coodidaiji.jpg

 

 

ふぇいず 7

 

 

 ところ変わってオーブの総合病院。受付を済ませたマリューが診察カードをキラに渡す。…とキラの顔を一瞬で青ざめた。

 

 

「ちょっ!なんで僕が産婦人科なんですッ!!!」

 

 

 朝イチの絶叫はすんでの所でアスランの手によってさえぎられた。モゴモゴと抗議をしようとするキラにアスランが必死の説得を試みている。マリューは更に続けた。

「だって…外傷はないわけだし、内科でもないでしょ。困って受付で訊いたら、ここでCT写真撮りましょうってコトになったから、ね?キラ君、写真を撮るだけだから!」

 

「でも!それにしたって、なんで産婦人科なんです!?あそこは女性専用でしょう!」

 

 

「だって、キラ…今は女の子なんですもの」

 ラクスのキツイ一言に、キラは撃沈した。

 

「う゛う゛ぅ〜〜〜ッ!!!」

 

 

「それと…アスラン君は?」

「俺は内科です。タダの貧血ですから」

 

 キラには本当のことを言う必要はなかった。言ったら二度と近づけなくなるに違いないだろう。そんなことになった時、カガリにどう説明すればよいか、皆目見当がつかなかった。

 

 

 たっぷり待たされて数時間後…、

 

 

「キラ、どんなです?」

 

 先に受診を済ませたアスランがキラの診察室を訪れた。中ではカリダとマリューが深刻そうに医師の話を聞いている。

 

 

「それが…そのぉ〜」

 言い出しにくくなって口ごもったマリューに変わって医師はハッキリと様態を伝えた。

 

 

「つまりですね、身体的には全く問題ないんですよ。上から下まで普通〜ぅの女の子なんです」

 

 

「……………は?」

 

「内臓にも問題はないし、乳ガンもない、子宮にも異常は診られなければ、べつに妊娠しているわけでもない。女性ホルモンだって異常はなし。全く正常なんですよ。女の子の身体としてはね」

 

 アスランは立ちくらみがしそうな感覚に襲われていた。にわかには整理できないような医師の爆弾発言の数々。昨日まで男だったキラが、ある時突然女の子になったというのに、まるで動揺したようには見えない。

 

 

「…じゃぁ、やっぱりアレが原因なんですか……」

 マリューがため息を漏らす。

 

「アレ…?」

 

 

「ええ!ここオーブにある幻の源泉です」

 オーブは大きな火山があるので、その周りは自然と温泉が湧き出てくる。世界でも有数の温泉大国でもあった。

 

「源泉?…温泉ってことですか?」

 

 

「そうです。女性特有の病気や、疲労回復に非常に効能があるんですが、ごくごくまれに性転換するという伝説があって、普段は女湯になってるんですよ」

 

 医師がそこまで言い終えた時、キラの涙レベルは8になっていた。

 

「…だって、改装中だからって、特別に貸しきりにしてもらってて、そんな伝説なんて知らなかったし……って、伝説って普通ウソなんじゃないの?」

「それがね。昔の文献すぎて、もう誰も覚えていなかったのよ。しかも改装中で看板が外されてるけど、何故か昔から女湯の立て札があったの」

 

 

 アスランがブルブル震えだした。

「……ってことは、もしかして……」

 

「治らない……というより、もはや体質ね、これは。医者にはお手上げだわ。……まぁ、なにか異常があったらまた来てちょうだい」

 

 

 当のキラは……言葉のショックで気を失ってしまった。慌ててアスランが抱きかかえる。キラの身体は床に激突する危険からは避けられた。

 しかし…気絶したキラには失礼な話、なんと魅力的なことか!知らず、のどが鳴った。そんなアスランに医師が小声で手招きする。

 

「…?なんでしょうか」

 

「鼻血…出てるわよ!」

 

 

 アスランは慌てて鼻をすすろうとして失敗した。苦笑した医師がティッシュを持ってきて血を拭き取る。

 

「まぁ、びっくりするわよねフツー。君…兄弟?友達?…ま、どっちでもいいわ。一つ忠告があるんだけど、彼女、身体は本当に女の子だからね!コーディネイター同士でも、ナチュラルにヤッちゃったら、デキちゃう可能性あるからね!そこだけくれぐれも気を付けて」

 

 

 生まれて初めて目が点になったアスラン・ザラ(17)がいた。

 

 にわかに理解できなくてボーっと突っ立っているうちに、医師は「じゃ!」と言ったきりすぐさま次の受診に入った。

 

 

 病院前でタクシーを拾って家に帰り、すぐさまキラを自室のベッドに寝かせた。代わる代わる様子を見てみるものの一向に気がつく気配はなかった。

 医師の言葉がよほど堪えているのだろう。

 

 

 とにかく話はリビングだ。またアスランが絶叫して、キラの種割れを引き起こしたら堪らない。それは一度で身に染みた。

「…で、どうだったんだ?」

 

 留守番組から質問が入る。どぉ〜してもついていきたかったのに、ムリヤリ留守番をさせられたバルトフェルドである。

 

 

「ええ…それが……」

 マリューが言葉を濁した。ふと見ればラクスにもいつもの歯切れがない。

 

「キラは、本当に女の子になっちゃったんですって」

 カリダ・ヤマトの困ったような一言に、

 

「………は?」

 

 

 バルトフェルドの目も点になるのは無理もない。

「…ということは、アレか?本当にどこもかしこも、女の子だ…と?」

 

 

 その頃、キラの部屋にダッシュで向かった人物が約一名いた。確かに…いた。

 

 

ふぇいず8へ→

次回予告:妄想的回想とともに深まるキラへの思い(ぇ)そしてキラはついに言ってはならない言葉を!「アスランと一緒に暮らす!」そう言って二人はひしと抱き合うのであった(はい?)

  ********************

お読み頂き有難うございました。ブラウザバックでお戻り下さい。