−2008−
契約終了は新たなる始まり・前編

<ラクスがあの写真をそれとなくミーアに見せるって言ってた>

 アスランからの事務的な連絡。それはこのアルバイトの終わりを意味していた。


<僕たち、後少しで終わりだね>





 もう少し。もう少しでこの怒濤のような時期も終わる。たぶん終わってみれば学生時代のヘンなバイトとして良い思い出になるのではないかと思った。

 バレンタインから半年ちょっと。短くても記憶に残るほど面白いバイトだった。


 たぶんこんな経験二度とできない。





「キラ!シャーペンの芯出しすぎ!!」

 隣のミリアリアに指摘されてはたと気づいた。


「あ…ごめん」

「どうしたの?いつにもましてボーっとしてたわよ」

「いつもは余計だよ」


「なんかあったの?彼氏ができたとか、キラにはすごいこと」

「ん〜?振られるからいいの別に」



「………は???」

 そこでハッと気づく。


「……という悪夢を見て朝から疲れてる……」


「何?また悪い夢?もぉ、しっかりしなさいよキラは」

 ミリアリアはいつもの話だと思って、それ以上詮索してこなかった。キラが悪夢に魘される事なんてよくあることだし、夢の話も結構していたからだ。


 キラは、彼女にうん、とだけ答えてその場をやり過ごした。





 その頃アスランはくだらない悩みを本気で悩んでいた。


(やっぱりお金か………な…?)

 現像のための暗室の中、彼は本気で悩んでいる。


「その手使ってきたからなぁ…」

「もぉ!使うならあたしに使ってよぉ!アスランwww」


 いつの間にやら背後に忍び寄った存在に、今の今まで気づかなかった。


「のぁあッッ!!!ミーア!いつから居た!」

「さっきからずっといたわよ。よく耐えられるわね!こんな臭い部屋」



「現像液があるんだ。仕方ないだろ!外で待ってろ!今撮った写真ができる」

「いや!ミーア、アスランがいいの!」


「全く!ラクスに何か言われなかったか?」

 するとミーアのキャピキャピした雰囲気が一瞬で変わった。



「アスラン…浮気してるでしょ!婚約者がありながらどういう事よ!!」

「あのな。これは浮気じゃない。それに世間的に婚約者はミーアじゃなくてラクスだ」



「お姉さまから聞いたわ!あの女何よ!アスランの何よ!お姉さまがその気じゃないなら、あたしがアスランの婚約者になる!ね!いいじゃないどっちみち姿同じなんだし」



 アスランは溜息をついた。


「そういう問題じゃない!俺はラクスとの婚約を解消して、彼女と結婚するんだ。だからこれから先も君とは仕事以外では付きあえない。ごめん」


 ミーアの顔から一瞬で血の気が引いた。その瞬間ミーアは踵を返して全力で走り去った。

「クソ!もう少しで終わるのに」


 あと4分。この現像が仕事でなければ、迷うことなくミーアの後を追っかけていけたはずだった。

 4分きっかりで現像液から取り出し、10分で全てあと片づけを終わらせ、アスランは暗室から飛び出していった。



「くそっ!どこだ!!ミーア…」


 何度携帯にかけても出ない。ミーアの行きそうな所を片っ端から探しまくり、そのどこにもいなかったことでさらに焦燥が高まる。





 2時間半ほど過ぎた頃、携帯電話にメールが入った。

「メール?こんな時にッ」


 舌打ちしながら新着メールを開くとなんとキラからで。必死な内容がそこには書かれていた。


<アスラン助けて!ラクスさんに襲われてる〜〜〜>



 考えるヒマもなくアスランの足はキラのアパートへぶっ飛んでいた。

「キラ!無事かっっ!!!」

「空けなさい!空けなさいよぉ!」



 狭いキラの1DKのアパートのさらに狭いトイレのドアを挟んで不毛な攻防戦が続いていた。やはりいたのはミーア・キャンベル。


 それは瞬間芸だった。

 狂喜して飛びつくミーアを右手で払いのけ、空いたトイレのドアから助けを求めてきたキラを抱き留める。

 着地ざま再び飛び込むミーアの顔を左手で押さえた。





「いい加減にしろ!ミーア!」


「何よ何よ!あたしの方が断然見栄えがするじゃないのぉ!信じられない」


 いや、見栄えがするからとか、そういった問題ではない。



「だから付き合ってるって言っただろ!あんまりしつこいとラクスに言うぞ!」


「おぉおっ!覚えてらっしゃい!」


 キラをぎゅっと抱き込んで守ろうとするアスランをぎっと睨みつけて、ミーアは捨てぜりふを吐いて走り去った。


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言い訳v:すまないねぇ。管理人にシリアスラブは無理だ^^;

次回予告:運命の予兆

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