−2008−
契約終了は新たなる始まり・中編1
「まともな彼氏が欲しい…」 ウンザリしたような表情で学食の机に突っ伏すキラのそれが、本心だった。 無論そんなこと言える相手はミリアリアぐらいしかいない。結局隠し続けるのも気が引けて、例のバイトの話をミリィにだけはした。 「いい話じゃなかったの?釣書写真撮って貰えて、有名芸能人とお知り合いになれるとか何とか言ってたじゃない」 「ミリィ〜、僕思い知ったんだよね。ギャグドラマってドラマだからこそいいんだぁ…って。実地でやるもんじゃないね……」 そしてまたため息。 「ザラさんが助けてくれてるんじゃないの?」 「助けてくれる前に僕は巨乳に襲われる……」 キラは話す。初夏のミーア来襲事件を。 でもって当然アスランから色好い返事がもらえないミーアに別れを迫られているのであった。 電話で、そしてアパートへの強襲で。 「でも、ザラさんとは別れるんでしょ?」 「そのザラさんの返事がハッキリしないから困ってるんだよ………」 いつまで続けるんですか?そう言うと、ミーアがまだ諦めていなくて…と返される。 たぶんミーアさんはアスランにぞっこんだから諦めるわけないと思うよ、と返事するがアスランはこの可能性に賭けたいのだとか。 「キラ、お人好しなのは良いところだけど、ちゃんと断らないとダメだよ」 「うん…判ってる。ありがとうミリィ、今度ちゃんと話してみるよ」 そう、これはアルバイトなのだから。いつかはこういう日が来るのは約束されていたことだった。ズルズルと伸びれば伸びるほど、余計な感情が付いてくる。その日の講義をうわのそらで受けて、キラは遠回りをしてアパートへ帰った。 (よし!今日はミーアさん待ち伏せてない) そそくさと部屋へ帰り、一眠りしてた間にミリィからメールが来ていた。 「ゴメン〜〜〜!ありがとうミリィ〜〜」 それはキラが出席はしていたものの、殆ど聞いていなかった講義で出た課題だった。 その夜キラは携帯電話のボタンを軽快に押した。相手はアスラン。 「キラ?どうしたの?寂しくなった?」 「寂しくもないし!元からなってないです!」 「俺さ、久しぶりにキラの声聞けて嬉しいんだよね。最近スケジュール合わなかったから、どうしてるのかなって思ってて」 ちょっと心配声にドキリとする。それでも、アスランとは特殊な経験をしすぎたせいだからと思った。 「大事な話があるんです」 「キラ…?」 ワントーン下がったアスランの声に気が引けないわけではなかった。でも、感情を抑え込んででも伝えなければならないことがある。 「僕たち、そろそろ終わりにしませんか?」 予想通り、アスランからの返答はしばらくなかった。 「もう少し……ダメ、かな?もう少しだけ…」 「僕、あの写真以上のことは出来そうにありません」 本音だった。 「………判ってる……。簡単なことだと思って、君を犠牲にした俺も無責任だった」 喉が、ゴクリと鳴った。ちゃんと断ってしまえば、このバイトは終わる。終わったらキラはまた普通の学生に戻る。もう、彼の顔も歌姫の生歌も独占は出来ない。夏に聞かせて貰ったラクスの歌は、鳥肌が出るほど素敵だった。その幸せも、なくなる。 「終わりですね。僕たち」 キラはアスランの言葉を待った。珍しく、彼は真剣だった。 「改めて、話をしよう。代金も…払わなくちゃ…」 携帯電話の向こう、アスランは少し頬を濡らしているのが何となく判って、後ろめたい。バイト料を払う、と聞いてこの契約は本当に終わりなのだと思った。恥ずかしくて楽しくて、そしてちょっと儲け話だった怒濤の日々はこれで終わる。 「二人っきりが、良いです。誰も邪魔しに来ないところ…」 お金を受け取ったら、全てが楽しい思い出になる。最後の最後でラクスやミーアに邪魔されたくなかった。 「次の日曜日、時間空いてる?部屋に迎えに行くよ」 「日曜日………、29日ですか?はい、大丈夫です」 なぜだか電話を切った途端動悸がした。 アス誕編中編2へ→ −−−*−−−*−−−*−−−*−−−*−−−*−−−*−− 言い訳v:やっぱり基本へたれ変態でwww 次回予告:アスランのファッションセンスは世界一フリーダム^^ |
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