ふぇいず 6
アスランは、あまり寝られたとは言えなかった。目が覚めて、時計を見てみると5時半。視線を戻すと、枕が血に染まってしまいそうなほど強〜烈なキラ(♀)の寝顔が!
う゛っ…っ!!ヤバイ!
強引に鼻をつまんで出てくる血をムリヤリ逆流させた。口の中でいささか血の味が後を引く。段々自分が変態になっていくような気がして、気が滅入った。 そのキラは、急な女性化で一回り以上小さくなってしまったので、端から見れば自分がキラを抱いているように見えるだろう。甘ったれのキラが自分にすがっている分、本人に全く悪気がない分タチが悪い。
そして、恐れていた時間がやってきた。
空が明るくなってようやく目を覚ますキラ。 ボーっとした瞳で自分を見上げてくるキラ。
そして、うーん…とやたらめったら色っぽい声を出すキラ。それらと戦わなければならないのだ。
「キっ…キラっ!」 「う゛ー…ん、アス…まだ、眠いよ……」 「キラっ!」 「今、何時ぃ〜?」
「キラっ!すまん、起きてくれないか?」 「……?…なんで…?」 「こんなとこ、見られちゃマズイだろ!…それに…っ、今の俺には、お前は女の子にしか見えてなくて…その……キラには悪いと思うんだけ…」
「う゛…ー。いぃよー……べつ…にー…ぃ……」
寝惚けているのだろうが、キラの爆弾発言にアスランの頭は沸騰した。 「キラっ!!!」
「も、少し…寝るー。アス…起こしてー……」 アスランはもう限界だった。
30分後…キラは寝惚け眼のままアスランの腕につかまって、ズルズルと食堂へ引きずられてきた。
まだ船をこいでいるキラと、「ほら!起きて、ちゃんと歩いて!」なんて言っているアスランは、昔からずっとそうだったが、ギャラリーはそうは見てくれない。
バルトフェルド「どうでもいいけど、君たち…絵になるねぇ…」 ラクス「まるで恋人みたいですわね」 マリュー「どっちかっていうと、新婚家庭に上がり込んだ気がするのだけど…私たち。キラ君って昔からそうなの?」
「そうねぇ、アスラン君がしっかりしてるのも、キラが頼りっぱなしなのも、あまり変わってないわねぇ……」 「そりゃ幼い頃はそれで良かったんでしょうけど、これじゃホントの夫婦みたいね!」 「丁度いいですわ!アスラン…いっそのことキラと一緒におなりなさいな」
「えええーーーっ!!!!!ラクスっ!なんてことを!」
驚愕して飛び上がったのは当のアスラン・ザラ氏(17)。
「だって、女の子なキラとお付き合いしても、わたくし仕方がないですもの」 「それこそアブノーマルカップルになるねぇ。ま…ボクとしちゃそれも絵になるからビジュアル的にはOKなんだけど…?」
「バルトフェルド隊長っ!!!それにラクス!ラミアス艦長もっ!!!ヘンなこと言わないでくださいっ」
アスランは思わず叫んでいた。みんなして好き勝手なことを言って!からかっているとしか思えない。状況はこんなにも深刻なのに! ……と、キラに視線を落とすと、キラの様子がおかしい。 「……キ…ラ……?」 キラが震えているのが、捕まれた腕を通して伝わってくる。…そして……。
「朝からうるさいッ!静かにしてよアスラン!!!」
その瞳は…完っ全に種が割れていた。
そして再びアスランにすがりつくようにしてキラは二度寝に入った。
その後…種割れが戻っているかどうか、時々キラの瞳を確認しつつ注意深く方を揺すりながら、それでも必死に起こそうとするアスランの姿が周囲の同情を誘った。
「なんだい?…ってことは、アスラン君の方が恐妻家ってことになるのか?ラミアス艦長」 「どうやら、そのようね。何だか…本ッ当ーに夫婦よね……」
アスランの頭に怒りの青筋が浮かぶ。 実は未だにキラは種割れ中で、叫びたくても叫べない。彼はギラついた目でギャラリーを睨んだ。しかしその瞳は、涙目以外のなにものでもなかったという……。
そして、 異常に艶めかしい声と共にようやく目の覚めたキラは、ケロッとした笑顔で清々しい朝を迎えた。 「あ…みんな、おはよう!…と、アスランごめんね。僕また寝惚けてた?」
いーや!種が割れてた!!!なんて言えるはずもなく、アスランは心の中で滝のような涙を流しながら肯定した。 「そうだよ。キラ、覚えてない?」 「うん、ごめん。全然…」
カリダ・ヤマトを除くギャラリーは、めまいがしそうな感覚に襲われたという……。
次回予告:病院で明かされる驚愕の事実とは!?医師の一言に、思わず鼻血が出たアスランの理性はギリギリ限界だ。ここで踏みとどまらないと、男の友情が崩れてしまうぞ!頑張れアスラン!全ては君のガマンにかかっている!! |
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