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ふぇいず 12 

 

「キラぁあああ〜〜っ!どうした?何があったんだっ!!!」

 大慌てでキラの私室に直行すると、またしても呆然と滝のような涙を流しているキラ(♀)がいた。

 

 

「…キラ……?」

「アスラン〜…。やられた!僕の着替え………全部っ」

 

「………え?」

 

 

 クローゼットはほとんど荒らされて……いや、でも強盗が入ったわけではない。大体、下着ドロにしたって、どこの世界に男の着替えをごっそり盗んでいくバカ者がいるだろうか!犯人の目星はついていた。

 

「ないんだ。僕の着替えが…全部。最近買ったばかりのお気に入りまで、みんなマリューさん達が持ってっちゃった。まだ一度も着てないのに〜」
 

 

 その代わり、引き出しの中から今まであり得なかったものがイヤでも目に入ってくる。

 

「何で…僕がこんなのしなきゃなんない訳ぇ!」

 

 

 怒ってキラが取り出したのはまっぴんくのブラ。その他にも、赤、黄色、水色……といいあんばいのカップのブラが次から次へと出てくる。ブラの隣に並んだものまで、言う必要はなかった。

 

 

 アスランは心底キラに同情した。そしてちょっとでも、フラッと揺れた自分の気持ちを恥じた。そうだ!思っちゃいけない!キラが…こんなにも似合うなんて……思っちゃいけないっ!!!

 

「あいつら〜!!!」

……と怒ってはみたものの、ふとキラを見てアスランは赤くなった。さすがにバスタオル一枚はヤバイだろう!何がヤバイって…俺自身のガマンの限界が!今度こそ…キラの目の前で鼻血なんか吹こうもんなら言い訳ができない。

 

 

「キ…キラぁ……その前に、何でも良いから、服…着よう!ね」

 

 その言葉にキラもハッとしたらしい。確かにずっとこのままではいられない。アノ二人に加えてバルトフェルドまでがうるさすぎる。

 

「………うん」

 

 

 そう言ってきびすを返すと、最悪にドス黒い雰囲気が襲ってきた。真向かいのアスランの部屋に立ちはだかる者がいる。ラクス・クラインとマリュー・ラミアスだ。

 

「ここから先は一歩たりとも通しませんことよ!」

 凄みを効かせてラクスが宣言した。

 

 

「ラクス!そんな…」

 

「いいえ!なりません、キラ!女の子になってしまったあなたに、アスランの私服を着せれば、それは世の女性達へのオシャレへの妨げとなって、全世界を悲しみの渦に巻き込んでしまうでしょう………」

 

 

(……!ラクスが説教してる!…コ…コレは……!!!)

 

 

 ラクスは静かに種割れしていた。

 

「こんなにも女の子らしく、スタイル美人なあなたが無骨な男物の服を着る…あまりにも似合わない悲しみを知る私たちは、その悲劇を二度とくり返してはならないのです!そしてその果てない哀しみは消えぬ憎しみとなってアパレル業界を席巻することでしょう………」

 

 

 ちょっと待て!あの時は核ミサイル………なんて思っているとラクスの瞳が近づいてきて、キラは思わず後じさった。油断しているところを、すかさずマリューに引ったくるようにさらわれてしまった。

 

 その後、20分待っても30分待ってもキラはラクスの私室から出てこなかった。いや、正確には出てこられなかった。

 

 

 そのうち、

「アスラン君……時間あいてるなら、シャワー空いてるわよ」

というカリダ・ヤマトの声が聞こえてきて、アスラン・ザラは涙をのんで1階に下りていった。

 

「カリダおばさま!何とかしてくださいよ、ラクス達」

 

「そうは言っても、今のキラは女の子なんだし、オシャレをさせてあげたいという気持ちは判らなくはないもの……」

 

 

「…でも、あの執着はちょっと異常ですよ!キラがあんなにも嫌がっているというのに……」

 

「そうねぇ。でも私でも似合ってるって思っちゃって……。困ったわねぇ、本当キラはますます姉さんの若い頃にそっくりになっちゃって………」

 

「カリダおばさまっ!!!しっかりしてくださいよォ〜」

 

 

「それがねぇ、キラも満更でもないようなこと言ったりするのよ」

 

「……なんて?」

 

 

「母さんも、似合うって思う?」

 

 

「……とか。このまま女の子してると、気持ちまで女の子になっていっちゃうものかしら?コーディネイターって………」

 

 

「それコーディネイター関係ありませんからっ!!!」

 

 

 アスランは珍しく声を荒げた。カリダに向かってこんな言い方をしたのは恐らく初めてではなかろうか?ところがカリダはと言うと、そうなのかしら、とか言ってさして気にする風でもなかった。彼女も半ばアスランの育ての親みたいなもので、実際キラに言われるのもアスランに言われるのもさして違いはないのだろう。

 

 

「と…とにかく、早急に元に戻る方法を探しましょう。このまま戻らなかったら、さすがにカガリにも言わなければならなくなりますから」

「それも、そうねぇ。甥で息子で娘だなんて…何だかとてもヘンな気がするわぁ」

 

「そうなんです!そうでしょう?俺…とりあえずシャワー浴びてきますね。頭冷やしてきます」

 

 

 カリダ・ヤマトはいまだにふわふわしていた。そうだよ…昔からこんな人だったよ……。

 

 

 アスランが早めのシャワーを済ませて2階に上がると、ラクス達が静かにしろとジェスチャーしてきた。

 

「また何やらかしたんですか?あなた方は…」

 表情も口調も嫌そうになるというものだ。

 

「静かにしてくださいな。やっとのことで寝付いたのですから」

「何か…クスリでも使ったんですか?」

 

「いやぁね!そんなコトしないわよ。大体ソレ…最高のコーディネイターに通用すると思う?」

 

 

「判りませんよ。とても優しくて優秀だけど、キラはぼーっとしててお人好しだから…特にラクス!あなたのおねだりにコロッと騙されてしまうんですよ!」

 

「まァいやですわ!わたくしがキラを騙すなんてあり得ませんわ。わたくしはキラがとても好きですもの。あなたとは違いましてよ」

 

 

 アスランはラクスのトゲをサラッと無視して、部屋のドアをそっと開けた。確かにキラは寝込んでいた。しかし、実際ふて寝の延長線上であることに間違いはなかった。

 閉じられたまぶたに浮かぶ涙のあとに、最高のキラバカ、アスラン・ザラが気づかないわけがなかった。

 

 

「どうやらそのようですね。ではキラはこのまま朝まで寝させてあげましょう。俺としてはかなり気に入らないんですがね!」

 

 

 寝ているキラを起こすわけにはいかない!それは至上命題でもあった。なぜならこんな場所でケンカになってしまえば、またキラの種が割れてしまうから。最高のコーディネイターは、いったん割れると誰にも手がつけられない厄介な存在でもあった。

 

 

 それぞれの不満と思惑を胸に、三人はそれぞれの部屋に消えていった……。

 

 

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言い訳v:バスタオル姿のキラ(♀)とアスラン…アスランはドッキーンとはしてますが気持ちは抑えていますよ。それはこの話がアス&キラであってアス×キラではないからです。でもやっぱ双子ちゃんですから鼻血一歩手前です。今回、ふわふわカリダを書けて幸せ〜。種シリーズ最強の女性だと確信しております!

次回予告:女の子キラがアスランの寝室に夜這……違う違う、ご宿泊!そうなれば翌朝は予想通りの展開に…(笑)あと2回で完結しますv

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