放さない」





「ね…さすがに着替えよ?もう…すっかり陽も昇っちゃってるし……今更だけどさ」


「もう少し〜。可愛げのないこと言うなら、上だけじゃなくって下ももう一回塞いじゃうぞ!」

「エロ男〜〜〜!」


「キラ限定でね。じゃぁさ、キラからキスしてv」


「え”…」

「何故嫌がる!何故濁点が付く!昨日めでたく結ばれ…「やっやります!やるから、それ以上エロいこと言わないでぇっ」



 キラは横になったまま、アスランの首に腕を回して、真っ赤になりながら口づけた。

「うゎ!すんごい活力出た!」


「………マジ?」



「今日は…仕事するぞ!そしてとっとと片づけてキラの元へ帰るんだ!」


 その瞬間…「帝」は「尚侍」に思い切り殴られた。



「んなこと、でっかい声で言わないでって言ってるでしょッ!」

「はァ〜いv」


「…………」


 殴られたことも意に介さず、アスランはにこやかな顔を崩さないまま上の空。

 そんな彼の姿に、キラはひたすら呆然としていた。



 果たして小さな頃に約束したのは、本当にこんな男だったのか?

 いや、成長するにつれ変態になっていったのか?

 それは本当に自分がいなかったせい?

 それとも誰かの影響?



 それなのにどんどん好きになっていく自分が、非常〜〜〜に不思議だった。


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言い訳vキラカガきょうだいの見た目が違う部分は、スルーでお願いします(笑)

次回予告
アス×キラバカップル。でもここも原作通りの展開という、恐ろしい現実が!!
























































































































































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