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 CE72年初夏。大戦直後彼らはオーブに亡命していた。政府官邸からいささか離れた旧家を改造して、有名人達はひっそりと暮らしていたのである。

 

 

ふぇいず 1

 

 

「キラぁ、シャワー空いたよ。次入りなよ」

「あ…うん」

 いつも通りの会話が交わされ、シャワールームでキラとアスランはすれ違った。

 

 

5分後………。

 

 

「う゛…う゛ぁあああ”−−−−−−っっ!!!!」

 キラの大声とともに、周囲で寝ていた小動物達が飛び上がって逃げていったという。

「キラっ!何があった!?」

 真っ先に飛び込んでいったのはもっちろん、アスラン・ザラ。しかし彼は同時にあることに気づいていた。キラの声が、少々高いのである。不審に思いながらもシャワー室のドアをバンッと開ける。

 

 

 そこには信じられない光景があった。

 

 

 バスタオルを両手に抱えてブルブル震えてるキラ…イヤ…髪の長い女の子が約一名。あ…イヤ、ここにはキラしかいないはずだし…でも、どう考えても、この女の子の顔はキラそっくりだし…ま、確かに女の子と間違えそうなほど可愛い顔はしていたけれど……。アスランの頭がぐるぐる回る。 そして彼は一つの結論に至った。

 

 

「キミ……誰?」

 

 

「ア…スラン?そんな…ッ、僕なのに…僕……ど…して………」

 いきなり大粒の涙をボロボロと流しはじめたこの幼馴染みに、アスランはハッと我に返った。もうすっかりクセになってしまったこの関係。キラが泣いて、アスランが慰めて…。一体どのくらい昔からそうしてきただろうか。

 

「とにかく、そのままじゃカゼ引くから、ね。ほら、身体拭いて、ちょっと待ってて!すぐ戻ってくるから」

 

 

 そう言ってアスランはシャワー室を飛び出た。不審がってる人たちに最凶のガンをつけ、「絶対入るな!」と、ギラついた声で脅しながら…。

 何があったの?なんて聞いてくるマリュー達の不安そうな声を遠巻きに、彼は私室へ急行した。そして、クローゼットにしまい込んでいたあるものを奥から引っ張り出す。

 

 

「…っ!どいてくださいっ!!!」

 シャワー室に群がる野次馬どもを蹴飛ばして、アスランは脱衣ルームに入った。中では下着姿のキラが、相変わらず涙をボロボロと流しながら、不思議そうに自分の身体を眺めている。

 

「キラ…ほら、コレ。とりあえず羽織りなよ。あんまり…その…見える、のも、マズイだろ?」

「っ!…アスラン…まだ持ってたの?」

「この間部屋を片づけてたら、出てきたんだ。ホントは、もう処分しなきゃいけないんだけどね。カガリのこととかでバタバタしてたから……」

 

 そっか、とキラはぼんやり思う。のんびりオタク生活をしている自分と違って、彼は日中はカガリについて政府官邸で仕事をしている。部屋を片づけられるのは休みの日くらいだろう。

 

「ほら、はおって」

 

 

 促されるままにはおらされたのは、何とアスランのザフトの軍服!しかもあの赤だ。

「うん。思った通りだ。キラ、いつもより一回り以上小さくなってるから、とりあえずコレ着て出て」

 

 いつも以上にほっそりとなってしまったキラに、彼の軍服は大きかった。裾もキラの膝下くらいまである。月にいた頃は同じくらいだったのに、自分だけ置き去りにして成長した親友にキラは少し嫉妬を覚えた。

 

 

「…?どうした?キラ?」

「……何でもないよっ」

 

「ヘンなの…」

 

 

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