桜国ものがたり〜君と僕、あの日の約束〜

 

第12話

 








































































「なぜ隠してた?」

「へ?カガリのこと?僕ちゃんと言ったじゃん…」


「違う!お前自身のことだ」

「何にも隠してなんかないよ」

「隠してるだろう!」

 まだわかっていないキラにイザークは焦れて、乱暴にキラを抱き寄せた。



「ぁ…っ」

 むにゅんっ!


 小さいながらもキラの胸がイザークの身体に当たって、少し震えた。

「自分の性隠して…何のためにここまで頑張ってるんだ?」

 そこまで言われてキラはハッと気が付いた。


 ふと怖くなってイザークの顔を見上げると、彼は今までとは全く違う優しさでキラを見つめていて……。

 キラの唇が微かに震え、そして何かを言いかけたときに優しくふさがれた。



「………ふ…っ……」

 キラに言えた言葉はこれが最後になった。





 次に気が付いたときにはもう翌日の朝で……。けだるい感覚のまま目が覚めると、目と鼻の先に男の胸板があってキラは飛び上がった。


「す…っすまんっ」

 起き抜けにイザークはキラに謝ってきた。

「…え?」


 イザークは真っ赤になってキラを抱き寄せる。その瞬間、キラはお互いが全裸であることを強烈に悟った。


(これって…もしかして………)


「ぁ……僕…」



「良いから!じっとしてろ」

 強めの語気に、やはりイザークも男なんだと理解させられる。なぜ今までこんな簡単なことに気づかなかったのだろうかと、自分ながらキラは不思議な気持ちになった。


「ぅん………」



「キラ…その………悪かった!」


「イ…イザーク……ちょっと離れて。なんか…ベタベタして気持ち悪い」

「だから…それも、その……すまん。弁償するから…」

「え?良いよ別に。洗えば取れるし」

 イザークはしばらく考え、それでも弁償すると言った。ちなみにキラは、べたべたしているのがなぜなのか、全く解っていない。


「血で汚したから…もう無理だ」

「どこかケガしたの?」

「いや、お前が初めてだったからだ。仕方ないんだ、初めての時は」


 キラは驚き、おそるおそる自分の下着を見る。確かにイザークの言うとおり、真っ白な下着の一部が血で汚れていた。



「うそ………」

「すまん!と、とりあえず俺のを貸すから」

「イザーク…」


「日も昇ったし、このままって言うわけにもいかんだろ?とりあえず、着直さなきゃ怪しまれる」


「う、ん。そうだね…」



 そうは言っても、起きあがろうとするたびになぜだか腰が痛い。その間にイザークはサッサと最低限の下着を着ると、汚れていない方のキラの下着を取って彼女の肩にかけた。


「いいよ、一人で着られるから」

「俺のせいとは言え、腰が立たんだろ?いいから、任せろ」

 そして自分が着ていたもう一枚の下着をキラに着せ、帯を締める。



 ……と、

「ひゃぁんっ…」

 素っ頓狂な声はキラからあがった。

 下着越しとは言え、散々イザークと一つになった部分に彼の手が当たったからだ。いくら脳みそはポケポケでも、キラの身体は正直に覚えている。


「すまん!痛かったか?」


「そんなこと…ないけど……その…」

「大丈夫だ。俺に任せろ」

 親友同士だった時には決して見せなかったイザークの優しいまなざしに、今とても自然にキラはすがった。そのまま元通りに着せてもらい、イザークも昨日やってきたその姿に戻る。



 こうなると、本当に昨夜のことがウソみたいな気分に駆られた。

 もしかしたら、全部夢で、自分たちは何でもなかったかのように親友に戻れるんじゃないか?





 だが、イザークが再びキラを抱き寄せたことで、否応なく現実に引き戻された。この時ばかりはキラの瞳から、涙が自然にこぼれた。



(ごめん……。僕…約束……守れなかったかも知れない……)



 キラは唐突にそう思った。イザークにではない、昔別れたあの約束のともだちにだ。





「キラに泣かれると…困るんだ……」


「ごめん…」

「キラのせいじゃない。だから…」

 言葉の継ぎ目に困って、イザークは優しくキラの唇を奪う。

 一つ奪うたびに、彼はキラにのめり込んでいった。むらむらと独占欲が沸き上がる。


 今はもう、どんな男の目にも彼女をさらしたくなかった。きっとキラのことを知ったら、誰もが彼女に手を伸ばすだろう。そんなことがイザークには我慢できなかった。

 キラのか細い手が自分にすがる。そんな彼女がいじらしくて、イザークはより深く彼女を抱いた。



「もう、お前の手を離したくない」

 イザークは真剣にキラに問いかける。今からでも遅くない。ちゃんと、女の子に戻らないか、と。



「でも…」

 キラにはキラの事情がある。第一、カガリに何の連絡もなく自分だけ戻るわけにもいかなかった。

「もうどんな男にもお前を見せたくないんだ」


「イザーク…」


「責任は取るから…俺のところに来ないか?」



 キラはしばらく考える。バレちゃったばかりか、しっかりヤることやっちゃったんだから、今更だよね。

 もう、今までみたいな関係は通用しない。


 きっとどんなに強がって見せても、イザークには全てわかってるわけで………。



「でも…カガリのこと心配だし」

「俺は今まで気づこうとしてなかったんだ。お前を通してカガリ姫を見てたんじゃない。初めからキラだけを見てたんだ」


「けど…僕にだって色々と、都合があるし……もう少しだけ…」

「そんな悠長なこと言っている間に、他のヤツにばれたらどうするんだ?キラの家だって無事じゃないんだぞ」

「判ってる…判ってる、けど………ちゃんと、ちゃんとみんなに話するから、もう少し…」



「キラ…」


「ほら、僕たち宮中でいつだって会えるわけだし、僕がピンチになったらイザークが助けてくれるんでしょ?」

「そりゃぁ…無論当たり前だッ」


「ね、イザーク…もいっかい、ちゃんとキスしてよ」



「…は?」

「優しく…キスして」

 イザークにはキラの懇願をはねのけることは出来なかった。ゆっくりと二人は唇を合わせる。





「どうしたんだ?」

「僕のこと好きなら、僕のわがままも聞いて。ちゃんと、ちゃんと考えるからさ。でもすぐにと言うわけにはいかないから…しばらく元通りにしてて?」


「…判った」

 そう言って、キラはイザークを帰した………ハズだった。





「おっ手紙ですよ〜」


「は?」

 シンから手紙を受け取って、開封して、中身を読んで………キラから冷汗が止まらなくなった。


第13話へ→

言い訳v宰相中将はね基本的に「いい男」なんですよ。原作での浮気者設定は………ま〜なんとかこじつけられるだろう…と←ヲイ!

次回予告
お待たせしました。やっとこさアスランが動きます。といっても、ニアミス。
























































































































































お読みいただきありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さい。