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 ふぇいず 3

 

 アスランが慌てて顔を洗ってくると、不意に女性陣の絶叫が聞こえてきた。

「あ…っっ!!!」

「ちょっと!キラ君…まだ全部終わってないのよっ!!!!!」

 

 

 とたとたとた……という何だかかわいらしい音とともに、目の前に現れたキラはいきなりアスランにすがりついてきた。

 

「ア…アスランっ!助けて…お願い、助けて……」

 

 涙目のまま見上げてきたキラは、キレイに化粧をされ、スケスケのキャミソールの中からはデザインもののブラから覗く結構豊かな胸がぷるるんと揺れる…そして可愛らしいピンクの下着から覗くすらりとした脚線美で、お年頃のアスランの頭に無意識のままクリーンヒットを続けていた。

 

 思わず、キラを庇うように腰に腕を回したアスランだが、続いて現れたドス黒い二つのオーラに、再び出かけていた鼻血が止まり、つい…助かった、なんて思っていた。

 

 

「逃げてもムダよ!キラ君。ずっとそのカッコのままいられる訳じゃないことくらい、あなたにも判っているでしょう?」

 

「そうですわ!これからまだ上着が残ってますのよ!これ以上ダダをこねたら、わたくしのドレスを着せますことよ!!!」

 ドス黒い煙が女性陣の周囲を覆う。彼女たちは格好の獲物を見つけたかのようにひどくやる気を出していた。

 

 

「もうやめてください!僕は…僕は…っ」

「そうです!いきなりこれじゃいくらキラだって可哀想ですよ」

「アスラン〜♪」

 

 

 そんなせっかくの美しい友情シーンをブチ壊した人がいた。バルトフェルド隊長である。頭を殴られたように現実に戻される意識。

 

「しかし…そんなこと言ってもなぁ、イカンだろ?このままじゃ、性に飢えた男どもに襲って下さいと言ってるようなもんだぞ…」

 

「そんなぁっ!!!」

「う〜ん…その胸見てると、アイシャを思い出すなぁ。ボクも本気になっちゃうかもよ?」

 

 

 アイシャ…以前の大戦で戦死したアイシャの写真が暖炉に飾ってある。色気ムンムンの、まるで深夜の天気予報に出てくるムダにボインなコーディネイターのお姉ちゃんだ。

 

 

 キラの顔が引きつった。

 

 

 アスランはというと、再びキラの胸に視線を落としてしまって、何かに気づいたかのようにハッとなった。そして…ありったけの勇気を振り絞って、キラに言った。

「キラ…俺からも頼む。とにかく、何でも良いから服を着よう」

「アスラン…っ!」

 

「だって、さずがにそのままじゃマズイだろ?バルトフェルド隊長もああ言ってるし…大体キラが元に戻るまでのちょっとだけだから、ね?ちゃんと男に戻ればこんなコトしなくて良いんだから」

「う…うん…」

「出来るだけ早く見つけようね」

 

「うん…判ってる……」

 

 

 この様子じゃ無理だろうな…と思いつつもアスランはキラのために、異常に興奮している女性陣に向かってせめてものお願いをするしかなかった。

「キラが嫌がってますから、おとなしめなのでお願いしますよ!」

 

 

 マリューとラクスはというと、軽やかにハーイと堪えたがその声は完全にうわのそらであった。

「…ということでっ!さ!キラ君、行くわよぉ〜!!!」

 

 

「う゛う゛っ…何で……何で、こんなコトに……」

 

 泣きながら強制連行されていくキラを心配そうに見送ったアスラン氏は、速攻で再び洗面所にダッシュしていった。

 

 

 30分後…

 

 

 すすり泣きとともに現れた3人組は、あんぐりとしたままのギャラリーに向かって、「買い物に行く」とのたまって出かけていった。

 

「可愛いじゃないか!オジサンは結構好みだなぁ。何ならこのままずっと女の子のままでも良いんじゃないのか?」

 

 

 バルトフェルドの言にアスランは三度洗面所に走らざるを得なくなっていた。そして…真っ青な顔をして帰ってきたかと思うと、

 

「やっぱり…ダメです。元に戻る方法を探さないと……」

 

「お前さんが保たないってか?う〜ん、イイねぇ!若者は素直で!!!」

 呵々大笑しながらバルトフェルド氏は自室に帰っていった。どうやらあのアスランをからかうことが出来てご満悦のようだ。

 

 

 当のアスラン・ザラは、その後すぐ急性貧血で倒れたそうな。

 

 

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