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3'rd stage 前編
その日、キラは朝から大人数に囲まれて困っていた。彼らの言っている意味が全然理解できなくて。たぶん誤解だろうからと、何度言っても全く耳を貸してもらえなくて。 「あっあのっ…次の電車、乗らなきゃ遅れちゃうんです」 「電車は乗っていただいて構いません、ただ、一言だけでもお願いします!」 「マンションから帰るところを目撃されていますが、それについては?」 「交際はいつ頃から始まったんですか?」 「出会いのきっかけを教えてください」 キラには身に覚えがない。ちんぷんかんぷんなことを言われてひたすら困り果てるだけだった。 「だからっ!違うんですってば!僕誰ともお付き合いなんかしてません」 それでも彼らは引かない。それこそが職業であるがゆえに。 「週刊誌に載った件だけでも、一言お願いします」 その時初めて知った。 「週刊誌!!?」 自分には一生縁がないと思って、見向きもしなかったが。いわゆる、アノ週刊誌!? 「写真を撮られてるんです。ほら」 電車の座席で、女性週刊誌を見せられた。暗闇で見えにくい写真ではあったがそこには確かに自分が映っていた。 (何で?僕、なんかしたの?) 途端に沸き上がる不安………そして! (この人………誰?) 「あの…本当に記憶無いんですけど………誰なんですか?この人」 ぽやんぽやんしているキラの表情に、レポーター達は一瞬フリーズした。 「本当に知らないんですけど、なんか…有名な人とかですか?」 今まで、こういった写真を撮られてきた人からは考えられないリアクションだった。 「まさか…本当に知らないんですか?あの、アスラン・ザラを」 重たい沈黙がその場を凍らせた。 沈黙が破られたのはキラののほほんとした返答だった。 「全然知らないんです」 別の記者が雑誌をパラパラめくってアスランがきれいに映っているページを見せる。そこまでしてもキラは思い出せなかった。 「ぅわ〜きれいな人ですねー。モデルさんか何かなんですか?」 「君…本当に知らないの?」 「だから、みなさんの勘違いだと思うって言ったじゃないですか」 「今引っ張りだこの俳優で、恋多き噂のアスラン・ザラですよ?」 「……ごめんなさい。芸能人とか、あまり興味ないんです」 「人違い………?」 まさか、と思った。記者生活が長い自分たちの勘が当たっていないとは考えにくい。だが、今彼らの目の前にいるほわんほわんとした女性は、本当にアスランのことなど知らないように見えた。 パッと見、うまく嘘を付いて難局を切り抜けていくタイプでもなさそうだ。 「僕なんかより、もっと大事なお仕事があると思いますよ。そっちに行って下さいね」 レポーターや記者があ然としている間にキラはさっさと目的の駅で降りた。彼らが次にしまった、と思ったときは既に電車の扉が閉まった瞬間だった。 「クソ!巻かれた!」 「写真の子はあの子にしか見えないんだけどなぁ…もしかして、本当に見間違い?」 「やべ、不安になってきた」 「こうなりゃ、もう一人の本人に確かめるまでだ!行くぞ」 「え?どこへ?」 「決まってるだろうが!アスランのマンションだよ!!」 上司とおぼしき男は部下の耳を引っ張りながら集団から抜けていった。それを機に今までひとかたまりだった集団は、バラバラになっていきついには風景と同化していった。 駄文トップへ戻る→ 後編へ→ いいわけ:2007キラ誕までの中継ぎなので、周囲の状況説明とかを入れてみました。本人達の周りでは、思った以上に大変なことになっております。後編はアスラン編。アスランヘンです(笑) |