契約恋愛another

5'th stage 中編1

「妹…?」

 タリアは首をかしげた。確か記憶に寄ればアスハ大臣には一人娘以外、子供はいなかったはずだ。

「幼くして養子に行った妹がいる。名前は、キラ・ヤマトという。心当たりがあるだろう」

 心当たり。
 ありすぎだった。アスランは最近自分の話もそこそこに携帯の待ち受けを眺めながらキラ、キラ…と、にやついているのだから。誰がどう見ても変態だ。


「彼女があなたの妹だって言うの!?」

 カガリはこくりと頷いた。



「今日、妹の部屋でアスランとのいかがわしい写真を見つけた」
「………………………ぇ」

 数ヶ月前に一度起きた謎の美少女との熱愛騒動。それをアスランはいつものようにかわしていたが、どうやらアレは事実だったらしい。

 そしてタリア的に重要なことはあの飽き性のアスランが今なお彼女に熱をあげているということだった。
(こんなに続いたの、初めてかも知れないわ。でも、彼女はアスハ大臣の血縁者…)

 頭の中でぐるぐる考える。早い話が所属タレントの超問題児と国をリードする大臣の娘とのスキャンダル。キラ嬢が一般家庭に養子に行っていて、それが表沙汰にはなってないから、上手に話を持っていけば水面下で握りつぶすことも可能…。

 けれど、あのアスランが何ヶ月もお熱だと言うことはそれ以上に重要だった。





「あんなAVのような写真を堂々と飾るような子じゃないんだ。恐らく大事だとかナントカ言われて上手く丸め込まれたんだろう!」
「アダルト写真…?」

 再びタリアは首を捻る。アスランはそんなコソコソとした手段を用いるような男じゃない。どっちかというとスキャンダル交際写真を堂々と自分で撮りたがるようなアホだ。

(あのアスランが、相手の娘の感情に配慮している…?)


 でも何故?そんな写真が、彼女の部屋に堂々と飾ってあるのだろう?普通、そういった写真は嫌がるものじゃないだろうか?しかもアスハ嬢の話によると相当いかがわしいらしい。内容は容易に想像できる。



「パソコンで上手く修正してあるだけで、絶対に隠し撮りだ!!!」
「ちょっと待ってアスハ嬢!あなたの話が本当だとして、どうしてそんな写真を妹さんは飾っているの?」

 どうにも話が繋がらない。疑いたくはないが、カガリの自演だということもありうるのだ。


「キラはっ!キラはっ大事だとか重要だとか言われると、そこだけカンペキに覚えちゃうんだっ」


「………は?」


「ゎ悪かったなッ!思い切り身内の恥だがなッ!!!」

 冷や汗が一筋両者の頬を伝った。



「もしかして、あなたの妹さん………」
は何らかの障害を抱えて生まれてきて、日常生活に支障はないものの、(たぶん)容姿がいいからアスランが彼女を(一方的に)騙してる???


「バケモノ並みに頭が良いよッ!ただ、記憶の仕方が普通の人と全然違うんだ!小さい頃はよくいじめられて…!なかなか友達ができなくて…でも、だからこそアイツには余計にでも幸せになってほしいんだ…」

「頭が良い…?」
 タリアはくり返す。カガリの話を聞くほどに信じられない。

「重要だとか言われたらそこだけ覚えちゃうんだ。そして全く忘れることがないんだ。けどっ!日常であまり必要のないことは全く覚えられなくて…だからアスランなんかとの交際は困るんだ!失恋を若気の至り程度に受け流すことができない子なんだ」



 今、タリアはカガリの話を自分の頭の中でかなり整理していた。カガリの話が本当なら、今でもキラは教師などに大事と言われた内容を、スラスラと言えるほど鮮明に覚えている。おそらく成績もかなりいいのだろう。常識では計りきれないが記憶力の良すぎる頭…何ヶ月経っても超飽き性のアスランがご執心……。


「判りました。私から連絡を取って彼と話してみるわ」

「ご理解頂けて何よりです。こんな夜中に長々と失礼した」


「いいえ、あなたのおかげで決断ができました。ありがとう。今日は送らせますわ」
「いえ、お気遣いなく」

「あのアスハ大臣のご息女に何かあったらそれこそ大変です。あなたもまたお美しい方。あの馬鹿の目に留まればなおさら危険ですから」
 そのタリアの一言に、アスランはTVの中でも現実でも殆ど変わらないという事実を、カガリは知った。


 その日、タクシーで帰るカガリを見届けて、撮影所に電話をしたが、やはりアスランとは連絡が取れなかった。





 数週間後。撮影終了の一報を聞いて速攻でタリアはスタジオに電話をかけた。がしかし、結果は予想の範囲だった。

<ザラさんはもうお帰りになりましたよ>

「チッ!素早い男め!」
「え?グラディス社長何か?」

「あ、いいのよ。こっちの話。今回も迷惑かけたわね」
「いえいえ、いいんです。缶詰にしさえすればいい撮影が出来ますからね」
「ではまた今度」





 その頃、当の素早い男は、早速部屋のチャイムを鳴らしていた。

 ぴぽ〜〜〜〜〜〜んwwwww

 いつものようにドアの小窓で確認することもなく、キラが不思議そうな顔をして出てくる。こういうちょっと抜けたところもアスランのお気に入りだった。いつもまっすぐな瞳で自分を見つめてくれる。
「ザラさん?この間の本なら返却していただけましたので、大丈夫ですよ」

 キッパリと笑顔で仕事の話をするのもいつものことだ。そのたびにアスランはますますのめり込んでゆく。
「大丈夫。キラのそんなところも大好きだから」
 相変わらずこの男はしれっとして言う。そして彼女の耳に口を近づけコソッとつぶやいた。

「そして、おそらく君にとって初めての男だから」


「ちょっ待ってください!そんなことここで言わないでくださいっ」


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いいわけ:カガリとタリアのやりとりは書いてて楽しかったです。
次回予告:いいところを邪魔する人たち

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