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2'nd stage 前編
ここのところ毎日かかってくる電話。 時間もまちまち。どちらかと言えば夜か深夜が多い。携帯電話のディスプレイを覗く。知らない番号だ。コール音が長く続くときもあればいわゆる「ワン切り」もある。 (恐いよ…) そういう気持ちになるのは当然かも知れなかった。着信履歴には午前2時、午前3時27分、午後7時11分、午前5時04分……という時間が並ぶ。 あまりに恐ろしくなってそのナンバーを着信拒否に設定した。 それでも。2、3日したらまた別のナンバーからかかってくる。今時珍しくなった公衆電話からさえも。 ハァ…、とキラはカウンターで溜息をついた。次から次へとかかってくるナンバーを着信拒否にしても、いたちごっこが続いていた。 (イタズラならもうやめてよ。そんなことして何になるの…) キラは思う。頭の中から「ストーカー」という言葉が消えなくなっていた。 でも、本当に思う。相手に嫌われてまで追いかけ回して、そこに明るい未来が見えるのだろうか?…と。 「キラちゃん?キ〜ラちゃん」 声がして慌てて現実に引き戻された。そうだ、今は仕事中。余計なことは考えなくてもいい時間のハズだった。 「あ…返却ですね。ごめんなさい、僕いつもうっかりですね」 「キラちゃんのぽけぽけは愛されてるから良いんだよ。それよりも、俺には悩んでるように見えたけど?」 「え、ぁ…そんなことないですよぉ!しっかり………したいです…」 笑ってごまかす。しかしその笑顔はどこかしら曇っていた。 「オ・ト・コ?」 「違いますって〜〜」 「んじゃ、祝!我らが女神様の初恋ってヤツですか?」 周囲からどよめきが聞こえてくる。 「も〜〜大っきな声で言わないでくださいよっ」 そして、案の定すぐに人だかりができた。口々に、 「どんな人?」とか 「どこで出会ったの?」とか 「俺たちをうんと言わせるようなヤツじゃなきゃ許さないぞ」とか、挙げ句の果てには 「みんなで面接だ」とか思い思いのセリフが降ってくる。 「もー違いますって!そんなんじゃありませんから、図書館では静かにっ」 鶴の一声。 確かに静かにはなった。しかし………引き下がってはくれない。 キラの額に冷や汗が伝う。周囲のぎらついた視線が今さらながらに痛い。納豆みたいに糸を引く人たち。そこへ女性陣も加わり、この市立図書館は一種異様な騒ぎとなった。 「彼氏ができたらすぐに私たちに言うのよ!とんでもない男だったら一生あなたに近づけないようにしてやるから!」 (こわい………別の意味で恐いよ〜〜〜) 知らないうちにできていた「キラ親衛隊」に、首を縦に振る以外の選択肢は残されていなかった。 勤務時間が終わり、帰り際になると今日は何とも電話ラッシュだった。次から次へとかかってくる電話。その大半が昼間の「キラ親衛隊」からだった。 さすがにナンバーを登録している人たちだと、安心感がある。ここのところ不安にさいなまれていただけに、頼れる人々のように思えてきて心強かった。 「うん、うん…大丈夫だから、はい………はい、ありがとうございます」 ピ。プルルルル……ピッ。 「あ、お世話になり………ぇ?あ、大丈夫ですよぉ。……はい、本当に誰かも判らないんです。付きまとわれたりとか、そういうこともないんで…間違い電話だと気づいてくれれば良いんですけど。………あ、そうそう、こないだ借りられた本の期限、明後日ですからね。……はぃ、ありがとうございます。お休みなさい」 ピッ。 「こんないい男を袖にしておいて、一体誰と電話していたの?」 突然薄暗い道路の脇から低い男性の声がして、キラは怯えた。 足がすくんで動かない。 後編へ→ いいわけ:2007ホワイトデー企画です。何とか続いた(笑)やっぱりキラは「ぽけぽけ」でなくっちゃぁvそうでなければ微黒気味が好みなのでvアスランの記憶は銀河の遠く彼方、というのを一度やってみたかったんですよね〜。 次回予告:キラに拒否され続けた男の逆襲(笑)口説く以前の問題がそこには立ちはだかっていた。 |