ベンツ社長
それは…たかが喫茶店に高級外車で通う純情社長と、そこで働くウェイトレスの恋物語



第4話  Side Athrun

大言壮語








その日、早速その場所を突き止めるべく、車を向かわせたものの、3人は結局
見つけることはできなかった。

理由は簡単だ。


<本日は閉店いたしました。またのお越しをお待ちしております>

おかげで看板が出ていなかったからだ。




「ホンット〜〜〜にこの辺なんですか?」



いつもながら社長の話はどう考えても、ウソっぽい。


「くどいなニコル。ウソじゃない!俺の目が捉えたんだ」





「………と言うよりアスラン?フツー10qも離れている地点から、しかも高
速道路の車内でぼーっとしていた状態だったんでしょ?常識で考えてあり得な
い話ですよ!」


「だって…いたんだもん」



「はいはい。………で、そのキュートな彼女はどこよ?」

「ハイネまで信じてないな!」



「まるっきり信じてないわけじゃないんだけどよ〜。お前さんの場合、ボーっ
としてても、時々驚異的な能力発揮するからなぁ〜〜〜」


そう…この社長の不可解な直感で、この会社は幾度もピンチを救われている。

ドンピシャで高配当を出せたことすらあった。





「なんだよ!だっていきなり頭に浮かぶんだから、仕方ないだろ」



「してその根拠は?」

「…ない。全っ然ない」


「ハァ〜〜〜」



どこの会社が、意味不明な社長の直感や予感を信用して、様々な契約や取引を
するというのか!


しかもいままで利幅の大小はあれ、大はずれがないというところがより周囲を
うすら寒くさせる。


下手したら綱渡りだ。







「………んじゃ、しっかたねぇなぁ。アスラン?明日もう一回来るぞ」


「え…っ?来てもいいの?」

パコッと社長の頭は殴られた。



「じゃなきゃ仕事になんないんだよ!お前さんの場合!!!」


「え?なんで?」

「……………。わかんなきゃそのまま一生悩んでろ!」


「え〜〜〜」





ハイネとニコルはやれやれと溜息をつきながら、そしてアスランは胸にもやも
やとした不満感を抱えて、この日は帰った。







次の日、ニコルは通常業務に戻るので、ハイネと一緒に昼前、もう一度この辺
りに来ることになった。


「モウ限界だ!今日という今日はずえっっったいに、お目当ての場所を探すぞッ」



ハイネの鼻息が荒くなるのも、判らないではなかった。

今朝出勤してからというもの、遂にアスランの仕事の手がぴたりと止んだ。

相変わらず小さい声でブツブツつぶやきながら、時々不気味な笑いを漏らして
いるのである。



原因さえ判らなかったら即刻精神病院へぶち込んでいたところだ。





「そんな大げさな〜〜〜。昨日の今日だよ」



「………。お前さん…彼女を探すときだけ正気に戻りやがって!」

「え?違うよ。俺はいつもマ・ジ・メv」



ガゴン!





「気持ち悪いからやめんか!」


社長を殴り倒して次の角を曲がった途端、アスランは絶叫した。


「ぁあ”〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!いたぁっv」

「早!」





そしてアスランはまるで子供のように、とある看板に向かって駆け寄っていった。


「これだよこれこれ!この看板の子〜〜〜。うぁあ〜やっぱかぁいいなぁ〜〜
〜〜〜」



それはキラが撮らされた屈辱の等身大ポスターであった。





「いやま〜確かに可愛いとは思うけど………ソレ思いっきり萌え系喫茶の看板
じゃん…」


よく見れば下の方に喫茶店名とか、営業時間とかが書いてあった。



「ねっハイネ!きっと彼女、ここで働いてるんだ?会えないかな〜」

くるりと振り向いたアスランの顔は、不気味なほど崩れていた。


「ぅわっ!汚ッ!鼻面伸ばすな!よだれ垂らすな!ついでに鼻血拭け!」

「ね〜〜〜入っていい?ここ、入っていい?」



ハイネが見る限り、この社長………あからさまにコドモだった。





「へいへい。でもいるかいないかなんてわかんないぞ?」


「ぅんvそれでもいい!マスターに聞けば、勤務日が判るじゃないか〜v」



ハイネはうんざりした。世の中の大多数の人々は、この本性を知らない。

格好いいやり手若社長と評判の社長の実態が、ここにあった。


(よく取材でもこれを隠し通せたもんだな………)

それは、7不思議の一つに数えてもいいのではないかと思われた。





「んじゃ、我らが社長の仕事復帰を切実に期待して…入るぞ」

前半をやたら強調したのはハイネの本心と思われた。


そして一歩店内に入るなり、金髪の髪の子が元気良く飛び込んできた。

「おかえりなさいませだにゃんv」



「へ………?」


すっかりお目当ての子が応対してくれると思い込んでいたアスランは拍子抜け。

使い物にならないバカを放置して、ハイネはそっと彼女に聞く。



「表の看板に載ってた彼女は?今日、いる?」


「あ!キラにゃんですね。はい、ご主人さま、いますよ。あっちです」

果たしてカガリの指さした先にキラはいた。が、偶然別の客の注文を取ってい
るようだった。





「キラというのか〜〜〜。こっちに来てくんないかなー」

「いいじゃないか、彼女でも。充分可愛いと思うし」


ハイネがカガリに悪いと思って助け船を出したが、アスランのわがままは止ま
らない。

ハイネの裾をあからさまにつんつんと引っ張って、何気なく強要する。


その気配を察したカガリが、注文とりをキラに譲った。キラほどではないもの
の、カガリだってかなりの人気がある。あちこちで「カガリにゃ〜んv」と追
加注文がかかるからだ。


仕事が増えるのもイヤだし、例のあしたば限定タダ券だって要らない。


譲れるものならホイホイと譲ることを、ここ数日で覚えてきたのだった。



「こちらをお使い下さいだにゃん。すぐにキラにゃんが来るにゃん」

今でもなかなか慣れないにゃんこ言葉を使いながら、カガリはその場から去り
………そしてキラがやってきた。





………が!キラの姿を見た途端、アスランは部屋の端にうずくまって動かなく
なってしまったのだ。



「……?」


「ぁの?ご主人さま?」


「どうしたよアスラン」





「俺…もうダメかも知れない………」


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言い訳v:お子ちゃま社長に変えてもいいかも知れない(笑)この回のアスラン…バカすぎ………。次回、ようやく二人が接触します。

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