契約恋愛another

4'th stage 前編

 アスランのとんでもない失言から一夜明け、キラの周りはにわかに騒然と………はならなかった。却って恐ろしいくらいに静かすぎた。騒ぎは別の場所で勃発していたからだ。


「…でも、本当にアスランさん……いいんですか?こんなことしてて」

 気遣う女の声を軽く受け流し、この浮気男はぬけぬけと吐き捨てる。


「俺たち、悪いコトしてる?」

 女は横に首を振る。

「でも…ほら……」


 周りを見ろと目線で促す。それでもアスランは傲然とした態度を崩さなかった。



「大事な女の子が買い物に行って、その重い袋を男が持ってるってだけだろ?それがたまたま俺なだけだよ」


 まさしくそこが問題なのであった。純真ほわほわタレントとして売り出し中のメイリン・ホークと、飛ぶ鳥を落とすような勢いの浮気男アスラン・ザラ。歩いている彼らに取材陣が追いつくのも時間の問題であった。





「アスランさん!アスランさんですね!」

「あwご苦労様〜」

「あれ?お隣にいるのはメイリン・ホークさんじゃないですか!お二人はいつからそんな親密な仲に?」

「ん〜?こないだから………かな?よく覚えてないよ」


「キャンベル嬢との噂の真相は?」

「新恋人とはもう破局したんでしょうか!」

「事務所は交際説を完全否定していますが?」

「この間密会した新恋人は誰なんですか!」



 などと…、まぁ〜次から次へと質問が矢継ぎ早に降ってくる。そのどれもに手をヒラヒラさせて適当にあしらうアスラン。

「みんな可愛いよvみんな俺の好きな人」

「いや、そー言う問題じゃなくってですね〜〜〜」



「今、俺が誰と付き合ってるのか、それが聞きたいんでしょ?」


 レポーターがのどをごくりと鳴らす。しかしアスランはトンチンカンな答えとともにマンションのエレベーターに乗り込んでいった。

「俺の場合、み・ん・なw大好きな人が多くていつも楽しいよ」


「アスランさん!」

「君たちも仕事とは言え、大変だねぇ〜。こんな狭いエレベーターの中でそんな重いカメラ担いでさ。あ…っと、俺はこれから彼女を手伝わなきゃいけない。この袋の中には生ものがあるんだ。判るだろ?」


 にっこり笑って慣れた手つきでアスランは部屋のドアを閉める。レポーター達の行動を完全に防いでだ。この技術だけでも大したものだが、褒められたものではない。

 恐らくこれがワイドショーに流れたことを知ったら、またタリアに大目玉を食らうだろうがそんなことどうでも良かった。





「あのっ…アスランさん、本当にごめんなさい。ご迷惑だったでしょう?」

 メイリンの気遣いにアスランはきょとんとした表情になった。


「え?何で?君のこと好きだよ、俺」

「………ぇ…?」



「お礼にキス、もらってもいい?」


 メイリンが固まる。確かに専務に言われたとおりとんでもない浮気者&お調子者だった。それが完璧な容姿と手慣れた言動で迫ってくるものだから、ついうんうんと言ってしまいそうになる。


「で…でも、そういうことは止められてますし……」

「大丈夫。俺が今晩泊まらなければいい話だろう?」


<しかもお泊まりするつもりだったのか!お前は!!!>


 押し問答の末、ほっぺで妥協点をもらったアスランは、しっかりメイリンの唇を奪っていった。







 さすがに玄関の外では報道陣に張られていたが、難なく彼らを巻き、携帯からキラに電話をかけた。………ところが、だ。


 しばらくコール音を聞き流してようやく心細そうに電話に出たキラは、アスランのことなど、ハッキリすっかり忘れていたのだった。


「ちょっと待ってて!キラ、今からそこへ行く!会えば絶対に思い出すから!!!」

 プツッ!



キラの、「ぇ?ちょっと?僕今は…」は、アスランの耳には全く入らなかった。



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いいわけ:契約恋愛のアスランは浮気者設定です。前回より更にチャラチャラしてて…これでもかと言うほど本編とはかけ離れちゃってます。どうでもいいけど、壁紙をコロコロ作る必要あったんだろうか?………ないかも知れない(苦笑)
次回予告:キラの抜群の記憶力に史上最大の浮気男、大苦戦!

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