−2008−
忘れられない前触れ・前編

 嫌なことがあればその逆もある。それは世の中の通念で。

 時間があるから買い物に付き合ってあげると言われた。ウキウキとどのオタクショップに行こうかと期待してたら、フツーのショッピングモールで。



 でも、気に入った服代金を手伝ってくれたからそれなりに嬉しかった。
 その後美味しいご飯まで奢ってくれた。


 人気のすとふりっちゃがまだ店頭にあるかどうかは異常に気になるが、それは仕方がない。さすがにオタクは隠しておかねばと思った。





 翌朝、久しぶりによく眠れた感がして目を覚まし、何の気なしにダイニングの方向へ頭を向けてキラはそのまま固まった。


「…………………」

「おはよw昨日は楽しかったね。よく眠れた?」



「………………………」

「ごめんねキラ。でもおかげでキラのこと大体判ったし、嬉しかったよ」



 クローゼットの中から何かが崩れ落ちるような音がかすかに聞こえた。たぶん慌てて隠しまくったオタクグッズだ。
 ダイニングの隣のなんちゃってキッチンにお気に入りのフィギュアが数点飾られている。

 オカシイ。フィギュアは全て隠したはず…。


 でも、そんなこともかき消すような事実がキラの目の前にあった。声の主は間違いなくアスラン。その彼がキラのベッドの前に堂々と立っている。


 何で素っ裸なんだろう……とぼんやり考えた。



「た…た、た……………ぁ……」

「……?」
「た……っ立って………」

「そりゃ立つよ。朝だから」



 アスランはしれっとしている。問題なのは素っ裸をキラの目の前に晒したまま堂々としていること。気がついたらキラはアスランを握り拳で殴り倒していた。


「何するんだ!」

「……痴漢〜〜変態〜〜〜ッ露出狂〜〜〜〜〜ッッ!!!」
「部屋の中だったら罪にならないはずだ」


 余計なことを言えばわいせつ物陳列罪にはならない。キラのアパートの中だし。一応二人は恋人同士(世間体)だし。



「そーいう問題じゃない!!!!!!!!!!」
「何がいけないって言うんだ!」

「いけないに決まってるだろ!そんな!僕の前で服も着ずに堂々と……って、立ち上がるな!いや、立つならせめて隠せ!!」

「立ってるのは仕方ないだろ!」
「そこじゃない!」


「良いじゃないか、減るもんじゃなし」
「減る!減る減る!僕の人間レベルが堕ちる!君も人間なら何か服着て!」



 しかし。更に問題は混迷を極めることになる。

「すまん。なかなか起きてこないから洗濯機借りて干した」


 ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!



「着る服がない……?って全部洗ったのか!あなたは!!!」
「早く乾くと思って」

「だぁほ!………ん?マテよ??ということはその姿でベランダ出たの???」

「仕方なかったんだ。でも、大したことじゃないだろ別に」



 その瞬間、キラの怒りの蹴りがアスランの股間を強打し、男はラグの上に沈んだ。





「僕の…僕の青春が〜〜〜。僕の夢がぁ〜〜〜っ!こんなの人生最大の汚点だ!!!」
「よくあることだし、そんな大げさな…」


 キラはアスランを睨みつける。

「よくそんなこと平気で言えるねこの唐変木が!起き抜けにいきなり男の股間を生で見せられた純情女の子の気持ちがあんたなんかに判るわけないっ」


「じゃ、俺が責任取るよ。俺が嫁に貰うから」
「なんて事言うんだこのスケコマシがぁあああッ」

「スケコマシ結構!よく見たらキラ可愛いなって思ってたんだ。ね、キスとかしよっか?」


「なんでそーなる!」



 ずずいっと(まっぱのまま)アスランがキラに近づいてくる。狭い1DKのアパートでは逃げられる場所はこれといって無く、すぐに追いつめられた。わたわたと慌てるキラの手が虚しく宙を舞う。しかしそのうち右手が何かに当たってすぐに引っ込んだ。



「…あ……」


「キラ?今のはわざと?それとも事故とか弁解しちゃう???」



 アスランは楽しそうに笑いかける。目の前のキラは真っ青になって落ち込んでいた。

「さ………触っちゃった……」



 自分の手と触った場所を何度も目が往復した。


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言い訳v:一ヶ月ぶりの更新です。お待たせです><こんな駄文でも楽しんで頂ければと思います^^

次回予告:この雰囲気に女帝闖入!!!!!

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