差し込んでくる朝陽にどうにも目を覚まされ、寝返りを打とうとしてキラはあり得ない感触に我が目を疑った。


「何コレ…?」



 確か昨晩、このベッドに一人で寝たはずだ。家の中を一通りは見て回り、無人だと言うことも確認している。


 なのになぜ………こうも隙間がないのだろうか?

 それだけではない。


 この…程良く生暖かいこの感触は、間違いなく生物。


 キラは誤って踏みつけたりしないよう慎重に起きあがり、そして自分に言い聞かせてたにもかかわらず驚愕した。



「ッ!!!」





「君の瞳の中に、俺は居ますか?」

<第4話>驚愕の同居人たち





 そこには信じられない光景が広がっていた。

 人が寝ているのである。だがその人はえらく体が小さく、身長もキラの半分程度しかない。


 ぱっと見3等身だ。それも、男が5人、その他に鳥が一羽、種族不明の丸い物体が一個。折り合い重なり、ひどく気持ちよさそうに寝ている。



(昨日見たときはいなかったのに)


 確かにいなかった。しかもキラはきちんと戸締まりをして寝たはず…。

 何故かって?

 お金を盗まれたら困るからに決まっている。だが、こんなに数がいればいくら寝ぼけていたって、気づかないはずはない。



(そうだッ!お金…お金〜)


 寝ている彼らを起こさないように気を付け、抜き足差し足でタンスの奥に隠した現金を確認しに行った。

 ところが、キラの焦りをあざ笑うかのように、お金もキラの身の回りの小道具もそのままだった。

 テーブルの上に置いた、愛用の食器もミリィたちからもらった「市内生活便利帳」も、全く触られた痕跡すらなかった。



(もしかして、既に話が行ってる?)


 その可能性も考えた。だがすぐに頭から振り払う。確かミーアも安全に一人暮らしができる家とか言ってなかったか?





(じゃぁ、家を間違えた?)


 そんなことはないはずだ。昨日別れたばかりの部下は、近くの市内に実家があるとか言っていた。この家の存在は知らないはずがない。


(もともとここの住人だったのかなぁ…)


 ぼんやりそう思った。

 そっと食器棚や他の棚を見てみると、ちゃんと生活できそうなだけのものが揃っているし、キッチンもそれなりに使っているような感じがあった。


 昨夜は暗かったせいでよく見えなかったようだ。




「あ〜困ったな〜。僕は知らずに勝手にここにおじゃましちゃってるわけか…」

 ちょっとした罪悪感を覚えていると、奥の方から声がかかった。


「あ…昨日のスリーピング・ビューティーさんだ」

「え?何々?もう起きちゃったの?全然気づかなかったじゃん」

「トリィ〜〜〜」

「ハロハロv」



 いきなりぞろぞろと現れた小人たち+αにキラは顔を引きつらせて固まった。


「おはようございます。超絶美人さん。昨日夜遅くに帰ったんですけど、いきなりあなたが寝ているのでびっくりしました」



「あ…ぇと、ごめんなさい。一人暮らしって聞いてたんだけど、僕家を間違っちゃったみたいで…」


 冷や汗が一条キラのこめかみを伝った。もしかしたらとんでもなく失礼なことをしてしまったのではないか。何を言われても、何を要求されても甘んじて受けよう、と覚悟を決めた。



 が、

「いえ、間違ってないと思いますよ。この辺はここ以外に家なんてありませんから。それに僕たちはここが無人だったから勝手に住みついているだけですし」


「………ぇ…」



 どうやら城のほうが情報を把握してなかっただけのようだ。キラはホッとした。


「まぁ、どっちにしても僕たち小人には住民票もなければ戸籍もありませんからね。ここはあなたの家ということになるんですよ」





 意外なことを言われた。いま、キラの目の前にいるのは文献で読んだことがあるだけの小人族だった。まさか本当にいるとは思わなかった。


「あ、でも、あなた達が先に使っていたわけだし…その、僕は……」

「でも他に行く当てがあるんですか?ないなら僕たちと一緒に暮らしませんか?あ、でもイヤなら別に引き留めはしませんけど…」


 確かに言われたとおり、ここより他に行く当てなどなかった。加えて、キラのような世間知らずのお姫様はどこに行っても、お荷物の居候でしかないだろう。



「こ…ここに泊めてもらっても、いい…かなぁ?」


 恐る恐る言ってみたら、若草色の髪の小人に喜ばれてしまった。



「わぁ、あなたがいてくれると街でちゃんと買い物もできるし、僕たちも助かります。申し遅れましたね、僕はニコル・アマルフィと言います」


 ニコルというその小人は、次々と仲間たちをキラに紹介していった。


 白い髪のイザーク、お調子者のディアッカ、黒い髪のシン、恥ずかしがり屋のレイ、そして緑の小鳥のトリィに、ピンクの球体生物ハロ。

 今はこの7名(?)で、仲良く暮らしているが、人間ではないから、なかなか街へ出ることができないと言う。





「寒くなる前に、森で採った薬草とか果物を、街で貯蔵食に換えておきたかったんですけど、いつもこの辺りを通ってくれる行商人の方が、今年に限ってまだ来てくれなくて…ちょうど困っていたんです」


 若草色のニコルは困った様子でそう説明し、できたらそれをキラに頼みたいという。


 キラにとっては思ってもない展開だったので、その話を喜んで受けることにした。どうせ自分だって街に買い物に行かなければ生きていかれない。この国の街を知る絶好の機会でもあった。

「ありがとうございます。美人さん」



「………。美人さんはこっ恥ずかしいよ。僕はキラ。キラ・ヤマトって言うんだ。こちらこそ知らないことばかりだけど、よろしく」


 キラが小さくはにかむと、数人の小人の頬がほんのり色づいた。


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*kiminohitominonakaniorehaimasuka**kiminohitominonakaniorehaimasuka**kiminohitominonakaniorehaimasuka*
言い訳v:なんか…うっかり者の八兵衛に、遊び人の金さん、しっかり者の女将さん………みたいなノリの7人(ぇ)の小人です。
次回予告:キラ姫と親衛隊の面々。

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