第20話
「悲しいけど…仕方ないよね。ああそうだ、ラクスの様子を見に行ってくれると嬉しいな。今はまだ尚侍が来ていなくて、淋しいだろうから少し話でもしていってくれ」 「…ぁ、はい」 案外あっさりとアスランは自分を下がらせてくれた。 が!カガリは思わずにはいられない。 それはピンチを脱出した安堵からか?はたまた本当にきょうだい想いだからなのか? (っつぅか!っつぅ〜〜〜かッ!今までナァニやってたんだキラはぁぁああああッ!!!) で、ラクスの元に行ってみると、彼女付の侍女メイリンが憤慨した様子で言い募ってきた。 「もぉ〜う!ドコ行ってたんですか!酷いですよキラ様もカガリ様も!こんな時にラクス様を置き去りにして」 「え?」 メイリンとの間にすだれがあることにカガリは安堵した。まともに顔が合えばモロバレ間違いなしだ。 キラとカガリが入れ替わったことを、メイリンには言ってなかったことを即座に思い出した。 「すみません…」 「謝るだけならいくらでもできますっ」 「あぁら!いいんですのよぉ〜〜〜メイリン。彼女がサッッサとここに上がってさえくれれば、ラクスはもっと幸せになれるのですがぁ〜〜〜〜〜?」 すだれ越しでもよぉぉ〜く判った。 にっこり笑って眉間に青筋、わなわな震える身体…ラクスはむちゃくちゃお怒りだった。 「ら…ラクス様……っ」 「一体いつまで待てば、わたくしを解放してくださるのかしらぁ?」 「……う゛っ」 「もう一刻でも早くこんな堅っ苦しい立場から退いて、自由気ままに過ごしたいのに〜〜っ!」 それが唯一のラクスの願いであった。そのためと言うことで、ラクスはカガリを手放すことを決意した。 だがそれは…本性ラクス発動でやりたい放題、ということと表裏一体でもある。 「わ…判りました。必ず伝えておきますから」 「すぐにでもこちらにいらして貰って!キラ様!もう待てませんのv」 睨みながら言われた言葉に、カガリは言葉に詰まる。しかし…このラクスに誰が逆らえようか? 「………はぃ」 「ああっ!嬉しいですわ〜〜〜!わたくし…お話ししたいことが山ほどありますのよ〜♪」 「そぉ…ですね………」 瞳が黒く妖しく光るラクスに、カガリはもう言葉がでてこなかった。 「早くわたくしを幸せにして下さるように、願ってますわ〜」 ラクスはよほど待ちくたびれたのだろう。すだれ越しにカガリに直接嫌味を言ってくるぐらいに、彼女のオーラはどす黒かった。 それから数日後。自宅にいるとき、シンが初めてカガリに手紙を届けてきた。 「おっ手紙ですっ」 「相変わらずかわいげのない言い方だよな…」 「キラ様を不幸にしたら、俺が許しませんから!」 そんなシンをじろりと睨みつつカガリは手紙を開封し………真っ青になって固まった。それは………イザークからのラブレターだったからだ。 ちなみに宛名は、右大将様。つまり…カガリだ。 そこには会えなくなってしまった悲しみとか、自分たちがどれだけラブラブだったのかとか…とにかく今のカガリには身の毛もよだつようなことが連綿とつづられていて…。 そして最後にはご丁寧に一言添えられていた。 <お前に会えなくなって、あふれ出る涙がどうにもならないんだ。だが、捨てられたと思い切っても、お前一人を残しては死んでも死にきれない…> 「………ぅげ…」 「どぉしたんですかぁ?」 カガリは顔面蒼白になって、手紙をヒラヒラさせながらシンにもこれを読んで見ろと言ってきた。 「え?いいんですか?イザーク様からのお手紙でしょ?」 「〜〜〜。だから読めと言っている」 「………?…はぁ……?」 そして………シンも絶句して固まった。少しずつガタガタと震えながら、手紙とカガリの顔を視線が往復する。 「気持ち悪…」 「どっちがだ!」 「そぉ言えばカガリ様ぁ、キラ様は今どこですか?場所によってはヤバいですよ」 シンの一言にカガリは面食らった。 「…は?キラは今ここだろう?ラクスのとこに行く準備やらなにやらで、今超〜っ絶忙しいはずだが…?」 シンは再び青ざめた。 「じゃぁ!こんな、悠長にしているヒマないですよ!今すぐこのお手紙をキラ様のところに持っていって!とにかくすぐにでもお返事していただかないと」 「ちょっと待てシン、だから何のことだ?」 「もぉ〜う!カガリ様は相変わらずニブいんだから!」 「ニブいは、余計だッ」 「この手紙は、キラ様のところに来た手紙ですよ。イザーク様は、キラ様とカガリ様が入れ替わった事なんてご存じないから、カガリ様をキラ様だと思い込んでお手紙を送ってきてるんです!」 「あ…」 「あ、じゃないですよ!あ、じゃ!」 シンは軽くカガリを睨みつける。 もともときょうだいだから反応は似たようなものだが、やはりカガリに言われたのでは腹の立ちようが違った。 「そっか!じゃぁすぐにでも返事を…」 「……って、今のアンタが返事したら、筆跡が違うってすぐにバレるでしょうが!」 「す…っすまん!とりあえず〜キラだな!キラに見せて、それから考えよう」 「どぉ考えたって、イザーク様がカガリ様だと判って手紙を出すはずないでしょう…」 ところがその時点で、既にカガリはシンの目の前にはなかった。 「どーでもいいけど、行動力だけはある人だな…」 手紙をキラに見せると、彼女の顔はすぐに沈んでしまった。 「ごめんねイザーク…そうだよね。君はまだそう思ってるよね」 「どうする?やっぱ返事はやめとくか?」 キラはしばらく考えて、返すと言った。 「キラ!」 「でもねカガリ。イザークは僕にとって今でも大事な友達なんだ。だから…」 イザークが焦れる頃、キラの返事が彼の元にやってきた。来なければそのまま、左大臣家に乗り込もうと息巻いていた頃だった。 <自分のせいで、今更だけど…イザークなかなか帰ってきてくれなかったし、あのまま一生ぼーっと過ごすのも嫌だったから> やっぱり、女の子なんて性に合ってないんだよ。と、キラは付け足してきた。 自分はできる限りのことをしたつもりだった。それでもキラを寂しがらせたのかと思うと、後悔ばかりがよぎった。 <俺は…後悔しているんだ。確かにお前の言うことも、最もだと思うから。すまんことをしたと…> 再び届けられた手紙に、涙をぽたぽたと落としながらキラはごめんと謝った。 第21話へ→ 桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜 言い訳v*シンの「おっ手紙ですっ」も気に入ってるんですが、後半の和歌のやりとりは、個人的にお気に入りの部分なので、出来るだけ違和感がしないように現代語訳してみました。 次回予告*ラクス→キラで引かないでください(切実!)それは夜這いへの重要な伏線〜(笑)なぜ、ラクスをアスランの異母姉にしたのか。その理由がじわりじわりと出てきます。 |
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