第15話
「何かあっただろ!」 「何もないよ!ただ…」 「ただ…?」 「戻ることを考えたときに、よく考えたらカガリは髪を切るだけで良いけど、僕は伸びるのに時間かかるって事に気づいて………」 「あ”…!」 キラの一言にカガリは驚愕して固まった。 「あ、じゃないよカガリ…」 「いや…すまん!そこんとこ全然気づいてなかった。そうか…そぉいやそうだな」 妙なところで抜けている二人であった。やはりと言うかなんというか………腐ってもきょうだいだ。 「だからさ、髪が伸びるまでしばらくどっか隠れとかないとやばいでしょ?」 「あ〜〜〜確かに。判った。じゃ、こちらも按配を見ながら、キラの髪が伸びた頃に迎えに行けば良いんだな?」 「あ…うん」 そしてキラとカガリの「入れ替わり大作戦」は誰に知られることなく始まった。 そうやってカガリと打合せをしておいて、キラはイザークの元に行きそっとすがる。イザークは本当に安心したように溜息をつくと、キラをそっと…壊れ物を扱うかのように抱きしめ、頭を撫でてくれた。 「辛い思いをさせてしまったな。すまん…」 「ううん。元はといえば僕のわがままのせい。こうなることは…きっと判ってたんだよ」 キラは自嘲する。何もかも、自分のせいだった。 「カガリ姫には、ちゃんと話をしてきたのか?」 「うん。カガリは僕のきょうだいだも………あ”あ”〜〜〜〜〜ッ!!!」 「ど?どうした?キラ」 「イザークのところに行くって、言っとくの忘れた…」 慌てふためくキラにイザークは苦笑した。どうしてキラは頭は良く回るのに、こういう事だけには疎い。 「シンにでも言っとけばいい。後はよくしてくれるさ。何だったら俺から手紙を渡しておくぞ」 「……ぅん…」 部下といえども、手紙の運搬から雑用まで何でもこなす。 実際シンは良くできた部下で、キラの弟のような存在でもあった。 「それよりもキラ、見えてきたぞ。ここまで来ればにわかにバレる事はあるまい」 そこはジュール家が時々利用する別荘であった。 今回は事前に来ることが知らされているので、キラたちが移り住んでも、問題ないようにあらかじめ手配が済んでいた。 「ここはもともと俺たちの別荘だし、しばらく使うと言ってあるから大丈夫だ」 「そう…?」 「それにしても……」 イザークはキラを見てため息を漏らす。 「?」 「やはりキラ…キラはこういう格好の方が綺麗だ」 髪を綺麗に梳いて、女の子らしく着替えたキラはイザークの想像以上だった。短い髪が若干気にはなるものの、さして欠点とも思えない。 「恥ずかしいよ…」 キラには化粧さえ初めてだった。 「何言ってるんだ。よく似合ってる…」 「それは良いけど…歩きにくい」 「それで良いんだ。もう今までみたいに歩くなよ。それではじゃじゃ馬だ」 「つまんない〜〜」 「キラはゆっくり慣れていけば良いんだ。本当はこんなところじゃなく…みんなの前で堂々と公言できたらと思ったが、すまん」 「良いよ。どうせ自業自得だし。もう…諦めちゃってるもん」 「俺だって仕事あるから、毎日は無理だができるだけここに帰るようにする」 「知ってるよ。昇進したしね権中納言サマ」 「からなうな!キラだって、その…昇進したばかりで…悪かった」 「仕方ないよ。だけど…僕が行かれない分もちゃんとお仕事頑張ってね」 そうだ。キラから男の生活を、あの楽しかった友人たちとの語らいの日々を奪ったのは自分だ。 キラの一言にイザークは深く反省し、キラを悲しませることだけはしないと、固く誓った。 そうして半年の月日が経った。無理はしないで、とのキラの助言もありイザークは月の半分以上はこの屋敷に帰ってこない。 広い部屋に一人きりでろくな話し相手もなく、さすがに飽きてきた頃、シンがお忍びで訪ねてきて、キラに手紙を渡した。 「カガリ様からです」 「カガリから?」 「今のうちにお返事を書いて下さい。紙がないならこちらで用意してますから」 「あ…うん」 手紙は催促だった。そろそろ本気でやばい、とカガリが知らせてきたのだ。その様子をリアルに想像してしまって、キラは吹き出し、すぐに返事を書いて彼に渡した。 その手紙はすぐに宮中のカガリの元に届けられる。 「……………」 カガリの頭に冷や汗が伝う。そして青筋まで見えてきた。 「どう、したんです?」 「あんのバカ!僕ももうそろそろ飽きた…じゃないだろ!こっちの身にでもなって見ろって言うんだ!」 「カガリ様…あんまり大きな声を出されると、マジヤバいですよ」 そう…それはマジで切羽詰まっていた。 人より早く起きて入念にヒゲを剃り、低い声を隠すため日々裏声の練習にいそしまなければならない。 「行くぞ!」 「へ?今からですか?でも、ちゃんと東宮さまにお許しをもらってからでないと、マズくないですか?」 「ぅあっ!イカーン!忘れてたっ。じゃ、すぐラクスんとこ行ってくる」 次の瞬間、カガリの姿はなかった。 というより、あんな重い衣装を着たまま、どこにそんな軽快なフットワークがあるのだろうか。 シンはびっくりするより呆れてしまった。 「あ…ありえない……」 で、ラクスのお部屋。 「はい!良いですわ!許可書を出しておきますので、すぐにでもお発ちなさい」 着いた瞬間ラクスはご機嫌でカガリにそう言った。 「…………………」 「どうかされまして?カガリ…」 「ラクスさま…私はまだ、なぁんにもしゃべってないんですが………」 「そんなの!お顔を見ればすぐに判るじゃありませんか!それにわたくしのことは、ラクスとお呼び下さいと何度申し上げたらわかるのですか?カ・ガ・リ・は」 ラクスはそう言ってそっとカガリの側に寄る。 「あっこら!ラクスさま」 「酷いですわ!あなたたちきょうだいで、わたくしを幸せにしてくださるんでしょう?」 「それは…まぁ、確かにそう言いはしましたが……」 「大丈夫です。人払いしてありますもの。誰も見てはいませんわ」 そう言ってラクスは存分にカガリにしなだれかかり、彼にベタベタ触ってはご満悦だった。 「ひ…日が暮れるので明日には発ちますっ」 「判りました。では今夜はずっとラクスの側を離れてはいけませんよv」 「……………はぃ…」 そうしてカガリは東宮ラクスに…襲われた! 第16話へ→ 桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜 言い訳v*原作はカガ×ラクなんだけど、ここでは都合上ラク×カガ。色々都合がありまして…(笑) 次回予告*シン→キラ。でも決してシン×キラじゃない。その脇で、サクサクはしょられるイザークとの同棲生活。 |
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