桜国ものがたり〜君と僕、あの日の約束〜

 

第11話

 








































































「キラ…今何と言った………?」

「だからね、フレイ姫に子供が出来たんだって」

「ありえないだろ!!!」


「うん。最初は僕も、子供って一人で出来るもんだって思ってた」

「イヤ!その解釈もあり得ないから!」

 ウズミは真っ昼間から…固まったまま動かなくなってしまった。でもって…腕が身体が微妙に震えている。



「あ…相手は誰なんだ?ことと次第によっては……」

「相手?あ〜聞くの忘れた………」


 どたーーーーん!


 大音響を確認した後、左大臣ウズミは固まった姿のまま倒れた。よく見るとやはり口から泡を吹いている。


「あ!ちょっと!もぉ〜う!色々聞こうと思ってたのに〜〜」

 そう言って、キラは倒れた父親をそのままにして自室へ帰っていった。


 どうせ、誰かが入れ替わり立ち替わりあの部屋には行くのだ。きっと誰かが気づいて勝手に介抱しているだろう。ウズミが気絶するのもいつものこと、とりあえず死ななきゃいい。





「はぁ〜〜〜」

 自室に帰り、足を投げ出してごろんと横になった。


「余裕ですね…」

 すぐに横合いから、シンの声がかかる。


「ん〜何がぁ?」

「密通……されたんでしょ?」



「だって、その密通とかいうのされて、子供出来ちゃったんでしょ?どうしようもないじゃない。僕がどれだけ悩んだって、きっと子供は生まれちゃうよ」

「なんでそ〜いうとこだけ妙に冷めてるんですかアンタは…」



「だってそうでしょ〜?考えたって仕方ないもん。それよりもこんなことになっちゃって…将来カガリに迷惑かけるな〜って、思って」

「え?キラ様…戻られる気あったんですか?」


「ん〜僕もさぁ、フレイ見てる限り、女の子って大変そうだし…今の気楽なままが良いんだけどね。カガリはそうはいかないでしょ?やっぱヤバいでしょ?ヒゲとか生えてきたら…」

「そりゃぁま〜そーですけど…?」


「やっぱ…あんま時間ないのかな〜…とか思って」

 ぼんやりと天井を眺めながら、どうでも良さそうにキラは呟く。


(フレイ…あんなに苦しそうだったし。僕もあんな風に苦しむのかな…イヤだな〜〜〜)

 言葉では戻らなきゃと言いつつ、キラは嫌そうだった。





 それから2、3日。イザークがようやく宮中に顔を出したと聞いて、キラは早速会いに行った。

「キラっ!」

「イザーク!もう調子はいいの?」


「あ…ああ。ちょっと………調子が悪かったから…」

「そうなの。大変だったね。でも良かった!良くなって」

 キラは何にも知らず、イザークにふわっとしたほほえみを向ける。


 そのほほえみを受け止めきれなくて、イザークはついっと視線を逸らした。

「イザーク…?」

「ぁっ…いやっ…俺も……さすがに辛かったし………そのぉ、こーいう時に俺にも介抱してくれる人がいたらなって…思って……」

 急に話題が変わったような気がして、キラはにわかに付いていけなかった。



「イザーク…いるでしょ?いっぱい」

「アイツらはダメだ。俺のこと遊び相手にしか思ってない」


「え?そうなの?よくわかんないけど…」

「なぁキラ…やっぱカガリ姫と会わせてくれんか?」

「ふぇ?カガリ…に?」


「美人だし…キラと同じくらい細やかだってすごく評判で…。一生をともにするなら、そんな人と一緒になりたい」


「え”…イザーク……カガリ、は…」

 男………とは、口が裂けても言えない。



「俺もさすがに遊び回ってるわけにも行かないかなって、そう思って。キラの妹なら安心だし…」


「う゛〜〜ん…一応聞いては見るけどぉ、カガリは無理だと思うよ?」

「何?もう、付きあっている人とかいるのか?」


「いや、いないけど…なんか好きな人とか、いるんじゃないかな…」

 言葉を濁して、キラは立ち去った。





 数日後、イザークが久しぶりにキラの部屋に遊びに来た。笛を教えるという名目をつけて。

「ど…どう、だった?」

「何が?」


「カガリ姫…聞いてくれたか?」

「あ…ぅん、やっぱだめだって。好きな人…出来たからって……」

という言い方をキラはした。





 実際は大間違いであったが。

「おおたわけ!そんな話をバカ正直に俺のところに持ってくるな!だいたいそんな話を俺が受けると思ってるのか?」

「ま…そりゃそうだけどー」


「お前とフレイとは違って、俺は押し倒されたらすぐにバレるだろうが!」

「そういうもんなの?」



 ぽやぽやキラにカガリは溜息をついて、そして一から説明を始める。そうしないと、いつまで経っても全く意味がわからないからだ。

「キラ、言っておくが男はオオカミだ。結局ヤることしか考えてない!」

 自分で言うのも何だが…と、カガリは付け加えた。


「そうなの?そうなの?だから、フレイに嫌われちゃったのかなぁ?」



「あ”〜〜〜ソレとコレとは別問題だから!」


「………はぁ…」

 という会話があったばかりだった。





 小首を傾げながらキラはあさっての方角を向いて回想する。その回想を、イザークの言葉が遮った。

「なぁ…カガリ姫ってキラときょうだいだろ?」


「ん?うん、そうだけど」

「ってことは…そっくりなんだろ?やっぱ」

「う〜ん?どうだろ?性格はともかく、顔は似てるって言われたことあるかなぁ…」



「やっぱ似てるのか…」

 そう言いながらイザークはキラの顔をまじまじと眺め始めた。


「ぇ?何?僕の顔に何か付いてる?」

「キラにそっくりで、細やかなすばらしい人なんだろ?そんな人が側にいたら、片時でも離さないって思えるのに…」

「仕方がないよ、カガリがそう言うんだから…」



 イザークはあまりキラの話が耳に入っていないのか、両肩をがっしり掴んでまじまじとのぞき込んだ。


「あの…何?僕はカガリじゃない、んだけど……?」



「判ってるが…ちょっと、諦めきれなくて……」


 真剣な瞳のイザークに、キラは何とも言えない不安を感じた。



「え…ちょっとイザーク?あんまり近寄ると、危ないよ?」

「名残惜しいからもう少しだけ…もう少しだけ……」


 イザークはこのくらいなら大丈夫だと思って、キラを掴んだ両手に体重をかける。ところがその拍子に、じりじりと後ずさっていたキラがバランスと崩し、もつれるように倒れてしまった。





「キラ………?」

「ふぇ…?」



 イザークは今までとは違った視線でキラをまじまじと見つめる。


「お……前………」

 イザークは信じられないといった感じで目を瞠った。



 自分の記憶に間違いがなければ、小さいもののこのむにゅっとした弱々しい感触に心当たりといえば………。

 アレしかなかった。


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言い訳vここ実は季節は真夏なんです。暑いので、着物が今で言う「スケスケルック」なんですよ。しかもさらに着崩してて、お色気ムンムンな設定。すごい原作だ…(驚)

次回予告
中納言はついに本来の性を見破られ、宰相中将の愛を受けることとなった。などと、古典の鑑賞(←結構露骨な表現多いです)では書いてありますな…。
























































































































































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