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ふぇいず 11

 

 キラに先に浴室に行かせると、アスランはバルトフェルドの私室のドアを、壊れるかと思うくらい勢いよく開けた。

「なんだいなんだい!ノックぐらいするもんだろ」

 

「隊長ぉぉおおおーーーッ!!!あなたですねッキラに余計なことを吹き込んだのは!」

「……?何をそんなに怒っているんだい?」

 

 いきなり入ってきて眉間に青筋を立てて怒るアスランに、バルトフェルドはきょとんとしていた。それが更に彼の怒りに油を注ぐ。

 

「怒りますとも!キラの口からあり得ない言葉が出てくればねっ!でもってその原因はあなただって言うじゃないですか!ど〜いうことかキチンと説明して貰いましょうか!!!」

 そこまで言われてバルトフェルドはようやく思い当たる節を見つけた。

 

 

「あぁあ〜っ!巨乳の話か!やっと覚えてくれたのか」

 

 

バキッ!!!!!

 

 

 殴ったのはもちろんアスラン・ザラ。抗議したのはアンドリュー・バルトフェルド。

 

「いきなり何をするんだ!痛いじゃないか」

「何でそういう話をキラにするんです!?キラはボーっとしてるから、冗談だってことにも気づかずに聞いていたじゃないですか!」

 

「え?だって…男同士じゃないか!するだろ?フツー。ヤダやだって言ってても好きなもんだろ?そのテの話……」

 

 アスランがブルブル震えだした。途端にすんごい形相で拳銃を構える。そして…彼も種割れした。

 

 

「だから、そのテの話を余裕で受け入れられるほど!キラはスレてないんですってば!」

 

 

 逃げるように壁に貼り付いたバルトフェルドの身体から1pほど間をあけて、弾痕が人の形をかたどって残った。

 

 

「しかしだな…あれだけ教えて貰ったのに、礼も返さないと言うわけにはいかないだろう……としたらこのメンバーの中でボクの最も得意分野の知識を教えるのは当たり前じゃないか!ただでさえコーディネイターは専門分野に知識がかたよりがちになるんだし……」

 

「……だったら、振動工学にすればいいでしょ!」

「アレは完全に軍需知識だ。そのテの知識はキラは要らないって言ったんだから、あとキラに足りないのは女性関係しかなかろう?」

 

 

「ギャップが大きすぎるんですよ!アナタも!!!」

…と、アスランはあることに気づいた。バルトフェルドが言ってはいなかったか?キラに教えてもらった……?…一体何を…?

 

 

「ちょっと待って下さい。知識の返礼…って……キラ、一体何を教えたんです?」

 どうもアスランは自分の予想が当たりそうな気がした。それは強烈にそんな気がした。

 

 

「絶対バレないハッキングの仕方とか、クロッキングの仕方とか、最凶最悪のコンピュータウィルスのプログラミング理論とか………」

 

 

 アスランの種割れが遂にダウンした。

 

「………なんですと……………?」

 

 

「仕方ないだろう。解析不能のセキュリティーと格闘していたら、キラが飛びついてきたんだ」

 

「………はい?」

 

 

「やっこさん、一週間かけて破れなかったセキュリティープログラムをたった20分で破った上、ボクにこう言ってきたんだ」

 

「このままじゃ大変でしょう?プログラムのことなら得意だし、いろいろ教えますよ。今…ヒマだから」

 

 

 「ヒマ」たったそれだけの理由でバルトフェルドにこんな犯罪チックなコトを教え込んだのだ、キラは!どうやら彼の話によると、数週間前からそれはそれは懇切丁寧に説明してきたらしい。今度はアスランがクラッと来た。

 

 確かに昔からハッキングはキラの趣味で、アスランも度々ヒヤッとしてはいた。確かに最高のコーディネイターが普通の技術の中で生活していれば、当然ありあまる能力を持て余す。まぁ、こんな危険なことに首を突っこむのも判らなくはない。

 

 しかし…しかしだ!

 

 

「だからって、胸の話をすることもないでしょう!」

 

「そう言うなよ!じゃぁ、コーヒーの話にするかって聞いたら、なら教えない、って言われたんだ」

「コーヒー?あるじゃないですか!マトモな話!」

 

「…いや、それがねぇ、昔コーヒーでちょっとあってね」

 

 

 アスランはきょとんとした。確かにバルトフェルド専用のコーヒーキッチンでは時々、彼の奇声と時には悪臭がするものの、コーヒーでキラと付き合いがあったとは思えなかったからだ。なぜならバルトフェルドが試飲をさせているのは、もっぱらマリューなのだから。

 

「話せば長い話になるんだが…それはボクがバナディーヤにいて、砂漠にキラ達が降下してきた時のことだ」

 ……そう。砂漠で、キラ達とが敵として戦っていた中、彼はふとしたきっかけでキラとカガリを屋敷に誘い、コーヒーを出したことがあったのだった。

 

「ところが当時のキラには、コーヒーは苦かったんだな」

 

 そりゃそうだろう。バルトフェルドが今まで試したなかで最高に美味しかったブレンドでもてなしたのだったが、それはあくまでも彼自身の好みにしかすぎず、しかも出したコーヒーはエスプレッソだったのだから。

 

 

「まぁ、今から思えば砂糖とミルクぐらい付けておくんだったな……と」

 

 

ピコッピコッピコッピコッピコッピコッピコッピコッ………

 

 

 またしてもどこからか出してきたピコピコハンマーを手に、アスランはひたすらバルトフェルドの頭を殴り続けた。

 

「痛い!(ピコッ)…だって(ピコッ)クラ(ピコッ)イン邸で(ピコッ)も、紅茶(ピコッ)を飲ん(ピコッ)でたって言(ピコッ)ってたし…しかし、痛いなコレは!(ピコッ)……」

 

 

 永遠にでも続きそうなうっとうしい会話(ピコピコハンマー付き)を、今世紀最大の耳をつんざくような絶叫がさえぎった。

 

 

「あ…っ!あぁあぁぁぁああああ〜〜〜ッ!!!!!!」

 

 

 言わずと知れたキラである。バルトフェルドはやっとの事でアスランの暴行から逃れることが出来た。…と言うのも、アスランが一目散に声のする方向へ猛ダッシュしていったからだ。

 

 

「やれやれ。いつもながら騒々しいことだな…」

 責任の一端は、無自覚にそうつぶやいた。

 

 

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言い訳v:例によってつけなくてもいいよけいな話。だってアスランの怒りの矛先に困っちゃって急きょ彼を悪者に。

次回予告:キラの部屋に窃盗現る!そこへ現れたラクスが無意味に割れるなか、アスランの混乱は限界に!そして我らが最高のコーディネイターは全てを悲観して「ふて寝」するのであった……←え?

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