ふぇいず 2
案の定、ドアを開けると種々の叫び声が二人の耳をつんざく。……そして、状況説明に一晩中かかった。
「……だから、理由は判りませんが、とにかく、キラが女の子になって戻らないんです!…ということで、何とか戻る方法を見つけないと!そう言うことですよっ!!!」
何度も同じ事を言い続けているといい加減腹が立ってくる。ずっとうつむいて、時々まだ泣いてるキラの精神状態も、気になるところだ。
「そうは言ってもなぁ…」 バルトフェルドが、う〜〜〜んと唸った。アスランが怒鳴る。 「大体、何で同じコーディネイターのあなたが判らないんです?」 「おいおい!バカ言っちゃいかんよ!ボクの専門は工学と心理学なんだ。医者のことについてはまるでわからん」 アスランは、ハァーっと大きなため息をついた。
「キラ?大丈夫か?どこか調子の悪いところはないか?」 「身体は何ともないんだけど、僕…戻れるのかな?このまま戻れなくなっちゃったらどうしよう……」 「大丈夫!大丈夫だからキラ!俺たちでちゃんと元に戻る方法を探すから、ね?」
相変わらずキラのことになると心配性なアスランを余所に、あることに決心した人たちがやおら切り出した。 「キラ君…」 「キラ…」 マリュー・ラミアス(27)とラクス・クライン(17)である。
「…なんですか?」 キラは相変わらず涙顔だ。
「こっちにいらっしゃい!」 そう言われ、何が何だか判らないままマリューに腕を引っ張って行かれた。
「あ、あのっキラをどうするつもりですか?」
「どうもこうもないでしょ!あなた、キラ君をこのままこのオーブで、ザフトの軍服姿でいさせる気?」 「う゛…それは…まぁ……」
「しかも、そのザフトレッドじゃ余計マズイだろう」 バルトフェルドが付け加える。 「それじゃ、彼…う〜ん、彼女はザフトのトップエリ−トだ」 「え?あ、そうなんですか?ああ、私連合だったし、ザフトのことなんてよく判らなかったから……」 マリューはそう言って、二階の私室に消えた。絶ッ対に覗かないで(怒)と、念を押して。
そして…
「あっ、いやッ…!何するんですか……っ」
「ちょっと!抵抗しないの!!」 「で…でも、そんな、いきなり女の方に覗かれるなんて…」 「今は、女同士でしょ!ナニ恥ずかしがってるの?」 「そうですわ。女の子には、いろいろあるんですから。私たちに任せてくださいな」
「そんなっ…僕、男ですから。きっとこれも一時的なもので、すぐに戻ると思いますし…って、マリューさん、ラクスっ!やめてくださいっっ!!どこ触って……っ!ぃ…いやあぁぁあっっ!!!!!」
なんとまぁ、アラレもない会話が丸聞こえで、鼻血を出した人がいたとかいなかったとか…。 そしてズルズルとラクスの私室に引きずり込まれていったキラだった。
「あ…あの、キラはこれから……」 珍しくオロオロとするアスランにバルトフェルドは意味深な含み笑いを寄こした。 「さぁ〜、女の子にはいろいろあるんだろ?ボクにはわからんがね……」
「カ…カリダおばさまっ!!」 慌ててキラの養母に話を振ったが、彼女もだいぶ困惑気味だ。 「でも、そんなこと言われても、女の子になっちゃったんだし、彼女たちなら悪いようにはしないと思うからお任せするしかないと思うのだけど…」
「カリダおばさまーーーーーっ!!!」
「キラのことについては姉さんからあまり話して貰える時間はなかったし…コーディネイターにはこのようなこともあるのかしらって思っちゃって……」
「ありません!絶対にあり得ませんよ!!しっかりして下さい!カリダおばさまっっ!!!」
アスランは半泣きになっていた。
そして天井からは激しい人の足音と、女性達の怒鳴り声…そして、キラの悲鳴が絶え間なく聞こえ続けていた。
「絶対にダメ!キラ君っアナタ襲われたいの!?」 「何言ってるんですかっ僕は……」 「あらあらあら!羨ましいほど豊かなお胸じゃありませんか?」 「そんなぁ〜」 「ブラはしなきゃダメ!ラクスさんっ!お願いねッ」
そして……
「あ…あのっっ!!せめてパンツは男物にしてくださいよぉ〜〜。心細いですから」 「何を言ってるんですか、キラ!!今更!ほらダメですわ、横を向いては!マスカラが目に入りますことよ!」 「そうよ!新品なんだから良いじゃない!」
「…っ!!!そういう問題じゃないですよ!マリューさぁんっ………」
1階の食堂ではバルトフェルドがアスランににやにやしていた。 「おいおい……鼻血が出てるぞ!う〜ん…お年頃の少年にゃちょっとキツすぎたかな〜」
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